2017
02.17

巡る一日と巡り会う二人。『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』感想。

Miss_Peregrines
Miss Peregrine's Home for Peculiar Children / 2016年 アメリカ / 監督:ティム・バートン

あらすじ
目ん玉ウマー!



学校の仲間とは上手く馴染めない少年ジェイクは、理解者であった祖父が言い残した言葉に従い、父親と共にとある島へと渡る。その島で見つけた古い屋敷には、奇妙な能力を持つ子供たちと、彼らを保護する美しく厳しい女性、ミス・ペレグリンが暮らしていた……。ランサム・リグズの小説『ハヤブサが守る家』をティム・バートン監督で映画化したファンタジック・ミステリー。

主人公のジェイクが幼い頃祖父から聞かされていた、ミス・ペレグリンと奇妙な子供たちの不思議なお話。しかし実はそれは現実であり、ジェイクは世間から隔絶された空間にある屋敷を訪ね、ミス・ペレグリンと異能力を持つ子供たちに会うことに。「世に馴染めない者たち」というティム・バートンらしいテーマで、ファンタジックな映像とちょっとダークな展開で引っ張ります。前半は若干間延びした感もありますが、物語が大きく動く中盤以降が超面白い。空間だけでなく時間も重要な要素として主軸にあり、そこに囚われた者とのほろ苦い関係にもやられます。バートン作品で近いのは何でしょうね、『ダーク・シャドウ』かな?エヴァ・グリーンも出てるし。

そのエヴァ様演じるミス・ペレグリンの、鋭くも優しい眼差しが素敵すぎます。『300 帝国の進撃』『シン・シティ 復讐の女神』のようなエロさは今回は封印、代わりに見せる独特な母性が魅力的。ジェイク役は『エンダーのゲーム』エイサ・バターフィールド。相変わらず線が細いですが、それだけに終盤の勇姿には熱いものがあります。彼とテレンス・スタンプの演じるじいちゃんとの爺孫ドラマも良いですね。あとエマ役のエラ・パーネルが可愛い。『マレフィセント』に出てたらしいですが、言われてみればそうかもしれない。そして我らがサミュエル・L・ジャクソンの笑っちゃうほど凶悪な姿で余裕こいた態度もインパクト。ジュディ・デンチが意外な展開になるのもちょっと笑えます。

異能者である子供たちは『X-MEN』っぽくはあるんだけど、戦いに特化してるわけじゃないというのが大きな違い。それだけに工夫を重ねた協力プレイで皆が頑張るのがたまらんです。11人もいるのに皆印象に残るんですよ、これがイイ。あとループの説明はちゃんと聞いておかないとワケ分かんなくなるので注意です。

ちなみに「奇妙」繋がりで、ジョジョ好きなら色んなスタンド能力の実写化にも見れるぞ。マジシャンズ・レッド、ストレイキャット、ゴールド・エクスペリエンス、ジャスティス、アクトン・ベイビー、ムーディー・ブルース、イエロー・テンパランス、ホワイトアルバム、バイツァダストなどだッ!(一部無理矢理)

↓以下、ネタバレ含む。








異能者たちの能力は多様で面白いです。子供たちの能力を生活の中で披露する、最初の見せ方がいいですね。でも炎使いオリーブや植物を成長させるフィオナ、怪力少女ブロンウィンなどの役立ちそうな能力も実生活ではちょっとした便利機能でしかないし、透明人間ミラードや蜂を操るヒュー(『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』でも蜂を育ててた子ですね)も能力はせいぜいいたずらに使うくらい。空気より軽いエマは重りを付けないと飛んでっちゃうし、無機物を操るイーノックもおもちゃ動かして悦に入るだけだし、二口少女クレアは食べるのが大変そう。目から映像を映すホレースはそれが予言めいたものでも所詮閉じたループの中でのこと。双子に至っては何だかよくわかりません(実は一番危険なんだけど)。皆が自分の能力をもて余しながらも、それと長い間付き合ってきたからこその定常化。ただそこに悲壮感は(少なくとも表面的には)なくのびのび暮らしているのは、ミス・ペレグリンの存在と彼女の作ったループのおかげなのでしょう。

ループは異能者たちを外界から守るために作られる、あるタイミングで発動するとその日を繰り返す「閉じた時間の輪」であり、ミス・ペレグリンらインブリンと呼ばれる能力者たちにより作られます。この設定には本来タイムリープものとしての面白さがあるわけですが、本作ではそれよりも「その時間の中に囚われる」ということが中心となっています。ループにいる間、外の者とは時間の流れがどんどんズレていく。ループが閉じると時間が進み始めてやがて「時間に追い付かれる」ため、長くいた者は死に至る。つまりループのなかでしか生きられないということであり、それが別れや孤独といったせつなさに繋がります。

そんなせつなさが、後半ホローが登場してループが閉じられてからの一大アクションと共に描かれる、というのが秀逸。異能の子供たちが能力を活かして戦う、と言ってもやはり戦闘慣れしてるわけではないので、ジャックの作戦を元にちょっとずつ活躍するのが良いんですよ。とりわけ前半のファンタジックなシーンで印象深かった沈没船を、空気を操るエマが浮上させて旗艦とするのにはアガります。パワー特化型の怪力少女のおかげで仕事は早いし、透明人間は利点を活かしまくるし(寒そうだけど)、炎使いのオリーブと対するのが氷使いの敵だったりとか、ついにベールを脱ぐ双子のゴルゴン能力とか愉快。イーノックが命を与える骸骨兵士たちがホローに立ち向かうのはレイ・ハリーハウゼンを彷彿とさせます。ジャックが急に司令塔になって指示を出し始めたり、進んで戦い始めたりするのがちょっと唐突ではありますが、冒険家である祖父エイブの血を引いていたということなのでしょう。物事が見えていない父親のダメな感じを考えると隔世遺伝なんでしょうか。

それにしてもホローの造形や動きが思いのほか怖いので危機感ハンパないです。思わずエヴァンゲリオン量産機を思い出したぞ。あとバロン役のサミュエルの顔がむっちゃ怖くて笑えます。嬉々として目ん玉美味そうに食べるし、レディに向かって「お口クサイ」とか酷い精神攻撃が最低で最高。でもミス・ペレグリンの眼力に、脅してるバロンの方がタジタジになるのが可笑しいです。エヴァ・グリーンは囚われの身となるために後半ほとんど活躍の場がないのが残念ですが、前半での存在感が素晴らしいからこそ子供たちが彼女を救おうとする動機がすんなり受け入れられます。

エマはかつてジャックの祖父エイブと恋仲になったものの、時間のズレによって身を引くことになります。その孫であるジャックともいい雰囲気になるも結局別れを告げます。しかしジャックは数々のループを経由して、ついにエマの元へと辿り着くのです。一瞬映る一万円札とか変な東京にはちょっと笑いますが、そこに至るまでの冒険だけで一つ話が作れそうな濃密さをサラッと流し、線が細いエイサ君のジャックが心なしか逞しくなって再びエマの前に現れるときのカッコよさ!イーノックがオリーブとくっつく辺りも含めて、ラブストーリーとしても観れるんですね。

「普通と違う」者たちが、自分たちの力を恥じず大事な人を取り返すため懸命に戦ったことで、「普通と違う」は「個性」となり、ループに囚われる生活は変わらずとも時間と空間を超えて再び会いにくる人もいる。気弱で孤独だったジャックも自分を信じるようになり、エイブ爺さんも復活。ハッピーエンドと言うよりは「粋」という感じがしてとても良いです。久々に異端者に対するティム・バートンの優しい視点が素直に感じられます。

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