2017
02.02

個性が生んだ闇の仕事人。『ザ・コンサルタント』感想。

The_Accountant
The Accountant / 2016年 アメリカ / 監督:ギャビン・オコナー

あらすじ
フッフッ(指に息)。



大企業から財務調査を依頼された会計士クリスチャン・ウルフは、重大な不正を見つけたところで何者かに命を狙われるようになる。しかし彼は会計士でありながら、実は凄腕の殺し屋という顔も持っていたのだ!ベン・アフレック主演のサスペンス・アクション。

これは面白いぞ。昼は会計士、夜は殺し屋、という煽り文句から想像するように「普通の人かと思ったら鬼強かった」系ではあるんですが、『イコライザー』『ジョン・ウィック』辺りとは方向性がちょっと違ってます。主人公の無双っぷりだけでなく、生い立ちとそこから繋がる現在というものをじっくり描いているんですね。人によってはテンポが悪いとかもっと暴れて欲しいとか思うかもしれませんが、僕はそこがむしろ丁寧で良かった。他の人と同じように生きられないと見られがちな人物が、己の長所を活かしながら他者と触れあっていくうちに得るもの。これは監督のギャビン・オコナーが『ウォーリアー』で描いたものと通じるところがあります。ある意味意外な着地を見せるラストの流れも最高です。

それでいてアクションも見応えあります。主人公ウルフを演じるベン・アフレックは、無表情で体格のいい会計士がハマり役。ちょっとガタイが良すぎる気もしますが、そこはアクションをやる上での説得力とも言えます。キッチリ決める無双アクションはベースが『ザ・レイド』で見られるインドネシアの格闘技シラットで、強い、速い!柔術っぽい技もあったり、銃撃やスナイピングもあったりとアクションに幅があります。ヒロインのデイナ役は『ピッチ・パーフェクト』のアナ・ケンドリックで、ウルフとのやり取りはとてもイイ感じ。『バットマンvsスーパーマン』でバットマンだったベンアフ以外にも『スパイダーマン』で編集長だった『セッション』のJ・K・シモンズや、『デアデビル』でパニッシャーだった『フューリー』のジョン・バーンサルといったアメコミ作品の出演者がいて、物語の背景と相まってヒーローものの趣も。バーンサルの陽気だけど容赦ない感じ、良いです。

ウルフが一体何者なのかというミステリアスな部分に細かいキャラ造形を盛りに盛ってくるんですが、丁寧に積み重ねるので意外と嘘臭く見えないです。FBIの絡み方にもう少し何か欲しかった気もしますが、ストレートな仕事人とはちょっと違う奇妙な雰囲気と、あとこう言うのはそれこそ奇妙ですが、どこか「優しさ」を感じる、ハードボイルドながら何とも言えない味わいがあって好きです。

↓以下、ネタバレ含む。








ウルフ(これも偽名のようですが)は高機能自閉症としての特性により様々なこだわりの目立つ属性、例えば完璧を求める、途中で終わるのが嫌、数字に強いなどが付与されています。コミュニケーションが苦手で人と目を合わせないというのが、ベンアフの抑制の効いた無表情演技(目が死んでるとも言える)もあってよく表現されてますが、本作にはこれを障害ではなく個性だとする視点がまずあるんですね。と同時に、完璧主義と正確性ゆえの殺し屋スキルも持っている。これが「人と違うだけ」として差別しない施設の先生と、一人でも生きていけるようにとあらゆる特殊技能を仕込む父、という二人の教えにより形成されたというのが理に叶っています。正確だからこそ一流である射撃の腕と、数学者の名前を使うというこだわりの同居が成り立つんですね。指に息を吹きかける動作も几帳面さを感じさせて上手いし、名前候補二つから「もちろん」と言って選ぶ一つも、知ってる人ならなるほどと思うチョイスなんでしょう(僕はわからなかったですが……)。

無表情だし人付き合いもよくない、そんなウルフがデイナを救いたいと思ってしまうのは、ポーカーをする犬や数学コンテストといった興味の対象、一度しか着ない高いドレスは無駄といった価値観など、個性が発露する部分の共有をできる人だからです。人に理解されにくいという自覚もあるものの、決して人を遠ざけてるわけではないんですね。会計相談にのった中年夫婦に遊びに来いと言われて本当に行っちゃうのもそのためでしょう。そこにウルフの人間味があり、いつの間にか観る者も惹かれてしまう。加えて悪党への躊躇も容赦もない仕打ちですよ。メロンを撃ってた(もったいない)ライフルで中年夫婦を脅す輩を撃ち抜く。敵の構えたナイフに対しすぐさまベルトを抜く。ヘッドショットでパーフェクトにとどめ。いやあ、カッコいい。各国紙幣やパスポートをキッチリ引き出しに揃えているとか、報酬を美術品で受け取るというのもプロフェッショナル感があって良いです。

現地で武器を調達すると言われてた気がしますがそこはちょっと徹底されてないとか、悪党の金を扱いながらFBIにタレ込むところが分かりにくいとか、盛りすぎて不明瞭に感じるところもあるんですけどね。施設に寄付を続けるのも冒頭以降どう絡みがあったのか描かれてないし、父親に「被害者でいるのか」と言われて飛び出したあと、後を追った弟と二人でどうしたのかも気になります。でもこの何も言わずとも側にいた弟との関係を何度も描くのがラストに効いてくるのです。最後に兄弟で殺し合ったりせず、本心をぶつけ合う兄弟ケンカにしちゃうのが実にイイ。そしてあっさり社長を撃ち殺してあんぐりする弟。悪党より家族の方が大事だ、という当たり前のことを堂々とやっちゃうところが最高です。

心を落ち着けるために歌っていたソロモン・グランディの歌で弟が気付く、アシスタントの女性が冒頭でパズルのピースを拾ってくれた少女だった、デイナに「ポーカーをする犬」と見せかけて例の絵を贈る、という伏線の回収も心地よいです。体を苛めたり薬で落ち着かせたりしながら、ときに他人と違うという疎外感からくる孤独に負けそうになりながら、それでも自分にしかできない能力を発揮して、歪まずに己が正しいと思う道を進む。これはヒーロー映画の文脈であり、本作は新たなヒーローの誕生とも言えるでしょう。ラストに運転しながら微笑むウルフに、さらなる活躍を見せて欲しいと思わずにいられません。

ベンアフの盟友であるマット・デイモンが演じたジェイソン・ボーンとクロスオーバーとかしたら熱いのになあ。ちなみに監督によると、続編は分からないもののTVシリーズ化の話があるようで、障害のある凄腕スペシャリスト・チームの物語にしてそこにウルフも登場させたい、と言ってます。おお、それは実現して欲しいぞ!

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