2017
01.26

過去へまいりま~す。『本能寺ホテル』感想。

honnouji_hotel
2016年 日本 / 監督:鈴木雅之

あらすじ
磯野ー、ぶりぶりぎっちょうやろうぜー!



婚約者の両親の金婚式を祝うため京都を訪れた繭子は、手違いで泊まれなかったホテルの代わりに偶然辿り着いた「本能寺ホテル」に宿を取ることに。しかしホテルのエレベーターの扉が開くと、そこは織田信長が実在する戦国時代だった……。綾瀬はるか主演のタイムトラベル・ミステリー。

『プリンセス・トヨトミ』のメインキャストやスタッフが再集結した(って実は観てないんですが)歴史絡みのミステリーです。会社が倒産し、流れでプロポーズされて結婚することになった女性・繭子が、時代がかったホテルのエレベーターで行き着いたのは1582年の本能寺。そしてその日はよりによって本能寺の変の前日。そこで繭子が出会ったのは……!と勿体付けなくてもわかりますね。タイムトラベル、歴史改編というSF要素が中核となりますが、その点では細かい引っ掛かりが山ほどあります。でもそれらは何となく予想できたのでまあ想定内。結構ハードル下げ気味で観たのでそれなりに楽しみました。

京都の街並み、シックなホテル、荘厳な寺、品のある趣の料亭など、とにかくロケーションに雰囲気と味があって素敵です。そんな舞台を行ったり来たりする主人公の繭子役には綾瀬はるか。「ん」とか「よいしょ」とか言うのが可愛い。エレベーターの中で彼女の周りをカメラがぐるぐる回るシーンでは「綾瀬はるかと二人っきりの個室に!」という気分が味わえます(妄想力)。あと綾瀬はるかのおっぱいが綾瀬はるか史上最高に爆裂なのも素晴らしくて、むしろそこばかり見てしまい気が散るんですけど。けしからんのですけど。他の出演者では濱田岳が『ヒメアノ~ル』に続きとても良いです。彼が笑いも涙も一手に担ってて物語に繋ぎ止めてくれます。堤真一はもう少し快活でもよかったなあ。あと予告では佐藤二朗かと思ってましたが高嶋政宏でした。

もっとテンポをよくして尺を短くもできたと思うし、画面中心のアップが多過ぎてうんざりすることもありますが、固定カメラでじっくり撮るところとか、現代と過去を並列で語ってシンクロ感を募らせるなど良い点もあります。それだけに、細部をもう少し詰めてくれてたらなあ、とも思うのです。

(本作には某作家の脚本に絡む疑惑もありますが、結びつける確証がないのであくまで完成した作品についてのみ書いてます)

↓以下、ネタバレ含む。








なぜホテルが本能寺に繋がるのか、というのがとにかく雑。別に科学的な説明を付けろというわけではなく、繋がるのが何となく納得できるような描写が欲しいんですよ。南蛮のオルゴール、エレベーター、金平糖とそれらしい要素を並べるだけでは弱いのです。せめてオルゴールは信長の所持品だったとか、金平糖を信長が広めたいと思っていたとか、ホテルの出自にもう少し関係性を持たせるとか、ファンタジーだとしても何かしら説得力が欲しいのです。戻りはホテルのベルを鳴らせばエレベーター内、というのも雑。風間杜夫以外の従業員が出てこないのがホテルの雰囲気と合わせてちょっとした異世界感があって良いんですが、それが過去へ戻る仕組みと結び付かないのも勿体ない。風間杜夫のオーバー演技が若干ミスキャストだというのもありますかね。でも最後に見送る表情は良かったです。

ホテルの予約を1ヶ月間違えるのはまあいいとして、あんな雰囲気のいいホテルがなぜか空いてるのも都合がいいですね。飲んだらすぐに効く胃薬というのもスゴい。どこで売ってるんだアレ。オカン軍団にもまれて支配人のメガネがズレるとか、全く笑えない八嶋智人とか、どうも狙ってハズしてる感じが否めません。近藤正臣は演技は良かったけど料亭の主人が大衆食堂やるというのも現実味に欠けるし、目の前の人が信長だとかその場所が本能寺だとかバレバレなのに引っ張りすぎだし、文句を付けようと思えばいくらでも出てくると思います。ノイズが多すぎて、なぜ本能寺ホテルという名前なのか聞き洩らしちゃいました(言ったっけ?)。

ただ、問題は枝葉より根本なんですよ。綾瀬はるかのおっぱいは大変よろしいのですが(まだ言ってる)、繭子の空気の読めなさには唖然とします。平成じゃないと薄々気付くし靴を置いていくことも学ぶし、まあバカではないんだけど、別の時代と気付いていながら茶入れの件に口を出したり、考えた末に謀反のことを知らせておきながら「歴史変えちゃった?」と言ったり、炎上して危険な場所であるのを知っているのにまた過去に行ったり、平たく言えば愚かなのです。でも繭子が愚かだから話が進むんですよ。もっと言えば、一人の女性の成長を描くためだけに信長や本能寺を持ってくるというのが非常に仰々しい。でもそれを言ったら話自体が成り立たないのです。なかなかの難物、でもそれが味でもあるというのが厄介。だからもっと細部を詰めて、せめて物語としての説得力を上げて欲しかった。

それにしても織田信長という人物は作劇において実に便利だな、というのを改めて思います。数々の伝説があるだけに、どの属性を使うかでいくらでもバリエーションが出せますね。ただ本作では、うつけでも第六天魔王でもなくひたすら平穏な世の中を願うイイ人になってて、謀反を起こした光秀が癇癪起こしただけみたいに見えるのが難点。堤真一は存在感はあるものの、その信長はどこか覇気に欠けたように見えちゃうのも物足りない。でも縁結びのチラシの写真で繭子が未来から来たことを悟る柔軟さや、謀反の話を聞いて世を平定させるための手紙をサルに書く先見の明、自分の死という歴史的事実を受け入れる度量など、しっかり大人物として描きつつ歴史も変えない結末はなかなかのもの。なぜ逃げなかったのかをわざわざ説明せず、「良い写真だ」で終わらせるのも良いですね。写真に写る幸せそうに笑う人々に未来を託して繭子と別れるわけです。……だから最後の炎の中で自害するシーンはいらないんだよなあ……。

でもまあ濱田岳の蘭丸が「御屋形様は冷血で恐ろしくて」と言ったのを、繭子が信長の目の前で言っちゃうのには笑ったし(ホント空気読まないな!)、最後に再びその台詞を蘭丸に言わせるところだけは不覚にもウルッときましたよ。やりたいことも見つからず強引彼氏に引きずられて流されていた女性が自分の足で歩きだす、という自分探しが結局のところテーマなのでお気軽に爽やかではあるし、やりたいことが歴史の教員だというのもまあギリありかなとも思います。わざわざ織田信長に言われなきゃわかんないのか、とも思うんですけどね。

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