2017
01.16

熱狂と恐怖の紙一重。『NERVE ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』感想。

Nerve
Nerve / 2016年 アメリカ / 監督:ヘンリー・ジュースト、アリエル・シュルマン

あらすじ
NERV(ネルフ)じゃないよ。



女子高生のヴィーは、友人シドに煽られた勢いでネットで広まっている度胸試しゲーム「ナーヴ」に参戦することになる。そこで知り合った青年イアンと共に次々と難題をクリアしていき人気者となるヴィーだったが、やがて指令はどんどんハードルが上がっていき……というサスペンス・スリラー。

ネット上で密かに流行している「ナーヴ」は、視聴者が出すチャレンジを挑戦者としてクリアすれば賞金がもらえるというリアルゲーム。クリアの様子は挑戦者自身のスマホでライブ配信し、それを多くの視聴者が見るという仕組みです。好きな男に話し掛けることもできない女性ヴィーがこのゲームに参加し、初っぱなから見知らぬ男性と5秒間キスをするというハードな関門をクリアして賞金100ドルを手に入れます。てな感じで最初こそノリでバカやる若者たちに呆れますが、ゲームはそれでは終わりません。徐々にそこに潜む承認欲求ゆえの無軌道っぷり、匿名性ゆえのエスカレートが露になってきて、これが非常にスリリング。

エマ・ロバーツ(ジュリア・ロバーツの姪っ子なのか!)の演じるヴィーがいたって普通の真面目な女の子でありながら、ナーヴに挑むうちにどんどん大胆になっていくのが面白い。パンダパンツが眩しいです。ヴィーがコンビを組むことになる青年イアン役を『グランド・イリュージョン』のデイヴ・フランコで、この爽やかイケメンは本当に信頼できるのか?というのもちょっとしたスリルです。シド役のエミリー・ミードもいかにもチアリーダーな感じを上手く表現。ヴィーの母親役でジュリエット・ルイスが出てるのが良いですね。

人気者になれて金ももらえる、やる気さえあればユーチューバーより手軽なゲーム。だからその危険に気付かない、いや、むしろその危険さえ快感に感じてくるんですね。ネットリテラシーとかそういう次元を越えたオンラインの怖さを描き、画面を通した世界も現実であると知らしめる構成が凄くて、そういう意味では、例えばサイバー空間での犯罪を描く『ピエロがお前を嘲笑う』などとは似て非なるものですね。いやこれホント良くできてる。面白いです。あとネットで有名になりたいなら握力は鍛えておきましょう。命に関わります。

↓以下、ネタバレ含む。








ゲームがどんどんエスカレートしていくのは予想が付きますが、それでもどういう試練を課されるのかというのがヒヤヒヤします。キスなんてまだ序の口、タトゥーを入れるだとか、高価なドレスを試着したまま店を出ろだとかなかなか厳しい。最初は誰がどうやって指令を出してるのか疑問だったんですが、観てるとチャットによりアイデアを出し合って多数決と言うかノリみたいなもので決まるようです。管理者がいるわけではなく、プレイヤー(挑戦者)がドレスを着てる間に服を盗むのもドローンを飛ばすのも銃を調達するのも、最後の会場を用意するのでさえウォッチャー(視聴者)なんでしょうね。多くの人が寄り集まってできることをやるというのは実にネットっぽいです。

しかし反面、テレビのバラエティ番組などと違い世間的な常識という歯止めがないので、当然行き着く先は犯罪行為や生命の危機になるわけです。ハシゴ渡りやクレーンぶら下がりなど高所恐怖症が震え上がる(と言うか死ぬ)試練や、目隠しバイクなどの自殺行為のもの、なかには警官の銃を奪うというのもありました(失敗するけど)。またそれぞれがサーバとなってしまうため、ヴィーのナードな友人トミーが言うように「サーバを閉じれない」んですね。この、既に個人の手を離れて集合体となっているシステム、というのが怖い。大人数の熱狂は誰もコントロールできず、ゲームをクリアするたびにリミットは外れ、ウォッチャーもプレイヤーも法律や道徳心など色んなものが麻痺してきます。

個人情報が容易くゲームに反映されるのはある意味Goo○leやAma○onに近いものがあるし、どこにいても誰かのカメラで撮影されそれがリアルタイムで配信されるし、アカウント名がオンラインゲームのように空中に表示されるのはGPSにより現在値が把握されてるということだし(単に演出かもですが)、技術的には全く突飛じゃない、すぐにでも実現できそうなシステムというのが余計怖いです。上手くできているのは、ウォッチャーは匿名で覗き見たり指令を出したりすることができるし、一方でプレイヤーは金を手にした上に自己顕示欲や承認欲求も満たすことができる、共にスリルと興奮と背徳感を味わえてしまうところ。微妙にレトロな感じのUIもアングラっぽく、却って好奇心をそそります。そしてゴールがないので、延々とこの熱狂は続くわけです。

実際ヴィーは人が変わったようにアクティブになっていきます。しかしプレイヤーはやがて視聴者数こそ至上となり、どこまでが偶然なのか、どこまでが自分の意思かさえも見失っていきます。シドはヴィーより視聴者数が多いと聞いて初めてヴィーのことを心配します。イアンがリピーターであることが発覚し、彼が主犯ではないかという疑念まで出てきます。それらすべてがこのシステムの一環。冒頭、PCの沢山開いたウインドウから高層マンションの無数の窓に映像が繋がるように、人々はプログラムの一部と化してしまうのです。そして秘密をバラした者は、イアンのように文字通りシステムに取り込まれてしまう。現代の話でありながらディストピアSFの様相を呈してくるのが凄い。細かいところで色々積み重ねてあるのですんなり飲み込まれてしまいます。

システムを終わらせるためには全てのユーザがログアウトすることが必要、というのも理に適っています。己の本名を画面の向こうに映し出し、自分は安全圏にいると思っているウォッチャーに部外者ではないことを突き付ける。ログアウトさせるために罪悪感を煽るというヴィーとタイの作戦も実に効果的。タイがシドに連絡先を渡すというのが、ヴィーとタイが協力するための伏線にもなっているんですね。さすがマッドマックス。ヴィーとシドがいがみ合い本心をぶつけ合ったからこそピンチに協力し合えた、という経緯も活きています。ヴィーの兄貴の話が思わせぶりなまま何も絡まないのはちょっと肩透かしですが、母ナンシーを通して銀行預金の残高増減をわからせるし、トミーがややこしいURLを手入力するシーンで「こいつはやりおる」と思わせるし、ヴィーが兄を失った話はイアンが失ったものにも通じていく。勢いやノリの話でありながら、細部まで実に丁寧に作られているのが非常に上手い。最後にイアンがユーザー名ではなく本名を名乗って終わる、というこれ以上ないラストに、ほんの微かに残した闇。切れ味もナイスです。

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