2017
01.14

踊れ、走れ、世界を救え。『ポッピンQ』感想。

PopinQ
2016年 日本 / 監督:宮原直樹

あらすじ
前提:中学生はダンスが必修科目です。



中学3年生の伊純は海辺で拾った「時のカケラ」の力で「時の谷」という不思議な世界へ迷い込む。世界中の時間を司どるその場所では崩壊の危機が迫っていた。伊純は同じくカケラを持つ同じ年の4人の少女と世界を救う旅に出る……。少女たちの成長をダンスや音楽と共に描く、オリジナル青春アニメ。

東映アニメーションの創立60周年記念作品とのことです。60年て凄いな!東映アニメーションと言えば、古くはロゴマークになっている『長靴をはいた猫』から、『ドラゴンボール』や『プリキュア』など誰もが知ってる作品まで、それこそ枚挙にいとまがないです。まあそれだけの歴史を一つの作品に総括するなんて不可能なので、60周年という節目に楔を打つ、という感じなんでしょうかね。東映の劇場オリジナルアニメとしては『楽園追放 Expelled from Paradise』以来なのかな?

それぞれが悩みを抱える中学卒業を控えた5人の少女が、突如放り込まれた異世界で、何だかんだあってそれでも頑張る、というお話です。本当の意味での卒業を迎えるための通過儀礼を描く、という感じでしょうか。結構色々な要素を詰め込んでるわりにはよく整理されててわかりやすいし、キャラの可愛らしさ、ポップな異世界感などもあって、なかなか面白いです。メッセージもとても健全で真っ直ぐ。パンツは見せないし、おっぱいの強調もありません(それらは『君の名は。』でどうぞ)。少年少女に向け多くの作品を作ってきた東映らしい方向性と言えるでしょう。

監督の宮原直樹は『プリキュア』シリーズのダンス映像を手がけてきた人と言うことで、本作にもダンスシーンが組み込まれています。と言うか、情報を探るとまずダンスシーンありきで始まった企画のよう。そう聞くとなるほどねと思うんですが……ただ個人的にはこのダンスシーンが最もノイズでした。「なんで?」って思っちゃう。でもまあモーション・キャプチャーを使ったヌルヌル動くダンスはそれはそれで楽しいです。

中3女子に勧めるにはちょっと幼い気がします。むしろ同じく卒業を控えた小6女子あたりに一番ハマるんじゃないですかね。とは言え大人が観ても別に幼稚ということはなく、ゴールの見えなかった「走る」という行為が未来への疾走に変わる中盤などはちょっと泣きそうになるくらいイイ。メンバーによって描かれ方にバラつきはあるけど、尺を思えば頑張った方。後悔を引きずる中3女子の、出会いあり、友情あり、バトルありの大冒険を堪能できます。エンドロール後の映像はある意味必見。ちなみに『ポッピンQ』の「Q」ってなんだ?と思ってましたが、どうやら「Quest」の「Q」らしいです。ポピクエです。

↓以下、ネタバレ含む。








時の谷の美術は統一感があって良いですね。最初の街の風景とかとてもファンタジックだし、その賑やかそうな街なかを住人が誰も歩いていないというのが不気味さがある。異形の生物も独特で、亀みたいな馬などは面白いし、敵キャラのデザインもイイです。一方で時の城の歯車などを使ったちょっとメカニックな雰囲気も、最終決戦の舞台という趣で良い感じ。現実とは異なる世界観の構築は徹底されていて、特別な衣装を着ないと寝てしまう、という強引な設定でポップな衣装に着替えさせるのもその一環でしょう(「袖から手を出せ」とはずっと思ってましたけど)。そこから覚醒し第二形態でクールな衣装に様変わりするのが、魔法少女ものや変身ヒーローものっぽくて熱いです。

そうした統一感を全体的には感じるだけに、やはりダンスシーンだけ浮いてるんですよ。突然異世界に来るのも踊りで世界を救うのも別にいいんだけど、長老が「ダンスじゃ」と突然違和感ある言葉を発するので「!?」となります。せめて「舞い」とか言ってくれればまだよかったんだけど。踊ること自体はいいんです。最初は下手でも段々息が合ってくることで皆の心が一つになるという表現になるし、古来神事に躍りは付き物だし。やたらアイドルっぽい振り付けなのも、中3向けならまあしょうがない。でも練習してない踊りまでいきなり出来るのは……どういう願いを込めた躍りかくらいはもう少し説明があってもよかった。あと歌付きの曲で踊られると、歌声とか歌詞に込めた意味とかの力は関係ないんだろうか?と気になります。それにあの音楽はどこから流れてるんだろうか?そこの設定を軽くでも入れてくれてればなあ。

巫女であるレミィが思いを言葉で表せなくなった理由が明かされないとか、謎の少年レノの正体が謎のままとか、煮え切らないところもあります。時の城で「人の気配がないわ」と言ってる後ろで大量のポッピン族がわちゃわちゃしてるのには「気配ありまくる」と思ったり。伊純の家庭の事情をさらさらと台詞で説明しちゃうとか……まあこれは仕方ないか。あと5人のうち伊純と沙紀だけエピソードの比重が大きくなってしまったのは残念。でもこれはその二人に諸々を集約させたとも言えるので、難点というわけではないですね。蒼、小夏、あさひも(若干ステレオタイプではあるものの)キャラとして立てることには成功しているし、ポッピン族の同位体(この呼称も世界観にそぐわないですが)の可愛らしさも悪くないです。

何より中盤の第二形態になるという熱さがとても良くて、能力が次々と可視化されていく覚醒シーンには『少林サッカー』を思い出したほど。伊純の頭上に出る「ダッシュ」の文字には思わず泣きそうになったくらいです。己の過去の不甲斐なさを振り切るために走り続け、それ故に本当のゴールに辿り着けずにいた伊純、という積み重ねがあるので、仲間を救うため前を向いて疾走する彼女の姿が響きます。あと伊純の爺さんの言葉がなかなか渋くて良いですね。そういえば伊純の母親役の声が独特だなーと思ったら、島崎和歌子で驚きました。全然話題になってませんが……。ラストはそんな家族の見守るなか、伊純は卒業式へと向かいます。自分と向き合う、素直になる、そんなシンプルでありながら思春期ゆえに困難だったことを学んだ伊純に、もう迷いはありません。幕引きが実に爽やかです。

……しかし!物語はまだ終わっていないと声高に宣言するかのような、エンドロール後の衝撃映像。これには「マジか!」と驚愕しましたよ。回収しきれてない伏線などはこのためか!でもまあこれはこれで面白そうだな!いつやるんだ!と、次作なりテレビ版なりの告知を待っていたのですが……終わって明かりが付いたときに劇場内を満たした「え?」という一体感が忘れがたいです。これ『ガッチャマン』やハリウッド版『ドラゴンボール』のパターンにならなければいいんだが……

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