2016
12.24

はみ出し者が紡ぐ歴史。『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』感想(その1)。

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Rogue One: A Star Wars Story / 2016年 アメリカ / 監督:ギャレス・エドワーズ

あらすじ
設計図を盗み出せ!(超難関)



遠い昔、はるか彼方の銀河系。もはや共和国の抑制も効かないほどその支配を強める帝国軍は、最終兵器「デス・スター」の建造を進めていた。そんななか一匹狼のジン・アーソは反乱軍に協力を強いられるうち、仲間と共に帝国軍からデス・スターの設計図を奪うという決死のミッションに挑むことになる……。『エピソード3 シスの復讐』と『エピソード4 新たなる希望』の間の話を描く、『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ。監督は『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズ。

『スター・ウォーズ』の記念すべき1作目である『EP4 新たなる希望』。そのオープニング・クロールの一部、「反乱軍のスパイは帝国軍の究極兵器の設計図を盗み出すことに成功。それは"デス・スター"と呼ばれ惑星をも粉々にするパワーを持つ宇宙要塞基地だった」、これを一つの物語として描いたのが本作です。『EP4』でレイア姫がR2-D2に託すデス・スターの設計図がいかにしてもたらされたのか。既に我々はこのミッションの結果がどうなるかは知っており、それこそ『EP3』でアナキンがベイダーになるくらい予想できます。しかしそこには予想を超えた多くの人々が登場し、思いがけない激しい戦いが繰り広げられるのです。帝国の支配に屈すまいとする心が見せる、カノン(正史)では語られない名もなき人々の物語。それがここまで熱く魅力的な物語になるとは!

激しい戦闘や散りゆく仲間たちといった戦争映画としての側面、個性的なキャラたちのチームによるケイパーものの側面、そしてジンの辿る旅路という人生ドラマの側面と、色んな観点があります。その主人公ジン・アーソ役には『博士と彼女のセオリー』『インフェルノ』のフェリシティ・ジョーンズ。彼女がいかにして反乱軍と関わっていくのか、そしてなぜ帝国軍に立ち向かうことになるのかを中心に、ジンが小さい頃に生き別れた父役のマッツ・ミケルセン、かつて幼いジンを育てた戦士ソウのフォレスト・ウィテカー、他にも幾多の仲間たちが絡んできます。宇宙最強の男ドニー・イェンが盲目の戦士として登場するのもカンフー映画ファンには嬉しいところ。というか狂喜乱舞です。

ギャレス監督は『スター・ウォーズ』大好きだそうで、それを感じさせる要素が随所に見られることからも仕事を超えた情熱と愛があったんでしょう。観終わったらすぐに『EP4』が観たくなること確実なので、復習しておくなら『EP3』ですかね。新キャラの名前だけはあらかじめ覚えておくと混乱しなくてよいかもです。歴史の狭間を埋める者たちが、受け継いだ意思、そして正しいと信じる自らの意思で挑む困難なミッションへの興奮。そして『EP4』へ直結するクライマックスへの涙。これは確かに『スター・ウォーズ』だ!最高です。

↓以下、ネタバレ含む。








■神話を繋ぐ者たち

あくまでスピンオフだということでしょうが、最初ルーカス・フィルムのロゴの後にオープニング・クロールが流れないというのにはちょっと戸惑います。が、少女のジンを助けにきたソウの言う「長い旅の始まりだ」という台詞からの、タイトルどーん!でもう泣きそうになるんですよ。それは『スター・ウォーズ』がライトサイドとダークサイド、帝国軍と反乱軍の対立のなかで、正しき道を求める人々の長い旅路の物語でもあるからです。宇宙を舞台に神話を描いた現代の一大サーガと言えど、それを組み上げるのは一人一人の行動です。アナキン・スカイウォーカーは暗黒面に飲み込まれて道を失い、ルーク・スカイウォーカーは父を越えてフォースにバランスをもたらす。そして歴史の表舞台には表れない人々もまた、それぞれの思惑や信念で生き、あるいは誰かの影響を受けて行動し、そういった結果が歴史に影響を与えているのです。『ローグ・ワン』はそんな歴史に埋もれた名もなき人々に焦点を当てたことがまず最大のポイントです。

『EP4』の世界観を崩さず、それでいて新しい画をどんどん見せてくれるのも素晴らしい。様々な惑星の情景がバラエティ豊かだし、反乱同盟軍が一枚岩ではなく強行派と穏健派が衝突するというのも面白いところ。戦争映画の様相がシリーズ中最も濃いのも特徴で、ジェダでの市街戦やスカリフでのゲリラ戦は激しく、スカリフで撃たれた仲間に咄嗟に駆け寄るちょっとしたシーンなども印象深くて、キャシアンたちが心を殺してスパイ活動をしていたことなども含め、これが戦争であるということを見せつけてくれるハードな一面はシリーズにむしろ厚みを与えてくれます。また後半のスカリフ到着後以降は見せ場の連続で、侵入チームと陽動チームの活躍が並行して描かれるのも『スター・ウォーズ』っぽいし、南国の浜を歩くAT-AT(正確にはAT-ACT)とXウイング隊の戦闘などもガン上がりだし、どんどん集まる反乱軍の戦艦・戦闘機やシールド基地から出てくる夥しい数のタイ・ファイターによる宇宙船も大興奮で、中盤に若干感じる停滞感をものの見事に吹き飛ばしてくれます。

シリーズ通しての「初めて」というのも色々あって、青空に浮かぶスター・デストロイヤーという絵面は初めて(だったはず)だし、イードゥでシトシトと降る雨というのもなかったし(『EP3』で嵐の中で戦うのはあったけど)、ダース・ベイダーをここまで怖いと思ったのも初めて(これは本当に素晴らしい)。そしてこんなに泣けるスター・ウォーズも初めてです。ついでにここまで人間をボコるドロイドも初めてですが。

ゲイレンの仕込んだ脆弱性により、なぜデス・スターがプロトン魚雷一発で爆発したのかに明確な理由付けがなされているのが『EP4』を補強する形になっているのには感心。同じく、デス・スターがリアクター1基でジェダ・シティを吹き飛ばす経緯を、時間差を使ってその破壊力を視覚化したことで、『EP4』でデス・スターがオルデランを一撃で破壊するパワーに説得力を与えています。また『EP3』でジェダイが粛清されたことを受けてフォースそのものが語られなくなって久しく、それ故にフォースというものが具体的な力ではなく概念的なものとして扱われますが、これがむしろフォースを希望の象徴として信じることに繋がるのが上手い。そして逆に、本作でフォースを実際に使うのが唯一ダース・ベイダーだけというのが、ベイダーの恐ろしさを格段にアップさせてもいます。スター・ウォーズ大好きな男が想像し尽くした創造、というのが細部にまで感じられて、たまらなく滾るものがあります。


■はみ出し者たち

一部を除いてそのほとんどが『EP4』以降は登場しない人ばかりなので、今回限りの登場人物が多いのだろうというのは予想されるわけですが、親近感を持たせるキャラばかりなのでどうしてもその最期には泣けてしまいます。人物描写が薄いという意見もあるようですが、必要最低限は備えられていると思うし、むしろ想像の余地があると言えます。これは『スター・ウォーズ』過去作と同程度のバランスでしょう。

キャプテン・キャシアン・アンドーは6歳から反乱軍に入り、大義のために手も汚してきたと明かします。でも望んでそれをやっているわけではないというのは、最初に探っていた相手を撃った後で一瞬魂の抜けたような表情をすることからも察せられます。ジンの父であると知るゲイレンの暗殺は実行できずに終わりますが、「命令だから」に「ストーム・トルーパーと同じね」とジンに返され、己のやってきたことを省みたかもしれません。そしてただ言葉として発するだけだった「希望」を体現しようとするジンに、キャシアンの押し殺していた本心は解放されたのでしょう。演じるディエゴ・ルナは抑えめながら細かい表情などが上手いですね。逆にキャシアンの相棒であるK-2SOは、キャシアンとは逆に「回路に浮かんだことをすぐ口にして」しまう皮肉屋。クローン兵のように命令をこなすキャシアンと人間くさいK-2SOという逆転した関係性が、互いを補完しているようで面白いです。フォーマットの副作用ってスゴいな。

ボーディーはパイロットというより配送業の兄ちゃん的な親しみやすさがありますが、ゲイレンのメッセンジャーとして帝国から脱走というその動向が帝国軍・反乱軍双方を動かすことになるキーマンでもあります。そのわりにはタコみたいなヤツに触手責めされるというヘンにエロいシーンがあるのが可笑しい。演じるリズ・アーメッドは『ナイトクローラー』『インフェルノ』などでも印象深い役をやってますね。ボーディーはジンたちと行動を共にする中で最も微妙な立ち位置ですが、そんな彼が仲間たちの顔を見回して「ローグ・ワン」と名乗るところが、信頼を感じさせてくれて良いです。そんなボーディーが探しに来た過激派のソウ・ゲレラ。意外とあっさり退場するのは残念ですが、その威圧感ある風貌とは裏腹に両足を失い疑り深さに染まった現状、加えてジンへの思いと、複雑な設定を短い時間で一気に理解させるフォレスト・ウィテカーは凄いですね。呼吸装置を吸うときの音がちょっとダース・ベイダーっぽいのも不穏で良いです。

そして盲目の戦士チアルート・イムウェですよ。いやまさかドニーさんの高速アクションをここまでしっかり取り込むとは。それほどカット割らずにわりとちゃんと見せてくれるのも興奮度高いです。トルーパーをむっちゃ盾にするし、タイ・ファイターまで打ち落とすし、さすがドニーさん(という一言で許せてしまうのがドニーさんたる所以です)。祈るにように唱える「フォースは我と共に、我はフォースと共に」は、フォースが希望の象徴であることの表れでもありますが、フォースが忘れられた世界でその存在を語り継ぐ意味もあるのでしょう。一方チアルートの相棒のベイズは、連射を使いこなす射撃の腕前、スタンガンまでそろえた装備の充実となかなかの武闘派。でもわりと陽気な面もあり、演じるのがチアン・ウェンというのもあってなんか三国志とかの武将を思わせます。AT-ACTにランチャーかまして効かないときの「うそーん」みたいな表情とかイイ。ベイズ自身はフォースを信じているわけではないようですが、フォースを信じるチアルートを信じて行動を共にしているということなのでしょう。そして「幸運を」「必要ない、お前がいる」のやり取りだけでこの二人の絆がわかります。


■受け継ぐ者たち

大人になったジンの初登場は監獄の中であり、ジンは最初からアウトローです。帝国の支配から目をそらし、反乱軍に協力してソウの元へ行くのも自由の身になるため。やがてデス・スター設計図奪取に行くのも評議会の決定を無視しての行動です。しかし前半と後半ではジンの行動原理は大きく違います。最初ジンはキャシアンの言う「希望」もソウの言う「大義」も鼻で笑い、帝国の旗が翻るのも見なければいいと言います。しかし自分を育ててくれたソウの「反乱軍を救え、夢を救え」と言う言葉、父ゲイレンが死に瀕してなお「止めなければ」とジンに託す思い、そんな命懸けの言動はジンを変え、キャシアンに言われた「反乱軍は希望を信じて戦う」という言葉を自分の思いとして評議会の面々にぶつけるに至ります。決めることが大事なのだと。そして「苦しいときいつも一人だった」と言うジンを「君も仲間だ」と受け入れるキャシアン。正規の軍ではない"はぐれ者"集団、しかし「希望を信じる」という思いにおいて誰よりも反乱軍の基本理念を体現する者たち。だから「ローグ・ワン」というコードネームはまさにジンたちに相応しいわけです。ジンとキャシアンの心変わりの経緯をもう少し丁寧に描いていればなお良かった。

ジンは父ゲイレン、母ライラ、ソウ、それぞれから受け継いだ希望を胸に動くことになり、その希望は仲間たちへも引き継がれてローグ・ワンが誕生します。またクレニックに対して、序盤で母が言う「勝てないわよ」、父が死の前に言う「勝てないぞ」を引き継ぐ形で、ラストに「あなたの負けよ」と娘であるジンが突き付けます。さらにジンは母のネックレスを「May the force be with you」の言葉と共に受け継ぎ、「May the force be with us」の言葉で皆に勇気をもたらします。ジンは受け継ぎ、受け渡す者なのです。そんなジンたちが決死で盗んだ設計図は反乱軍へと渡り、名もなき兵士たちの命懸けの手渡しでリレーされ、最後にそれは「新たなる希望」となってレイアの手に受け継がれます。『EP3』から『EP4』へ受け渡す物語として、これ以上のものはないでしょう。『スター・ウォーズ』に更なる深みを増すことに成功しているという観点で、このスピンオフは番外編以上の意味を持っている、というのが実に素晴らしいです。

 ※

ああ、もっと細かいことも色々書きたいのですが……長くなりそうなので(案の定)、それはまた次の機会に!

 ※
 
【追記】続きをアップしました!
 →最高な点をひたすら上げていこう。『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』感想(その2)。

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