2016
12.11

雪山で探し物(ツラい)!『疾風ロンド』感想。

sippuu_rondo
2016年 日本 / 監督:吉田照幸

あらすじ
目印はテディベアだけ(ツラい)。



大学の研究所で偶然出来上がった生物兵器「K-55」が盗まれ、研究所所長の元に3億円を要求する脅迫メールが届く。K-55を秘密裏に探すよう命じられた研究主任の栗林は、やがて日本最大級のスキー場へと辿り着くが……。東野圭吾の同名小説を映画化したコミカルなサスペンス。

生物兵器に成りうるウィルス「K-55」、全国民を人質とした3億の身代金、警察を頼れないなかそれを捜索する一研究者と、設定だけ聞けばシリアスなドラマを思い浮かべそうですが、これが全然そんなこともなく、むしろユル~い感じのコメディです。何しろ主人公の栗林はうだつの上がらない中間管理職、金などないと言い張る研究所所長に無理やりK-55探しを命じられ、どうしよう……と頭を抱える始末。そんななか、K-55を盗んだ犯人の元研究員がなんと事故で死亡したという連絡が。ブツの隠し場所がわからない、発覚すれば大変な責任問題、所長は怒鳴り散らす、どうしよう……というのが観てる方としては笑えます。今年の邦画が傑作だらけだったのもあって、ちょっとダラッと観たいなーという時にはピッタリの力の抜き具合。東野圭吾原作のミステリーながら、笑いとサスベンスとお涙頂戴のバランスが良くて気軽に楽しいです。監督が『あまちゃん』の人と聞いてそれも納得。

そんな感じなので、やがて舞台がスキー場へと移っても、雪山の山荘的な真面目なミステリー展開にはなりません。何といっても栗林役の阿部寛です。これが『海よりもまだ深く』よりさらにダメ親父なんですが、デカい体を曲げてボーゲンしたり、見事に雪に埋まったりと超愉快。コミカル寄りの阿部寛が好きならそれだけで満足ですよ。栗林がスキー場で出会うスノーボードクロス選手の千晶役が大島優子で、彼女目当てで観に行ったようなもんなのに阿部寛の方に萌えるってどういうことなんだ。またスキー場のパトロール隊員役、大倉忠義(関ジャニ∞)を、観る前は大倉孝二と勘違いしてて『ロマンス』に引き続き優子と共演なのか?と思ったら大倉違いでした。柄本明は『シン・ゴジラ』から一転なかなかのクズっぷりだし、ムロツヨシは『ヒメアノ~ル』に続き安定の気持ち悪さだし、チョイ役たちも美味しいです。

話は若干大味だけど、久々にスキー場に行きたくなる爽快さもあったり、結構スリリングなゲレンデチェイスもあったり、意外と泣かせる家族ドラマもあったりと楽しかったです。

↓以下、ネタバレ含む。








阿部寛は面白いなあ。特にうろたえる姿と調子こいてる姿が可笑しいんですよ。幼女に「頑張って」と言って「お前もな」と返されたり、頑張りすぎて筋肉痛で歩けなかったり、雪にズボッと埋まるフォームなんて超綺麗にキメてくれます。しかも二回。「いっぱい死にますよ」とか台詞の重ね方でもクスリとさせるし、そこはムロツヨシの「埋まってらっしゃったんで」も同様で、言い方もあって笑ってしまいます。ムロは最初は完全にストーカーみたいだし、ドドメ色で呼称が統一されていくし、スキーでのチャンバラでは股間攻撃されたときの顔が最高。「スノー・ウォーズ」にはなるほどと思いつつ若干寒いものがありますが、これによってスキーチェイス時に撮影者の影が映っても不自然じゃないし、それが拡散することによる千晶の変化にも繋がってて上手いと思いましたよ。

あとはスキー店主のでんでんが店を構えてると『冷たい熱帯魚』を思い出して絶対裏で何かやってると思ってしまうし、最後の生瀬勝久の「フランクフルト」なんて反則に近い。ホテルマン野間口徹の行き先は名古屋とバラしちゃった時の表情も絶妙。あのフロントがコーヒーを持ってくるのは粋でしたねえ。ここまでやられると探知機が非常に適当くさいのにも笑ってしまうし、冒頭の犯人が言う「さあ、ゲームの始まりだ」というベタにも程がある台詞も「ああ、ギャグだったのか」と思えます。

ミステリーとしてひっくり返るほどの驚きというのはなかったですが、瞬間での細かい驚きがわりとあるので飽きません。家族連れが自家用車ではなくバス利用であるのは「おお」と思うし、そのバスが出発した直後とかは結構焦るし、薬をうっかり落としてビンが割れる瞬間などは、すぐに偽物だろうと思い当たるもののその一瞬は息を飲みます。直後の阿部寛の地面這いずりリアクションも最高。すり替えは終盤に息子の秀人も行い、まさか二回もやるとは、と良くも悪くも予想外ではありますが、それを匂わせるショットはさりげない繋ぎ方でちゃんと入れてあるし、わりとフェアではありますかね。「ロンド(輪舞曲)」だしね。二度めは親子の絆を深める要素でもあるし。秀人役の濱田龍臣くんはちょーっと演技の微妙さが気になりましたが、代わりに高野家の家族ドラマが手厚く、特に最後の麻生祐未の喋り方、抑揚の付け方が何だか良くて泣かされました。あと秀人が知り合った女子が高田くんが好き、くらいは予想しましたが、まさか兄の大学生の方が好きという「それは敵わねーな」感が予想を超えてて良かったです。

栗林の奮闘する姿は情けなさや滑稽さに笑ってしまうものの、基本的には息子との生活を守るための行動ではあります。しかしその息子との距離を埋めないまま進んでしまうためこじれてしまう。反抗期の息子であるというのと、父一人子一人だからこそ言うべきこともあるというのが、いい具合に絡み合った展開は上手いところです。そしてヘタレ気味だった父が、最後にB'zの曲のイントロをバックに歩み去る姿のカッコいいこと。細かいことを言えば気になる点もありますが、痛快な終わりかたもあって気持ちが良いです。

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