2016
11.27

蛙の唄は雨の日の断罪。『ミュージアム』感想。

museum
2016年 日本 / 監督:大友啓史

あらすじ
ゲロゲ~ロ。



雨の日に起こる連続猟奇殺人事件。容疑者として雨ガッパを着てカエルのマスクを被った通称「カエル男」が捜査線上にのぼる。事件を追う刑事の沢村だったが、やがてカエル男の仕組んだ残酷な罠にハマって……。巴亮介の同名コミックを、主演に小栗旬、監督に大友啓史で実写化したサイコ・スリラー。

殺しを芸術と見なし、ミュージアムに飾るかのごとく見せるための死体を用意し、作品名を書いたカードを置いていくという謎の猟奇殺人犯。それを追う刑事の沢村は、思いがけない形で事件に関わっていくことになります。過激な描写、緊迫の展開には多分に『セブン』の影響は見られるものの、不穏さを醸してショックを突き付ける流れには引き付けられるし、絵になるショットも既視感はあれどなかなか良いですね。レーティングなしでここまでやったのはPG12の実写版『寄生獣』に劣らず頑張ってる。ただ、予想の付く謎、不可解な後半の展開、そのシーンいる?という点などが気になるせいで、どうしても物足りなさは残ります。

主人公の沢村を演じる小栗旬は多少型破りなデカ役としての雰囲気は悪くないものの、とにかく叫びすぎ、喚きすぎの演技が目立ちます。落ち着け、って言いたくなる(設定的に無理なのはわかりますが)。沢村の妻を演じる尾野真千子も同様です。この辺りの過剰さは同じ大友啓史監督の『るろうに剣心 京都大火編』でも見られたので、演出のクセなんですかね。『シン・ゴジラ』の尾頭さんこと市川実日子が今作はクールさにビューティさも加えて良い感じ。沢村の後輩刑事の西野役は『ちはやふる』の野村周平ですが、最初誰だか気付かなかったのでなんか申し訳ないです。

雨の日に犯行が起こる、ということで雨のシーンが多く、それがまた薄暗い雰囲気を増しているし、晴れ間との対比が効いてて良かったりもするんです。お話的には、未読ですが原作準拠ってことなんでしょうか。だとすればもう少し脚色した方がよかった。ちなみに「カエル男」を誰が演じているかは知っててもそれほど問題はなかったです。むしろ知ってた方がかえって驚くかも。

↓以下、ネタバレ含む。








犯人の動機が「作品」を見せるためであろうとか、雨の日しか出ない理由が何らかのアレルギーであろうとか、わりと予想通りに進んではいくものの、それでも前半は猟奇的な殺しの手口や演出で引き込まれます。「ドッグフードの刑」は犠牲者が女性と知って余計ゾワゾワしたし、「母の痛みを知りましょうの刑」で部屋のドア陰にいるというのも驚いたし。オタク男が「死ね!」とか毒づく姿とか部屋の様子とか念が入ってます。「ずっと美しくの刑」は『SAW』の2作目(3作目だっけ?)を思い出しますが、全裸で笑顔の氷漬けはなかなかの絵面。でもレイティングの関係上しょうがないとはいえ、映し方が物足りないのでどうしてもインパクトには欠けるんですよ。「均等の愛の刑」などはその残虐性が台詞に頼っちゃってるし。犯人の霧島が過去に犯した「少女樹脂詰め」事件の方が個人的には印象的でした。

小栗旬が叫びすぎだったり尾野真千子が騒ぎすぎだったりと、どうも仰々しい演出が多いです。沢村の置かれた状況も分かるけど、車にははねられまくるし、それで弱ったとは言え霧島に格闘で負けるし、しまいには妻子を模した人形に謝っちゃう。アレルギーに思い当たるラーメン屋のエビに客が怒るシーンも大げさで、そこでインパクト与えてもしょうがないんですよ。逆にハンバーガー肉の正体がミスリードだったのには騙されたし、せっかく精巧な妻子の首で驚かされたのに、次のシーンであっけなくフェイクとバラすのも勿体ない。霧島が最期に薬を入れられて痙攣するとき地震かというほどベッドが震えるのもやりすぎです。また、必要性が疑問なシーンも多いです。モノローグがちょいちょい入るのもいまいちだし、いい感じだったカーチェイスがなぜか途中で左右にわかれるのはそこまでの勢いを削いでます。大森南朋の演じる沢村の父親のくだりでは沢村が刑事になった理由が語られますが、沢村が父親と同じことをしているのが分かるだけで正直全く必要ないし、通り魔に掛けた手錠の鍵を飲み込んじゃうのもこれまた余計なインパクト。もっとエピソードや回想を吟味して後半を切り詰めたほうが良かったと思うんですけどね。

映像的にはかなり良かったです。雨が降りしきる中での現場検証の画などはシブいし、これから殺されるというシーンの恐怖はかなりのものだし、太陽を見上げてからの西野を突き落すところなどは構図的に実に好きなショットです。あと田畑智子が「彼氏なんていません」と言う瞬間の、遡って犯人と直面していたシーンのさりげなさもイイ。また、カエル男こと霧島役の妻夫木聡はスキンヘッドにただれた顔や体が強烈で、ひたすら己の美学を貫く姿勢が一貫していて見事なサイコです。ノリノリでハンバーグを作る姿などはクレイジーさ最高潮。本当に殺して食べちゃったんならもっと凄いんだけど、あくまで沢村の絶望を引き出すためということでしょう。だから妻をカエル男と間違えて殺すでも、息子を救うために妻を殺すでもどっちでもよかったんですね。正直詰めが甘いし、最終的にどういう「作品」を作りたかったのかがよく分からないし、最後に追い詰められて日光の下に出たときに「なぜフードを被らない?」とも思いますが、悪役としてはなかなか際立っていたのが救い。まあその追い詰めるシーンで松重豊が不穏な台詞を吐くため、ここで霧島を殺しちゃうんじゃないかという方がヒヤヒヤしましたが……。

裁判員制度で冤罪の男を死なせたことが発端となるこの事件。「◯◯の刑」のネーミングには統一性がないものの、誤った判決を出した裁判員たちに刑罰を下す、という点で被害者たちは繋がっており、奇しくも(あるいは意図してか)カエル男もまた人が人を裁くという形で犯行に及んでいます。沢村にだけ執拗な精神的ダメージを加えるのは「どうすればそこまで壊せるんだ」というのが理由であり、家族をないがしろにした沢村への追い込みでもあるわけです。法に背くのとはまた別の罪を、人は知らずに重ねているのかもしれない、と考えるとなかなか恐ろしい話です。そしてラスト、たかがコンビニに家族三人で行ったことを絵に描く息子、それを知ったことで沢村はようやく家族を取り戻します。しかしラストに映る息子の日光過敏症的な反応により、新たなカエル男誕生の可能性を示唆する。このイヤーな感じが作品のトーンに似つかわしいです。

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