2016
11.10

立ち上がれ!そそり立て!『ソーセージ・パーティー』感想。

Sausage_Party
Sausage Party / 2016年 アメリカ / 監督:コンラッド・バーノン、グレッグ・ティアナン

あらすじ
パンなのに!エロい!(錯乱)



お客に買われ、外にある"楽園"へ行くことを夢見るスーパーマーケットの食材たちは、今日も歌いながら開店時間を待っている。ソーセージのフランクは恋人であるパンのブレンダと結ばれる運命が待っていると信じていた。遂に2人揃ってカートに入れられる時がきて喜ぶフランクだったが、そこでアクシデントが発生し……。擬人化された食材たちを描く、エログロ満載の"大人"向けCGアニメ。

概要だけ言うと「スーパーの外には楽園があると信じる食材たちが自由のために立ち上がる」というものなんですが、そんな字面からは予想もつかない破天荒さ。ソーセージやパンや野菜や瓶詰めのジャムやら人間から見れば普通の食材が、彼らの世界では顔があり手足があり喋りまくる。さらには恋愛したりエロいことをしようとしたりもします。そして人間は楽園に連れていってくれる「神」であり、スーパーのドアの向こうはパラダイスなのだと信じています。まあ食材なのでスーパーから出たら当然食われるんですけど、それを容赦ない残虐描写(食材たちにとっては)で描くというはじけっぷり。やがてその真実を知った食材たちがどうするか、というのも見もの。エロとグロを食い物でやるという狂った発想が見事に結実し、爆笑お下劣展開に目が離せません。レイティングはR15+ですがR18でもおかしくないです。子供は観ちゃダメよ?

そもそも主人公フランクとヒロインのブレンダは形状からして完全にアレです。フランクの声を当てるセス・ローゲンが製作、脚本も務めているという時点で方向性はわかりますが、予想を超える展開には笑うしかありません。他にも『ゴーストバスターズ』も記憶に新しいクリステン・ウィグや『21ジャンプストリート』のジョナ・ヒルらコメディ系の猛者にジェームズ・フランコやエドワード・ノートンまでが声で出演してます。 監督のコンラッド・バーノンは『マダガスカル3』の監督で、そのテンポの良さになるほどと思いますが、もう一人のグレッグ・ティアナンが『劇場版きかんしゃトーマス』シリーズの監督というのは「マジか」という感じ。音楽のアラン・メンケンは『美女と野獣』や『塔の上のラプンツェル』などディズニーアニメの数々を手掛けた人でこれまた「マジか」です。つまり本気で作ってるということですね。

ミュージカルで戦争映画でスプラッターで、でも核はラブストーリーという訳のわからなさ。さらに『トイ・ストーリー』では決して出来ないことをヤクを使ってやってしまう。頭おかしいのにこの完成度というのが最低で最高!ある意味コメディ映画の懐の深さを思い知ります。あとこれを観た後はホットドッグを見るだけで欲情するという困った副作用があるので要注意です。いやマジで。

↓以下、ネタバレ含む。








ルールを信じ込まされ本当の世界を知らない者たちが、真実を知って立ち上がり自らの手で自由を勝ち取る、というのは、ある種ディストピアSFに近いですね。食料として陳列されるのは『デイブレイカー』のようだし(って食料なんだけど)、現実の世界は実は残酷、というのは『マトリックス』のよう。その残酷さの見せ方はむしろホラーで、食材たちが剥がれ斬られ搾られ砕かれ焼かれてチンされる、という最期は阿鼻叫喚(調理してるだけだけど)。ソーセージ仲間のバリーがカールの目の前で縦に真っ二つというのはエグすぎて逆に笑っちゃいます。また、楽園に行けずカートから落ちた者たちの辿る死の描写は『プライベート・ライアン』かというような戦争映画的表現になってます。映画ネタは色々とありそうですね。ガム博士のT-1000とか爆笑。

結構色んなキャラが登場しますが、それぞれ何らかの象徴性があるのが特徴的。ベーグルのサミーベーグルJr.(サミー・デイビスJr.からか?)は呑気なアメリカン、ラヴァシュのカリームはイスラム系、ブレンダに惹かれるタコスのテレサはレズビアン、短めなソーセージのカールは身体的な問題、ガム博士は車椅子と、人種とかジェンダーとか障害とか様々な側面が浮かびあがるキャラ配置です。そこに対立や迫害や孤立といった、実写であれば重くなりそうな要素を巧みに織り混ぜてます。そして主人公カップルを手助けするのがそういったマイノリティであることで、差別などブッ飛ばして皆でパーティー!というラストに繋がるんですね。唯一ここからはみ出るのが極悪ビデですが、フランクを逆恨みし、他の食材から命を奪うという完全なるヴィランであり、一人だけ全く別次元の存在。だから食材でさえない。でもそこにシモ関係の商品を使ってしまうのが徹底してます。

凄いのは、食材の世界と人間の世界、この決して交わることのない、だからこそファンタジーで通っていた二つの世界を、"バスミント"でハイになることで繋げてしまうという画期的な展開。フランクの演説に耳を貸さない食材たちに、それ以前にスーパーの食材がどうやって人間に対抗するのかという疑問に、とんでもない解決策を出してくるのです。これがどういうことかと言うと、第三者的に眺めてあははーと笑っていた架空の世界が、突如現実を侵食してくるということなんですね。だからここからは人間にしてみれば狂気の世界。ジャンキーは首チョンパ、ミントに炭酸で爆裂、伸びるグミらしきもので縛り付けてフルボッコ、暗黒神はビデを突っ込まれ(ここでも性差を超越)花火で壮絶に吹っ飛んで爆死。そうして人間どもを皆殺しにしてどうするかと言えば、男も女も関係なくセックスしまくりの大乱行パーティー。大虐殺の後だというのに「なんというピースフル!」と思ってしまう。この落差に「これが自由というものだ」と納得しちゃいますね。していいのか?まあいいか。だってこのパーティーが行われる日は、奇しくも「独立記念日」なのだから。

最後には「これはアニメだ」とメタなネタまで入れて、セス・ローゲンとエドワード・ノートンは顔見せまでやってしまう。まるで「文句があるなら俺に言え」と言わんばかり。そして彼らは別次元に、つまり我々の現実世界へとやってくるのです。さてどうするか。食うか殺られるかの争いを繰り広げるのか?あるいはこのパーティーに参加するのか?それはあなた次第なのです!(パンツを脱ぎながら)

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