2016
11.08

新世界の神は彼方へ。『デスノート Light up the NEW world』感想。

deathnote_LNW
2016年 日本 / 監督:佐藤信介

あらすじ
一番の元凶=死神大王。



名前を書かれた人間は必ず死亡する「デスノート」。キラとLの頭脳戦から10年、死神が人間界に再びデスノートをばらまき、世界中が大混乱に陥った。警察のデスノート対策本部とLの正統な後継者である竜崎は、持ち主を探して捜査に当たるが……。大場つぐみ、小畑健のコミック『デスノート』実写映画化シリーズの10年振りとなる続編。監督は『アイアムアヒーロー』の佐藤信介。

藤原竜也、松山ケンイチ主演の『デスノート』『デスノート the Last name』以来10年経っての続編登場です(その前に『L change the WorLd』というスピンオフもありましたが)。キラこと夜神月(ライト)とLの死闘から10年、「名前を書かれた者は死ぬ」という死神のノートが新たに6冊人間界にもたらされ、警察の三島とLの後継者である竜崎、キラの信奉者の紫苑や他所有者たちがノートを巡って対立します。『デスノート』と言えば、ノートの厳格かつ詳細なルール設定、そのルールを利用したり裏をかいたりしての非常にロジカルな展開、天才vs天才のあらゆる読みを駆使しての頭脳戦、そして「死」という決定的な退場によって勝負がつくという容赦のなさ、といったところがポイントですかね。ぼくも原作はハマって読んだし映画版も観たし西尾維新の小説版まで読みました(ドラマ版は観てないんですけど)。

そして今作です。端的に言えば、色々問題点が多い出来。特に脚本ですね。辻褄が合わない、行動が理解不能、頭脳戦になってない、とロジカルな快感を求めると致命的な点がいくつかあって、そこは非常に残念。ただ、そんな脚本の粗はできるだけ流して、半ば強引に画の力で魅せようとする佐藤信介監督の演出は結構冴えてると思うし、役者陣の演技も良いので、観てる間はわりと楽しいです。派手なシーンはとことんやるという割りきりが面白くて、脚本に不満のある監督がわざとやってんじゃないか?と思うほど。あとミサミサとポテチくんの会話に滲む狂気が凄いです。

三島役の東出昌大、竜崎役の池松壮亮、紫苑役の菅田将暉の三人はとても良かったです。特に池松壮亮の荒くれ探偵ぶり、菅田将暉の独特な抑揚の付いた台詞など、異質だけどしっくりくる感じが面白い。紫苑の白い衣装はなんかスペースノイドみたいで宇宙人ぽいですね。ミサミサこと弥海砂の戸田恵梨香も再登場、すっかり大人の女性なのでミサミサと呼ぶのは抵抗ありますが。またお馴染み死神のリュークは声も前作までと同じ中村獅童で、よりリアルなCGで描かれます。リューク以外の死神も登場し、女性型の死神アーマに沢城みゆき、死神ベポには松坂桃李が声を当ててます。刑事の一人、松田が10年前と同じキャストというのは芸が細かいですね(キラ派の女性レポーターもそうなのかな?)。

デスノートはかくあるべき、というこだわりの強い人には正直勧めにくいのは確か。実際不満点は挙げるとキリがないんですが、力技の演出で結構観れてしまいました。でも思い返すと色々と気持ち悪さは残るんですよね。

↓以下、ネタバレ含む。








■6冊のノート

致命的だな、と思う点を挙げていくと、まずせっかく「人間界で同時に存在していいデスノートは6冊まで」という新ルールが提示されたのに、結局警察も竜崎も紫苑も6冊総取りが目的となって、デスノートを6冊出す意味がないこと。ワールドワイドな展開もあるのかと思わせておきながら、アメリカの投資家とか数合わせのやっつけ感がスゴいです。次にコンピュータ・ウィルスで世界中の要人の個人情報を抜いて人質と同じだとか、そこから他のデスノートを見つけるとか、セキュリティ対策の著しい昨今であのウィルスは都合がよすぎます。竜崎の作戦により紫苑の居場所を逆探知するのもやたら早いし。

それからなぜミサが紫苑に協力したのか、そしてなぜ死んだのかという点。月のいない世界に絶望したのだとしても、10年も経っているだけに今更感があります。ちなみにミサが「月?」とポテチの袋に話しかけるのには、あのイモのキャラに月が憑依してるのかとビビりましたね(ポテチの袋から取り出すスマホがちゃんとビニールの小袋に入ってたのは良かったですが)。そもそもあんなことがあってミサが女優として活躍できてるのが不自然。また、なぜ竜崎は自分で出向いて簡単にやられたのかという点。これがLなら代役を立てるところでしょう。既に他のデスノートに名前が書かれていたから無事だった、というのも、たまたま自分が死ななかったから気付いた、ということなんでしょうか。

そして記憶の戻った三島はなぜ元の自分の理念に従おうとせず「え、俺?」みたいな反応なのかという点。そもそも記憶を無くしていたのにいつどうやって三島は竜崎の名前をノートに書いたのか?そしてなぜ竜崎はそんな経緯を知りながら三島を後継に選んだのか?ここは竜崎がそこまですることを見越しての三島の作戦なのだとすれば悪くはないですが、うーん、ちょっと厳しいですね。

細かいところでは、序盤の川栄李奈が次々殺していくシーン、角度的に顔を見たとは思えない人までバタバタ死んでいきますね。まあここはケレン味優先というところでしょうか。またミサが車で紫苑と話すシーンで松田たちは見た感じずっと画面を眺めてるのに、一瞬乱れる画面や2分以上止めた車に疑問を持たず異常なしにしちゃったり、警察がデスノート対策本部を何の代案もなく解散させたり、それ以前に本名隠して集めたメンバーのはずがなぜかその代表と過去事件を知る者が本名のままだったり、三島が脱走するときもデスノートを持ち出すときもそこまで見張りはいなかったのか?など、ちょっと警察を愚かに描きすぎな気も。あとは女刑事が三島たちが逃げてくる場所をどうやって知ったのか、兄の仇と言っていきなり撃ってくるのも唐突。一応兄のことを一瞬口走りそうになるシーンはあるものの、出し惜しみしすぎて伏線になってないです。リュークが紫苑の手助けをしちゃうのはよろしくないし、あと死神の目、あれは残りの寿命半分と引き換えに手に入れるというリスクの高いものなのに使われすぎですね。

「遺伝子を残した」って便利な設定だなーとか、他にも色々ありますがまあこの辺で。ひょっとしたら見落としていて実は説明があった、という点もあるかもしれませんが、それにしても粗い、と言わざるを得ません。


■ノートと銃

逆に良かった点。異国の地で甦り、死を願う老人に死を与えるデスノート、というのが何だか厳かなアバンタイトル、これは良い雰囲気ですねえ。川栄李奈の大量虐殺では混乱する周囲をぐるりとカメラが回りながら車が激突、炎上するという『アイアムアヒーロー』を彷彿とさせる迫力を見せてくれます。紫苑が約束の場所に入っていくときの西日に照らされた美しさ、対して三島の記憶が戻るときの周囲が無人となるうら寂しさ。それらのやり取りを根こそぎブッ飛ばす機銃掃射の無慈悲さ(当たらないけど)、そして紫苑の壮絶な最期、という流れも嫌いじゃないです(あの場所をどうやって警察が知ったのかは置いといて)。ひたすら名前を書いて対抗する紫苑に「ノートが銃に敵うわけないだろうが」という竜崎の作品内セルフツッコミによって「デスノートって派手なアクションはそぐわない設定なんだなあ」と妙に感心させられましたね。

死神アーマがやけにセクシーなのもポイント高いです。竜崎がアーマの崩壊に泣き叫ぶのは悲痛。竜崎はメタルひょっとこの仮面をかぶったまま死ぬシーンもせつないです。Lの遺志を継ぎ、デスノートは絶対に使わないと言う竜崎が、最後までそれを貫くのは良かったところ(どこでデスノートを手に入れたのか疑問ですが)。また紫苑がキラを信奉する理由はさすがにちゃんと描かれてましたね。犯罪者を憎み粛清するというキラの意思を、紫苑はそのまま受け継いでいると言えます。他のノートを求めず悪人粛清に徹していればよかったのに、とは思いますが、それも6冊集めるとキラに会えるという言葉に惹かれたからですね。竜崎も紫苑も、それぞれが受け継ぐ意思を持って対峙するという構図はやはり必要だったのでしょう。藤原竜也と松山ケンイチも顔を見せて、その継承を印象付けてはいます。

そして(そこに至る経緯の不自然さは置いておいて)デスノートを「デスノート・ノート」に持ち変えて去って行く三島こと中上。彼が本当にLの後継者となるのか、はたまたキラへと戻るのか、その感情が表情に表れそうなギリギリのところで暗転、という終わり方は良かったですよ。それだけにエンドロール後の「計画通りだ」は蛇足に感じます。


■ノートを継ぐべき天才

月やLに比べ、紫苑も竜崎も三島も「天才」という領域にまで描かれてないし、ヘボいミスもあるというのがやはり物足りなさではあります。正当な続編という既存の世界観であるし、「意思を受け継ぐ」という構造を真ん中に置いてもいるので難しいところではあるでしょう。ただ、「天才」の話を書くにはあらゆる論理による多角的な検証、あるいは多くの頭脳によるディスカッションなど、「天才」を描くための「努力」のプロセスが必要だと思うんですよ。脚本家の問題だけではなく、その脚本をジャッジする立場の人々(企画や制作ですかね?)がどれだけそれをこなしたか。ロジカル前提である物語の細部を詰める作業を怠ってはいなかったか。『デスノート』の続きを作るということは、そこを最も厳しく見られるということですね。

散々文句を書いておきながら何ですが、個人的には「嫌い」というほどではないです。でも守るべきラインを超えてないな、というのはね、やはり残念です。

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