2016
10.02

親愛の巨人。『BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』感想。

BFG
The BFG / 2016年 アメリカ / 監督:スティーブン・スピルバーグ

あらすじ
おばけキュウリ超マズそう……



ロンドンの養護施設に暮らす少女ソフィーは、ある夜たまたま見かけた巨大な人影にさらわれてしまう。それは子供たちに夢を届ける優しき巨人、BFG(ビッグ・フレンドリー・ジャイアント)だった。巨人の国に連れてこられたソフィーはやがてBFGと心を通わせるようになるが……。ロアルド・ダールの児童文学『オ・ヤサシ巨人BFG』を、スティーブン・スピルバーグ監督で映画化したファンタジー。

孤独な少女ソフィーと、やさしい巨人・BFG。ひょんなことで邂逅した二人の間にやがて結ばれる友情、そして不思議で奇妙な冒険が描かれます。原作は『チャーリーとチョコレート工場』のイギリス児童文学作家ロアルド・ダール。『チャーリー~』同様、現実世界から繋がるファンタジーの趣なんですが、これが懐かしき80年代スピルバーグのテイストで映像化されており、素材的な相性がすこぶる良くて実に心地よいです。未知の存在に対するドキドキ感、見たことのない冒険へのワクワク感、微笑ましいユーモアや暖かな感動。10歳くらいの少女がいかにして身長7メートルの巨人と心を通わせるのか、そして孤独な二人がどのような解決策を取るのかが面白いです。

BFGを演じるのは、スピルバーグの前作『ブリッジ・オブ・スパイ』で存在感を見せ、アカデミー助演男優賞を受賞したマーク・ライランス。なぜ彼が巨人役なのかは観れば納得。いやもう笑顔が癒しすぎます。体型は全然違うし鼻も耳も大きすぎるけど、それでもライランスの顔だとわかる絶妙なCG具合が上手いです。ソフィー役のルビー・バーンヒルちゃんは、好奇心が恐怖に勝ち、いざというときは大胆な子供というのが『E.T.』のエリオットぽさがあって良いですね。このソフィーの視点から見る巨人のジャイアント感もなかなかなのですが、全てがデカすぎる巨人の部屋の中でソフィーがちまちま走り回るのも楽しかったりスリリングだったりします。

BFGがよく言葉を言い間違えるという設定なので、「言い間違い」が「いいまつがい」、「人間」が「ニンゲンマメ」と訳されていたりします。"Human Being"を"Human Bean"に間違えてるということでしょう。これは訳す人も苦しかったでしょうね。英語がわかればその辺りももっと面白いんだろうなあ。

↓以下、ネタバレ含む。








序盤のミステリアスなのにどこか温かみのある映像がイイ。夜の街を進むBFGが人間に見つからないようにする隠れ技の数々も愉快です。養護施設の窓から差し込まれる巨大な手、戒めの言葉も空しく連れて行かれるソフィー、あまりの速さに街道の木が一斉になびくというシーンも面白い。BFGの家で巨大な包丁に驚いたり大きなボウルに転んだりといったソフィーが、不安がりながらも徐々にBFGへの警戒を緩めていくのがちょっとほんわか。ベッド代わりの帆船や、水面に飛び込んだ裏側にある夢の国の美しさなども心躍るものがあります。会話が長めに続くあたりやマルノミがやってくるシーンなどの中盤には若干のタルさを感じるんですが、BFGとソフィーの交流を丁寧に描いているということなんでしょう。おかげで二人の信頼関係が揺るぎないものになっていく、というのが自然と受け入れられます。

そしてとにかく後半の展開が物凄く面白い。女王様に助けを求めるというアイデアも奇抜ですが、いきなりファンタジーが現実と融合するダイナミックさを感じて一気にアガるんですよ。女王が出てくるのがいかにもイギリスっぽいとか、ほとんどまともに出てなかった「人間」が大挙登場するのも面白い。BFGが現れてから宮殿に招待されての一連の流れはユーモアと人間味に溢れていて最高です。特に食事シーン、大量の目玉焼きを一気にぐちゃぐちゃ食べて「うめー」とか言うのとか可笑しすぎます。あとナントカいうBFG自家製ドリンクの放屁力ですよ。あんな得体の知れないものをいきなり女王に飲ませるとか英国王室は肝がデカい。犬なら滑っていくほどの盛大な屁パワーに笑います。世話係のメアリーの優しさとか、執事頭Mr.ティブズの超イイ人な感じもスゴく好ましい。クライマックスの空挺舞台による巨人捕獲作戦も単純に「すげー!」と楽しめます。

BFG以外の巨人がさらに巨大なうえに粗野、服装も『ウォークラフト』のオークというか『ロード・オブ・ザ・リング』のトロールみたいだったり、地面というか芝生を布団代わりにしたりと雑な辺り、BFGとは全く異なるのはちょっと気になりました。別の種族ということなんでしょうかね。BFGが散々いじめとしか言いようのない酷い仕打ちを受けるので「おじいちゃん可哀相すぎる」という感じが強く、そのため最後にBFGが同族を人間に売ったという印象があまりしないのかもしれません。BFGは孤独であるというのがポイントなんですね。ソフィーは孤立しているという直接的な描写はありませんが、夜中に一人で屋内を歩き回りながら皆が寝静まった今が私の時間、などと言ったりするところに寂しさが垣間見えます。そんなお互い孤独な二人が互いを守ろうと必死に行動し、いつしか信頼を築いていく温かみ。もっと寓話としての解釈や深い読み方もできそうですが、ラストの色とりどりの野菜畑が象徴する幸福感、そして離れても見守ってくれているという安心感にじんわりするので、それでよいのだろうと思います。

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