2016
09.25

飛ばすぜ街道、七人衆(と猿)!『超高速!参勤交代 リターンズ』感想。

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2016年 日本 / 監督:本木克英

あらすじ
ヨーイ、江戸ーン!



湯長谷藩の藩主である内藤政醇に突如下された幕府からの参勤交代の命。知恵と工夫で何とか江戸に辿り着いた内藤らだったが、江戸から故郷へ帰る道中で湯長谷に一揆が発生したとの情報が入る。一揆を二日以内に収めなければ藩のお取り潰しもありうる一大事。内藤たちは行きの倍の速さで帰らなければならない……金なし、人なし、時間なしの弱小貧乏藩の奮闘を描くコメディ時代劇の続編。

前作の感想はこちら。
知恵と勇気と刀捌き(と尻)。『超高速!参勤交代』感想。

あの湯長谷藩の面々が再びやってくる!というかまだ参勤交代は終わっていなかった!前作のテイストはそのまま、続編の強みでキャラ説明を省いた分お話はサクサク進みます。まあベタなところはあるし、キレイごと言ってる感はあるけど、コメディとしても万人向け時代劇としてもこれはかなり良質。笑えるシーンは思わず吹き出しそうになるほど笑えるし、人情劇にはジワリとくるし、チャンバラシーンは斬られて飛び散る血も込みでたっぷり見せるし、今度は一騎討ちや合戦というアガる展開まである大盤振る舞い。緩急もありつつダレるところがほとんどない。いや驚きました、これは最初から最後まで面白い。

殿様の内藤が佐々木蔵之介というのがやはり面白いんですよ。お人好しで閉所恐怖症だけど、国を想い民に慕われ、おまけに剣の腕も立つ。主人公として実に魅力的。前作で深田恭子演じるお咲を娶り今作では祝言を挙げることになります。羨ましい(心の声)(だだ漏れ)。この殿様に付き従う(でもわりとフランク)のが、知恵者家老の相馬役・西村雅彦、意外と剣の達人・荒木役の寺脇康文、今作は力の抜き具合が激しい忍者の段蔵役・伊原剛志、J組のモテオーラを如何なく発揮する弓使いの鈴木役・知念侑李、馬屋番にして二刀流&千里眼の増田役・柄本時生、料理番にして槍使いの今村役・六角精児。こいつらが前作以上に個性を発揮していて実に面白い。加えて大岡越前こと大岡忠相役の古田新太がむっちゃカッコいいです。そして何と言ってもこの人、内藤たちを陥れようとする悪の権化・松平信祝(のぶとき)役の陣内孝則です。前作での処罰が軽すぎね?と思ってましたが、全ては今作のラスボス降臨のためだったのだと言えるくらい、極悪老中っぷりがホンットに最高です。

前作は深キョンのお咲の辺りがちょっともたった感がありましたが、今作は色々気にするお咲に村の奥さん連中が「いいんだよー」で済ませちゃうので手っ取り早い。参勤交代の切り抜け方も前作とは違う工夫があるし、湯長谷藩の七人の侍(忍者もいるけど)が激強くて燃えます。何より「笑えるシーンがちゃんと笑える」のが好き。前作が面白かった人なら必見、見事に痛快な歴史人情娯楽作です。

↓以下、ネタバレ含む。








家に着くまでが参勤交代だ、ということをすっかり忘れている湯長谷藩は、帰路は日銭を稼ぎつつのんびり。おかげでそれなりに金はあったわけですが、一揆発生時には行きの半分の二日間で戻らなければいけないという時間との戦い。おまけに通過ポイントでの大名行列も必要。前作と同じ手を使えばよさそうなものですがそれではつまらないわけで、ちゃんと新しい工夫も入れてきます。少ない人員を横方向に水増し、監視官には猿と春画(じゃないけど)で切り抜ける。さらには手配書をごまかすために死体となってピンチを乗り越える。この辺りはホント楽しくて、転がり出た死体役の殿様が桶に自力で戻るとか笑います。他にも笑えるシーンは挙げきれないほどあって、例えば戦いながら行う殿とお咲のラブラブ場面は、段蔵の「今やる?」まで含めてほとんどコントです。段蔵は今作はコメディリリーフな扱いが多くて、大合戦の大詰めなのにまだ煙幕扇いでるとか、いや戦えよ。他には溺れた鈴木が奥様連中にち○こ見られて失笑されちゃうとか。鈴木が熟女好きというネタはちょっと引きかけましたが、直後に意中の女性が今村に行っちゃうのでバランス取れてます。剛腕荒木が奥さんに問い詰められて「ごめんなさい」って言っちゃうのとか最高。寺脇康文は『殿、利息でござる!』よりこっちの方が良いですね。

しかし何といっても笑えるのが陣内孝則の信祝ですよ。いかにも時代劇の悪役という要素を笑い方から目バリまですべて取り入れた佇まいは強烈すぎて笑えます(ホメてる)。信祝は反省なんかしないし悲しい過去があるでもないし執念深いし、遂には将軍暗殺まで企てるという徹頭徹尾根っからの極悪人。負けて連行されながらも高笑いで去っていくとか悪党の鏡です。叔父の石橋蓮司が気の毒。内藤たちへの報復も国ごと奪うというえげつなさが光ります。ただちょっと引っ掛かるのは、尾張柳生の扱いですね。日陰者として生きてきた彼らが悲願の表舞台に立とうとして結局身を引くわけですが、信祝への恨み言もなく、当主の爺さんも「時期尚早、尾張へ帰ろう」とあっけない。渡辺裕之の諸坂があっさりリーダーの幻道(全然気付かなかったけど宍戸開だ)を殺すのもちょっと性急かなあとは思います。中尾明慶の暗殺坊主もミスキャストに思えるし。でもこの辺りは掘り下げすぎると肝心のライトさが失われるだろうからまあしょうがないですかね。

それにしても1000人の幕府軍にたった7人(+猿1匹)で立ち向かう湯長谷藩、というのが実に血沸き肉躍ります。七人が横並びで迎え撃つ姿のカッコよさね!民のために圧倒的な数に対峙する、まさに七人の侍ですよ。というかこいつら皆チートすぎるんですよ。鈴木の弓矢なんて鎧も貫くネジ込み矢とかもはやランボーかホークアイかってレベルだし、増田の軽業は香港アクションかってくらいだし、内藤がまた時代劇ヒーローまんまの鬼強さ。今作では富田靖子を先頭に女性陣も薙刀部隊として活躍するのも良いですね。あと大岡越前の古田新太が横に飛びながら十手を投げるというのは激カッコよくて震えます。上地雄輔が逆光から光が射したり笠の切れ目から目を覗かせたりやたらカッコいいショットが多い上に、殿の妹と色恋まであるのがちょっとイラッとしますが、今回はメインじゃないので良しとしましょう。

正直内藤は殿様としては良い人すぎるんですよ。段蔵の裏切りが娘を人質に取られていたためと知った途端「裏切ってなかったー」と刀捨てちゃったり、城が奪われてるのに水路を直すのを優先して出遅れたり。ただあまりに人あたりが好過ぎて村人にもほぼタメ口きかれたり、「この手に藩士や民の命が懸かってる」と弱音を吐いてしまう真面目さがあったりと、皆が付いていこうと思う慕われるリーダー像としては一つの究極形ではあるんですよね。ラストで信祝に「うちの藩に来ないか、裏切らないぞ」と言うのはさすがにあっけにとられますが、名君吉宗も「怒りは良くない、許しの心だ」と言ってるのに通じるものがあるんですよ。でもちょっとだけ、それ本当に善意なのか?ひょっとして最大級の侮蔑を与えているのでは……と考えてしまい、少し震えました。

それはともかく、あまりに勧善懲悪な話はリアリティには欠けるものの、ライトなテイストを貫いた娯楽作としては十分なバランス。「リターンズ」というタイトルが「続編」を示すというだけでなく「故郷に帰る」という意味合いも内包しているのが心地よいです。

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