2016
09.01

応援できる者の強さ。『青空エール』感想。

aozora_yell

あらすじ
一心不乱!



札幌の野球と吹奏楽の名門、白翔高校に入学した小野つばさは、野球部員の山田大介と出会い、甲子園で吹奏楽部として彼を応援するという約束を交わす。その実現のため2人はそれぞれの部活に励んでいくのだが……。河原和音の同名コミックを『ホットロード』などの三木孝浩監督で実写化した青春ドラマ。

観る前は正直「ちょいとスポーツも絡めた恋愛ものでしょ?」と若干ナメてたんですが、すんません、すげー良かったです!高校に入って出会った吹奏楽部の小野つばさと野球部の山田大介。この二人の恋愛要素は根底にはずっとあるんですが、そこにべったり寄りかかるということをしてないんですね。描かれるのは野球と吹奏楽それぞれの部活にかける熱意であり、他人とぶつかりながらそれでも諦めないことにより信頼が育まれ、失敗して考えて努力しての成長を促す。そしてエールを送り送られる姿により「応援する」ということをブレることなく貫き、しっかりとした青春物語にしている。いやこれはイイ。何度も涙ですよ。

主人公つばさ役は土屋太凰。キャラ的に正直ちょっとイラッとするところもありますが、だからこそそんな自分を乗り越えようとする、というのが活きてくるので許容範囲。つばさの友人・陽万里ちゃん役の松井愛莉、吹奏楽部長の小島藤子、先輩役の志田未来、野球部ジャーマネ平祐奈など、可愛い女の子も一杯出てて良い!しかしそれ以上に、大介役・竹内涼真の超絶爽やか野球部スマイルには不覚にもちょっとキュンキュンしてしまいましたよ。この人見覚えあると思ったら『仮面ライダードライブ』の主人公ですね。吹奏楽部の同期である水島役、朝ドラで土屋太凰とも共演した葉山奨之もいい感じです。あと吹奏楽部顧問の上野樹里がとても良かった。『セッション』のフレッチャー先生のような鬼指導だけど、無表情で繰り出す熱い台詞が素敵すぎます。『のだめカンタービレ』でのプレイヤーから指揮者に変わったというのはちょっと面白い。

冷静に観れば少し綺麗すぎとも思うし、己の高校時代を振り返ると眩しすぎとも思いますが(比べてはいけない)、一生懸命だからこその良さ、というものを余すことなく描いていると思います。吹奏楽部って意外と体育会系なんだな……

↓以下、ネタバレ含む。








三年連続同じ絵馬、はいいんですが、去年おととしの絵馬がそんなに簡単に見つかるのはどうなんだ?みたいなちょっと雑な点も色々あって、それらをもう少し丁寧に処理してくれてたらなあとは思います。でも恋愛話は前半で切り上げて、そのぶん周囲の人々の関係を描くというのは実に良いですね。大介が先輩から受け継ぐ甲子園への思い。全国への約束を果たせなかった春日部長の森先輩への「ごめん」。森先輩の離脱に部員たちが駆け付けるシーンは、それ自体より後ろで見ていたお母さんに泣けます。いきなり二年の時間が流れ、つばさが先輩になってるのは驚きましたが、そこからは上級生ならではのドラマも豊富。

特に水島ですよ。クラリネットの子に金管が責められたりつばさの個人レッスンをブチ上げられたりと、部長として部をまとめられず悩む水島。それに対する先生の「部長だけが部をまとめるわけではない」という返し方、「僕たちは可哀相じゃありません」という先生への信頼。彼が「辞めろ」とまで言ったつばさに「ありがとう」を言うに至る姿に彼の成長がしっかり見られてとても好ましい。水島がつばさと変に恋愛関係になったりしないのも良いです。文句ばかりのクラリネットの子には何かしら決着付けて欲しかったですけどね。上野樹里の先生はニコリともせずにオフにしたり大介を励ます演奏に行かせたりするのがシビれるし、ラストの写真でようやく歯を見せて笑うのが素敵。そしていつもつばさを支えてくれるひまりちゃんの笑顔は最高に癒しです。もう少し惹かれるショットがあればなーという気もしましたが、それでも円陣組んでの「一心不乱!」とか、大介とつばさの背丈が違いすぎて直角になってる抱擁などはインパクトあります。

土屋太凰のつばさはおとなしい性格と裏腹にとにかく情熱がほとばしってしまい、それでいてダメ出しされまくる、という繰り返しが半端じゃないんですよ。吹奏楽部の入部からして風船ふくらませるようになってから出直して来い、ですからね。僕ならそこで心が折れます。初心者なのに名門吹奏楽部に入部しようとするのも無謀だし、水島には「レベルが下がるから辞めてくれ」と全否定されるし、試合に負けた大介のためにマナー無視で一人演奏して先生にブチギレされるし、部活に来なくなった森先輩を連れ戻そうと家に毎日押しかけて罵倒されまくり、あげく「バカじゃないかと思ってた」とまで言われます。そもそも肝心の大介に中盤でいきなり告白するという予想外の大胆さを見せ、かつフラれるというのは驚きの展開。

しかしつばさは呆れるほどくじけません。必死で腹筋を鍛え、必死で練習し、必死の思いで先生に教えを乞う。努力が大事、という言葉だけでは説明がつかないほどの必死さ。正確にはくじけないわけではなく、精一杯自分を奮い立たせているのであることは教室で泣き出してしまうことからも分かります。それでも折れてしまわないのは、足元ばかり見ていた自分を変えたいという決意と、それを支える一つの約束によるわけですが、それ以上に感じられるのが「応援する」ことへのつばさの思いの強さです。森先輩が「応援するのは自分が頑張るのと同じくらい大変」と言うように、人を応援する、励ますというのは非常にパワーのいるもの。そのためには自分がくじけてるわけにはいかないのです。昔テレビで野球部を応援する吹奏楽部を見て感動したといいますが、それだけ当時足元ばかり見ていたつばさに勇気を与えるものだったのでしょう。そういえば過去の回想シーンが一度もなかったですね。それがつばさが常に前を向いているということの表れなのかもしれません。

最後はね、あそこまで引っ張ったらもうキスシーンしかないでしょう。むしろ「いけー!ブチュッといけー!ハイよーし!」みたいな気持ちで観れました。これが二人の出会った場所だというのがもうね、美しいね!もう許す!お前ら付き合ってよし!という寛大な心になれます。

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