2016
08.27

黙示録にはまだ早い。『X-MEN:アポカリプス』感想。

X-Men_Apocalypse
X-Men: Apocalypse / 2016年 アメリカ / 監督:ブライアン・シンガー

あらすじ
さらば毛髪。



太古の文明以前から神として世界を支配していた最初のミュータント、アポカリプスが数千年の眠りから目を覚ました。誤った方向に発展した人類の文明に秩序を与えようとするアポカリプスは、4人のミュータントを従えて世界の破壊を目論む。プロフェッサーX率いる若きX-MENたちはこれを阻止すべく立ち上がるが……。マーベルコミックを実写化した『X-MEN』シリーズの続編。監督は前作に続きブライアン・シンガー。

前作『X-MEN:フューチャー&パスト』(以下『DoFP』)でシリーズ全ての不整合を一気に是正し、感動的な着地を見せた『X-MEN』。本作は前作の過去パートの続編ということになります。あれから10年、ミュータントの存在が公になった80年代に、強大な力を持つ「最初のミュータント」、アポカリプスことエン・サバ・ヌールが復活。世界を掌握しようとしていることを知ったプロフェッサーXたちは、激しい戦いに身を投じることになります。物語は前作ありき、人物は次々に登場し、シリーズを追ってる前提の詰め込み方も感じられて、親切な作りではないですね。

が、その分シリーズを見てきた人には凄く濃密で目が離せないものになっています。お約束の20世紀FOXロゴのXだけ最後に光るところから、一気に紀元前に遡る冒頭、巨大なピラミッドでの謎めいた儀式で幾何学的な紋様を流れる黄金がニョキニョキ出てくるところ、そしてルネッサンスやら戦争やらの歴史の流れを示す長いOP映像あたりでなんかもうスゴくワクワクしちゃいましたよ?多すぎるキャラも的確な交通整理で混乱はなく、能力を活かした見せ場、能力ゆえの悲劇や葛藤も山盛り。まさに黙示録を思わせる世界の崩壊のなか、アポカリプスとその守護者であるフォー・ホースメンが並び立つ絵にみなぎるアメコミ感もたまりません。

ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ニコラス・ホルトといったおなじみの面子はもちろん続投。前作で痛快な活躍を見せたクイックシルバーのエヴァン・ピーターズは今回も魅せまくりだし、初期三部作で登場したミュータントたちも新キャストで復活したりしてます。そして絶対的な強さを持つアポカリプスには『スター・ウォーズ フォースの覚醒』『エクス・マキナ』のオスカー・アイザック。素顔は一瞬しか出ませんが、「世紀末覇王伝説!」みたいな存在感はラスボスとして文句なし。そういう意味では、コミックのビジュアルをリアルな方向にアレンジしてきた『X-MEN』シリーズとしては、今回は思いきってコミック寄りにしてるような気はしますね。サイロックの際どい衣装なんて感涙です。さらにはあの男まで出てくるというサービス満点ぶり。

『X-MEN ファースト・ジェネレーション』(以下『FC』)からあった時代感は薄いけど、過去の話であった新シリーズがここから現在のX-MENに繋がっていく新たな物語なのだと思えば熱いものがあるのですよ。最高です。

↓以下、ネタバレ含む。








■アポカリプス・アウェイクン

プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアはミュータントの教育機関「恵まれし子らの学園」を営み、ミスティークことレイブンは虐げられるミュータントの救出というゲリラ活動、マグニートーことエリック・レーンシャーは妻子と共にひっそりと暮らしています。前作であれだけの騒ぎを起こしたわりには地味な立ち上がり。特にエリックは「普通に生きようとした」と語るように、なぜか鉄工所で黙々と労働しています。ブラザーフッドはどうした?とか思うんですが、チャールズとエリック、レイブンの揺れ動く関係は前作までで描き切った感があり、この3人がまたああだこうだするのはさすがにマンネリにならざるを得ないし、これはしょうがないところでしょう。むしろあれから10年の間に、ファースト・ジェネレーションはそれぞれが地道に蓄積してきたものがあると言えます。チャールズは学園の復興を成し遂げ、大統領を救ったレイブンは英雄として語り継がれ、エリックはようやく人並みの幸せを手に入れる。ビーストことハンク・マッコイだけは相変わらずせっせとチャールズの世話をしたりレイブンにホの字だったりと何も変わってないですが。それでいいのかハンク。

そんな平和な世界にガツンと喝を入れるのがアポカリプスことエン・サバ・ヌール(以下「アポ様」)です。『DoFP』のエンドロール後映像では女性の姿だった気がしますが、強面の威圧感溢れるおっさんとして登場。千回も転生したとか言ってるからあれはその途中の姿だったんですかね?でも転生したら顔まで元と同じになってたような……それはさておき、転生する体がミュータントであればその能力も受け継ぐので、かなりの能力を手に入れているらしく、人をチリにしたり物質を再構成したりテレポート・ゲートを開いたりシールドを張ったりと、まあチートにもほどがある強さ。まさに「神」です。人を壁に埋めるのとか地味に怖い。必ず4人の従者、フォー・ホースメンを率いるというのがポリシーのようで、目覚めた後もとりあえず下僕探しから始めます。意外と寂しがり屋なのかもしれません。そこでたまたま見つけたのが強力なX-MENの一人ストームというのが都合よすぎですが、神だけに神懸った運の良さ。そこから芋ヅル式にサイロックやエンジェルもゲット!たまたま知ったマグニートーまでゲット!とポケモンのように手下を揃えたアポ様、行き当たりばったりのわりには良い手駒が揃ってご満悦です。

この強大な力を持ち、かつブレがないラスボスを投入することで、まだ差別を受けるミュータントたちがそれになびくか、あるいはこれに対抗するかという1作目で描かれた選択が再び問われることになります。そしてこれがX-MENが必要とされる状況がありうる、ということにも繋がっていきます。


■ファースト・ジェネレーション

アポ様の仲間になったらいろいろと特典があるよ!ということで、若き頃のパンクなストームはパワーを引き出され覚醒!『X-MEN3』にも登場したエンジェルは白い羽が傷付いたら終わりという儚さがありましたが(これは『FC』のエンジェルも同様)、アポ様により羽がメタル化、傷付かないどころか羽先をナイフのようにも飛ばせる堕天使へ、という親切なバージョンアップでもう安心。エリックには地球の中心は磁気であるという教えちゃいけないヤバいことを教えたうえに、「マグニートーと言えばこれでしょ?」と言わんばかりの自信で例のダサメットを手渡す。アポ様のアフターケアは万全です。皆に俺ジナル・デザインな衣装を手作りまでする念の入れよう。

サイロックは事前情報であの衣装を見てたのでてっきりお色気担当かと思いましたが、エロい感じの撮り方がほぼ皆無でしたね勿体ない(本音だだもれ)。どちらかというと女性アスリートという印象。サイ・ブレードで車真っ二つとかカッコいいし(ストーム潰されそうになってたけど)ソードをムチに変化させたときも女王様と言うよりは猛獣使いだったし(シバかれるのがビーストだし)。

というわけでレイブンの方がよっぽどエロいです。初登場時のセクシーなおみ足から胸の谷間、誰かと思いきやジェニロー!フォーーー(歓声)!レイブンはミュータントを救う行動を続けていますが、ちょっと目的を見失ってる感がなくもないです。エリックのことをきっかけに帰ってくるのもどこかあっさりという感じで、長年の単独行動に少し疲れが見えなくもないですね。また、レイブンは今回本来の姿を自らはあまり晒しません。身を隠す意図もあるでしょうが、前作による英雄視が本意でないというのもあるでしょう。そんななかビーストたちに乞われ、X-MENを率いてチャールズ救出に向かうときには本来の姿に戻ります。それは『FC』で「そのままの姿を恥じることはない」と言ってくれたエリックをも救う意志の表れでもあるのでしょう。

あと『FC』組としてはモイラが再登場します。最初に顔を隠してエジプトに現れたときのべっぴんさに、演じるローズ・バーンの瞳の美しさを再認識しますねえ。モイラはチャールズに記憶を消されたため初対面としてチャールズらに接するため、過去を話せないチャールズにはやきもきします。

そのチャールズは、遂に頭髪とサヨナラすることに!演じるマカヴォイは『FC』撮影開始時に気合い入れて髪を剃ってきたらハゲシーンがなくて結局ヅラを被ったそうですが(爆笑)、ようやくその時の熱意が現実に。しかしこれがアポ様の転生という脳への負担を必死で耐えたため、という壮絶なハゲ方であり(決してアポ様のハゲをコピーしたわけではない、多分)、チャールズが持つ能力の強さと、それ故に背負うものの大きさを痛感させられます。また、チャールズは『FC』の時代では受け入れられなかったために奪ったモイラの記憶を返しますが、記憶を戻されたときのモイラの涙に、長い時間の経過と失っていた関係の尊さが甦るシーンはくるものがあります。

今回はチャールズとエリックのイチャイチャは抑えめですが、若い頃は色々あったけどそれもひっくるめてもう分かってるから、みたいな雰囲気。エリックがなぜ普通に暮らそうと思ったのかが描かれないため若干の唐突感はあるものの、妻子を失った悲しみで投げやりになりながら迷った末に裏切りを撤回するところに、初期3作のマグニートーとは異なる時間軸なんだな、と感慨深くなります。鉄骨で作る巨大な「X」などは激アツ。それでもラストでチャールズが去り行くエリックに「Good-bye, old friend」と言うのに対し、エリックが「Good luck, Professor」と返すのが、二人が同じ道を歩めない悲しさを感じさせてせつないです。


■ヤング・ジェネレーション

『FC』『DoFP』で登場したキャラと初期3部作でメインを張っていた面子が、若い世代として新たに活躍するのがこれまた胸アツ。前作の好評を受けてか出番倍増のクイックシルバー、大救出劇のやりすぎ感は若干浮いてはいるものの、ドリンク飲んだりムーンウォークしたり金魚すくいしたりと、誰も見てないのにちょいちょいおふざけしながらも皆を救っていくのは控えめに言っても最高。なぜか10年もひきこもりで自宅パックマンで遊んでるという不可解なところはありますが、「早く動けるのにいつも間に合わない」と言う台詞に何かしらの喪失を経験したのかもしれません。しかしまさかアポ様に最初に食らわすとは。やりおる。

クイックシルバーの救出劇で唯一救えなかったのがアレックス。炎の間近に人影が瞬間映って、あれがそうだったんですね。最初はスコットの兄として登場するので「どこかで見たような……」と気付くのが遅れましたが『FC』のハボックです(胸ビームでようやく分かったすまぬハボック)。弟のスコットはいかにもアメリカのヤンキーな奴に絡まれながら目ビーム覚醒しますが、いきなり兄を失うという悲劇がツラい。『ダーク・プレイス』の演技も良かったタイ・シェリダンがほとんど目が映らない役ながら頑張ってます。チャールズの思い出の木を真っ二つにしますが、今後X-MENの中核を担うサイクロップスとなるから許してあげよう教授。

ちょっと意表を突かれたのは『X-MEN2』にも登場したナイトクローラーで、写真とる時は超笑顔、見た目は悪魔なのに敬虔なクリスチャン、私服はマイケル・ジャクソンのスリラージャケットと、予想外の憎めないヤツに。テレポーター能力も、トリッキーな映像もあって非常に頼もしい。このナイトクローラーとエンジェルを出会いで対決させた後ラストでまた戦わせるという因縁もあったりしますが、二人は旧作では善悪が逆だったというのが面白い。そしてジーン・グレイは『ゲーム・オブ・スローンズ』のソフィー・ターナー。最初はちょい地味かなーと思いましたが、存在を意識させないスニーキング術やチャールズの精神世界に入り込む力など、そのポテンシャルを見せつけてくれる姿に徐々に良く思えてきました。あと終盤にジーンとエリックで学園を建て直すの超便利だな。

そんなヤングたちが偶然助け出すのが、待ってましたのローガンことウルヴァリン。既にウェポンXとしてアダマンチウム化されての登場ということで『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』が思い出されます。しかも殺しまくりの野獣っぷり。とは言えジーンとローガンの邂逅は『X-MEN3』のこともあり、この先の二人を予感させますね。この時間軸で『DoFP』のラストまで至ると分かっていても、その間ローガンにはまだまだ苦難が待ち受けていそう。ストライカーとの因縁も持ち越されるし。あ、ストライカー役のジョシュ・へルマンが『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のスリットだと今更ながら気付きました。あとスタン・リー御大が夫妻で登場&超アップというのが嬉しいところ。


■X-MEN・ライジング

ああ、書かないつもりだったキャラごとのコメントを長々と書いてしまった……それだけ語りたくなるような各人のドラマやちょっとした描写での性格付けができているということなんですよ。

ブライアン・シンガーが監督するのは『X-MEN1』『X-MEN2』『DoFP』に続き4作目であり、このシリーズにこだわる情熱はやはり並々ならぬものを感じます。自身のバイセクシャルという立場を重ねるかのように虐げられるマイノリティを描き、それでも苦しみから逃げず正しくあろうとする面々を撮り続ける。それだけに本来の姿を否定するかのような話だった『X-MEN3』はいまだに許せないようで、『スター・ウォーズ ジェダイの帰還』をダシにしてまで3作目にダメ出ししてます。いや『ジェダイの帰還』は最高ですけどねヤムヤム!ちなみに本作も新三部作として観れば3作目ですが、実際は6作目だし、そもそもエンドロール後のアレからしてこれで完結じゃないので問題なし!ということにしましょう。

話を戻すと、だからマイノリティを集めて自分の意に沿わぬ世界など壊してしまえ、というアポカリプスはやはり敵でしかないのです。正直アポカリプスは何をしたかったのかがよく分からないのですが、弱い者は排除するというある意味差別的な偏見ある考えの象徴でもあるのでしょう。その根深い傲慢さが強さとして表れているとも言えます。そんなアポ様をラストバトルではフルボッコ。地球規模で磁力を操るエリックの攻撃、壁に埋められてもめげずにオプティック・ブラストを放つスコット、リスペクトするミスティークの危機に電撃で加勢するストーム、フェニックスとしての片鱗を見せるジーン。文字通り力を合わせてこの独断と偏見と傲慢の象徴を「そんな思想は認めない」とばかりに打ち倒す。だからアポ様の最期には「これが私の運命か」とまで言わせるんですね。

しかしそれでめでたしにはしていません。ラストに「もう子供でも生徒でもない」としてメンバーに『DoFP』で出たセンチネルとの戦闘訓練をさせるチャールズの顔には、厳しい表情が浮かんでいます。強行手段をとる者には対抗するべき力がいると言わんばかりに。それは人を信じることを諦めなかったチャールズが、アポ様との闘いで覗いた闇に信念を変えたようにさえ思えます。

それでもチャールズはエリックに「希望は持っている」と語り、「You're X-MEN!」と高らかに宣言するレイブンには高潔なる意志を感じることができます。アベンジャーズで未だハッキリ言っていない「アッセンブル」をやってくれた感もあって熱いし、サイクロップスもあのバイザーになってるし、エンドロール後には「ウェポンX」「エセックス社」の名前も見られるし、ここからまた新たなX-MENが始まることを期待せずにいられません。

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