2016
08.21

力に屈しない密林の掟。『ジャングル・ブック』感想。

Jungle_book
The Jungle Book / 2016年 アメリカ / 監督:ジョン・ファヴロー

あらすじ
人間は敵だ!



赤ん坊の頃にジャングルに取り残され、黒豹や狼に育てられた人間の子供、モーグリ。ジャングルで兄弟狼たちと平和に暮らしていたモーグリだったが、ある日人間を憎悪する虎、シア・カーンがやってきたことでジャングルは緊張状態に……。ディズニーアニメにもなったルドヤード・キプリングの同名小説を、『アイアンマン』のジョン・ファヴローが実写映画化。

これは夏休みに相応しい、大自然での冒険活劇。ジャングルを舞台に人間の少年モーグリと、彼を取り巻く動物たちとの生活、事件、戦いなどが描かれます。スリルとコミカルが違和感なく同居し、喜びと悲しみが並行して語られ、勇気と愛情が少年を成長させていく。他者を貶める者とは戦い、存在が異質な者は受け入れるという優しい物語でもあります。動物も背景も「少年以外全部CG」という触れ込みですが、そう言わないと普通に実写と思って観てしまいそうなほど映像はリアル。デフォルメほぼなしの動物たちが喋ることの自然さもさることながら、そこに実写の少年がいても全く違和感がないというのがむしろ凄いです。

モーグリ役のニール・セディ君は眼力がイイですねえ。全編赤パン一丁で奮闘する姿に素直に応援したくなります。モーグリ以外は動物ばかりというのもありますが、ちゃんと動物たちが魅力的に見えるように作られてますね。熊のバルーは声がビル・マーレイの時点でコミカル担当ですが、ハチミツ大好きなあたりがディズニーっぽくてキュートです。激シブな黒豹バギーラはベン・キングズレー、激コワな虎のシア・カーンはイドリス・エルバ、母狼ラクシャはルピタ・ニョンゴ、デカ猿キング・ルーイはクリストファー・ウォーケン、大蛇役には『シェフ ~三ツ星フードトラック始めました~』でファヴロー監督とも共演したスカーレット・ヨハンソンと、声優もやたら豪華。

木の枝を伝って歩くワクワクや、自然の癒しも恐ろしさも含むジャングルの美しさ、動物たちの毛並みの柔らかさなど、細かい作り込みもさることながら、少年が受ける友愛や憎悪、目論みといった種を越えたやり取りも描かれて、その辺りのまとまりの良さはさすがジョン・ファヴロー。楽しいです。

↓以下、ネタバレ含む。








とにかく映像がリアル、というのは先に述べましたが、表現全てがリアリティを重視しているわけではないんですね。動物たちの動き自体は本物と区別がつきませんが、そもそも喋ること自体が本来は不自然なので、表情の付け方や会話時の口の動きなどに微妙な調整を施しているのが感じられます。また、舞台となるジャングル、原作はインドをモデルにしているそうで、ジャングルにライオンがいない理由としては納得ですが、どことなくアジアの生態系だけではないような気がします。詳しくないので正確には分かりませんが、国名もどこの大陸かすらも明示されないので、何とも無国籍な印象。要するに学術的な正確性はあえてボカすことで、しっかりファンタジーとして描いてるんですね。だから黒豹や狼といった肉食獣が人間を育てるということも起こり得る。つまり動物としての本能云々といったものではなく、種の違いによる葛藤や軋轢、そこに見る感情のぶつかり合いといったものを主軸にしていると言えます。

動物世界にいる人間の異質さ、というものにそれほど重点が置かれてないのもそのためでしょう。シア・カーンがモーグリを付け狙うのはモーグリの父親に片目を奪われた恨みから人間という種にいちゃもんを付けているのであり、バギーラがモーグリを人間の世界に戻そうとするのも、人の世界に返すというよりはそこが安全な場所だからというのが理由です。また「赤い花」と呼ばれる火でジャングルを燃やしてしまっても、そこで動物たちがモーグリを責めたり恐れたりはしません。モーグリのホームはあくまでジャングルであり、最後に狼ではなく人間であると自覚するに至るも、動物たちとの生活を断ち切るわけではなく、元の通り家族として暮らしていくことになる。ジャングルの王者として猿に育てられながら人間社会に戻る『ターザン:REBORN』とは本質的に異なります。掟を復唱しこれを守るなら群れに受け入れられる。逆にシア・カーンのように独善的、暴力的な存在は排除される。つまり至極まともな社会構造の話であり、人間社会に当てはめても通じるような真面目な話だったりします。

とは言え、そんなこと気にせず動物ファンタジーとして観れば問題なく楽しめますけどね。バルーの熊らしからぬのんびり気質や陽気な歌にほんわかするし(実際はナマケグマというハチミツを食べる呑気な熊もいるらしいですが)、キング・ルーイなんてあの威圧感持ったまま歌い出したと思ったらキングコングなアクションまで見せてくれるし。キング・ルーイが埋もれたあとの猿たちの発掘作業が愉快だとか、狼こどものグレイが可愛いすぎとか、象が賢者すぎてひれ伏さざるを得ないとか、リアル映像による非リアルも面白かったりします。頭に水滴の落ちたカエルが片手で頭を撫でるとか好きですねえ。なかには喋らない動物もいるのがちょっと気になりましたが、種が違えば言語が異なる、くらいのことなのかも。

ファンタジックな楽しさはエンドロールの飛び出す絵本や切り絵に至るまで徹底しており、そのこだわりが嬉しいところ。そういえば冒頭のディズニーロゴもいつもの立体ではなく絵本的な平面で、「これから楽しい物語を始めるよー」という雰囲気が出ています。寓意を込めながらも、子供への寝物語にもなるし、ビッグバジェットとしての風格もある。良くできてます。

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