2016
08.17

変人たちと霊体の宴。『ゴーストバスターズ(2016)』感想。

ghostbusters2016
Ghostbusters / 2016年 アメリカ / 監督:ポール・フェイグ

あらすじ
I'm Not Afraid.



ニューヨークの大学で素粒子物理学を研究するエリン・ギルバートは、過去の心霊現象の研究がバレて非科学的だと大学を追い出されてしまう。エリンはかつての共同研究者であるアビー、その同僚ホルツマンと共に、幽霊退治会社「ゴーストバスターズ」を立ち上げるが……。1984年に大ヒットした『ゴーストバスターズ』の新たな続編。

1作目から5年後の2作目を挟み、そこから27年ぶりの新作です。これが前作の続編でも単なるリメイクでもない、全く新たな物語。かつてゴースト研究に熱中していた科学者のエリンは、友人アビー、その同僚ホルツマンと共にゴースト退治の会社を作ることになります。科学者である3名と労働者階級から転職してくる1名、受付1名というチーム構成は変わらないものの、性別が逆転してメインが女性ばかりというのがオリジナルとは異なるところ。そのせいかアメリカでは公開時に性差別だ云々と騒ぎが起こったらしいですが、的はずれもいいところです。過去作へのオマージュに満ちながらも現代的なエッセンスを取り込み、新たな要素もふんだんに使ってブラッシュアップ。メンバーが皆女性というところに違和感は全く感じないし、世間の理解を得られない変人たちがそれでも街を救おうとする姿、その性差を越えて熱くなる展開が最高に面白いです。

エリン役のクリステン・ウィグは『オデッセイ』とはうって変わった本来のコメディエンヌぶりを発揮、顔からスライム浴びまくってくれるし、アビー役のメリッサ・マッカーシーの我が道を行く陽気なキャラも愉快。そう言えばメリッサは『ヴィンセントが教えてくれたこと』でオリジナル版の主演であるビル・マーレイと共演してますね。パティ役のレスリー・ジョーンズのタフさも頼もしい。そしてホルツマン役のケイト・マッキノンが、明晰な頭脳と相反する風貌や言動がロックすぎてイッちゃってる感じが最高!おっと、忘れちゃいけない受付男子ケヴィン役のクリス・ヘムズワース、『アベンジャーズ』で脳筋だとか言われていたのがちゃんちゃら可笑しいほどのアホの子っぷりに、ムカつくけど放っておけない感が爆発。とにかく全員が魅力的。

会話劇と派手なシーンのバランスも良いし、コメディ映画として全編通してニヤニヤしっぱなしだし、オリジナル版のユルい感じを引き継ぎつつスケールアップもこなすという、実に上手い作劇。ちょっとだけ華やかさが増したツナギ姿も素敵です。もう幽霊が出てきても安心だ!電話しよう!(ただし受け付けてもらえるかは微妙)

↓以下、ネタバレ含む。








■変人たち

ホルツマン、たまらんですね!専門用語バリバリで理解不能な装置説明、ボヤが起きても躍りながら消化など、とにかくマイペース。かと思えば終盤の二丁プロトンガンを構えるときのカッコよさね!目を離すと開発してる新たなガジェットが秘密兵器感あっていいし、いちいちビルの裏手で試して皆が酷い目にあうという重ね方にも笑います。アビーとやる独自のハイタッチは覚えたいところですが、難しいなアレ。「ピシガシグッグッ」という擬音が頭に浮かびます。

アビーは即行動派、そしてよく喋るという感じですね。エリンとの共著をAmazonで売り出したりする身勝手さがあったり始終文句を言ってたりもしつつ、誰でもいつの間にか受け入れてしまうような懐の深さがあります。ローワンを止めるときに他にも楽しいことがある、と言ってなかなか例を上げられないことからも研究一筋だったのでしょう。ローワンにとりつかれたときの笑顔で殺しにくるのが怖い。ワンタンに文句を言うくだりもまた重ねてきますが、これが最後に効いてます。あとアビーの大学の学長のバカすぎるクビ宣告がしつこくて最高。

エリンは「大講堂!」の尻振りダンスからもう好き。ちょっとだけエロ担当と言うのがそそられます。でも服装がそこはかとなくダサいというね。表面では常識人であろうとしながら、油断すると本性が出てしまうのが可愛い。エリンは街の危機をいち早く察知してなんとか止めようとするなど基本的にイイ人で、それだけに損な役回りもあります。市長への直談判で引きずられていく姿などには哀愁さえも感じるものの、ホルツマンに渡されたナイフが風船お化けに効くという伏線でナイスに登場する美味しい場面も。そう言えば市長がアンディ・ガルシアなのは驚きましたよ。

パティは読書クラブだと思ってバスターズに来たと言いますが、どう勘違いしたらそうなるんだろうか……メンバー皆がそうですが、特にパティは成り行き感が強いです。地下鉄ゴーストを見てるのにビビらないのか?と思ったら、案の定マネキンゴーストにビビったり悪魔ゴーストに乗っかられたりと散々な目に。それでも辞めようとはしないあたり、彼女もまた変わり者ではあります。ニューヨークは詳しいと自負していることからも街への愛着が行動させているというところでしょうかね。あ、ロックフェスでオジー・オズボーンが出てくるの最高すぎなんですけど!

ケヴィンはね、バカですね(身もふたもない)。あんなに破壊力のあるバカをウィル・フェレルやベン・スティラーではなくクリヘムがやってるというのがスゴいです。うるさいときに耳ではなく目を押さえるって並のバカではありません。一緒に仕事はしたくないタイプですが、観賞用としては確かにいいかも。憑依されたときに「いい筋肉だ」だの「腹が割れてる」だのをクリヘムが自分で言うのが可笑しいです。何のために半裸写真を撮ってるのか謎なところがミステリアス……いややはりバカだな。エンドロールはクリヘム・フィーバーでさらに半裸写真サービスだし、警官隊のサタデーナイトフィーバー・ポーズがここで踊りまくるためだったというね。何だその伏線。最高か。


■先達たち

オリジナル版へ敬意を表したオマージュの数々がオールドファンには歓喜です。まずオープニングがレイ・パーカーJr.のオリジナル主題歌。最初に事務所を構えようとするのが「あの」建物。バスターズマークが地下鉄の落書きから誕生したという粋すぎるエピソード。エリンが犠牲となるスライムは『2』を思い出します。そもそも基本的な枠組みが同じなので、キャラクターもエリン=ベンクマン、アビー=レイ、ホルツマン=スペングラー、パティ=ウィンストンと対応するようになってますが、それでいて単純に性格や役回りが同じとはしていないところが非常に好感が持てます。

そして嬉しすぎるオリジナル・メンバーのカメオ出演!バスターズを批判する科学の権威がベンクマンことビル・マーレイ。ゴーストが出ても動じないタクシー運転手にレイことダン・エイクロイド。パティの叔父にウィンストンことアーニー・ハドソン。そしてホルツマンの先輩にディナことシガニー・ウィーバーですよ!シガニー・ウィーバーは色んな映画でサプライズ出演してますが、これは正しいカメオ出演ですね。スペングラーこと故ハロルド・ライミスも、大学の廊下に胸像として登場。最後の「ハロルド・ライミスに捧ぐ」の献辞には泣くしかないです。リック・モラニスやアニー・ポッツがいなかったのは残念(出てました?)。

エンドロール後に「ズール」という声を聞く、というのはやりすぎ感もありますが、そこに繋げるのかい!と思わず笑います。


■幽霊退治!

彼らは揃いも揃って変人ばかりですが、基本的にめげません。ちょっと落ち込むことはあっても塞ぎ込んだりはしない、という陽性なところが魅力。これとは対照的に、次々とゴースト騒ぎを起こすローワンは世間を憂いてブチ壊そうとする陰性の人物であるのが分かりやすい。自ら霊となってニューヨークを大混乱に陥れるという命を捨ててまでの行動には、狂気と怨念が感じられます。ローワンについてはもう少し掘り下げてもよかった気もしますが、やりすぎると重くなるからこのくらいの誇大妄想狂である方がバランス的にはちょうどいいですかね。

本作のバスターズはオリジナルよりも世間の認知度が低いです。電話はかかってこないし(かかってきてもケヴィンが切ってしまうけど)ゴースト捕獲も一度しかしてないんですよね。職場を追われた三人がめげずに起こした会社ながら順風満帆とはいかないし、市長に活動自粛を求められたり、逮捕劇を強要されたりもする。そもそも最後のバトルも乞われて退治するわけではないんですよ。「Who you gonna call」の声もなく、皆の期待を背負って送り出されるというシーンもないので、ちょっと寂しくなります。それでもゴーストの群れを前にしてもひるまずに立ち向かうバスターズ。そこには「なぜ自分たちが」という躊躇は微塵もありません。戦う理由は「うちの受付係を助け出す」であっても、専門知識を持つ自分たちこそがゴースト退治をすべきだという自負がなんとなく感じられます。なんとなく。まあ成り行きな感じもしますが。

でも成り行きだっていいじゃない!それでラストバトルの面白さが減じるわけではないのです。プロトンビームは本来ゴーストを捕獲するものなので、これを絡めてブン投げて消滅させるという無茶苦茶な戦い方はむしろ潔いし、捕獲ビームだけでなく、スライサーや手榴弾、近接武器と、出てきた武器は全部使うというのが『007』っぽくて良いですね。ラストに総登場するゴーストの種類も豊富で楽しいです。序盤のシリアルキラー女霊、美しさで惑わしてゲロを吐くという狡猾さ!風船お化けで再登場したマシュマロマンの、ベタベタしない代わりに変顔にさせられるという凶悪さ!クソ生意気に彼女持ちとなったアグリー・リトル・スパッドの、調子こいたアメリカの若者っぽさ(殺人鬼に真っ先に殺されるタイプ)!そして、まさかのバスターズ・マークがラスボスという意表を突いた展開、これは上手い。そりゃ燃えますよ。そう言えば映画『ゴースト』もネタにされてましたね。そこからのパトリック・スウェイジ繋がりで『ハートブルー』とか、ホラー繋がりで『シャイニング』の双子とか、『ジョーズ』の市長とかね、人食いザメもまあバケモノという意味ではゴーストに近いですかね。陰で活躍するから「バットマンみたい」とか、マイティ・ソーであるクリヘムに「クラーク・ケントか?」と言ったり、映画ネタに笑えます。

市長とその秘書には何かしらやり返す展開が欲しかったとか、退治しても詐欺師扱いのままで凱旋シーンがあるわけでもないとか、いまいちスッキリはしない歯切れの悪さはあります。ただそこは、役所の現実的な対応の仕方や、ゴースト映像をネットにアップして拡散などの現代的な側面と同様、虚実入り乱れる複雑化した情報社会の現代では、皆がみな諸手を挙げて応援するようなヒーローは生まれにくい、ということなのかもしれません。それでも最後のニーヨークの明かりに「見てる人は見てる」と分からせてじんわりさせる。怒涛の会話ギャグや軽い下ネタなどがあっても、こういうところがスマートなのがまたイイ。

かつてオバケ女と呼ばれていたエリンの、唯一の味方だったアビー。そのアビーが霊界に引き込まれる危機に、躊躇なく飛び込むエリン。二人のエピソードを聞いた上で「みんなオバケ女だ」と言うパティ。女の友情をベタベタしすぎない程度に入れ込むのも絶妙のバランス。そんなバランスを崩しかねない感動スピーチをかますのが、最もクールかと思われたホルツマンであるというのが(笑うところだとは思うけど)却って響いてしまうのが上手い。最後にエリンとアビーが白髪になる意味がよく分からなかったんですが(過去の諍いを白紙に戻そうってこと?)、ともかく「あの」建物にも引っ越せたし、ケヴィンも電話の受け答えができるようになったし、これからはゴーストが出たら電話できますよ!

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