2016
08.13

サル大暴れ、坊主ツンデレ。『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』感想。

monkey_king2
西遊記之孫悟空三打白骨精 The Monkey King 2 / 2016年 中国・香港 / 監督:ソイ・チェン

あらすじ
ゴーゴー、ウエスト!



天竺へ取経を目指す僧の三蔵が獣に襲われた時に逃げ込んだ洞窟、それは天界の暴れ者・孫悟空が五百年にわたり閉じ込められていた五行山だった。三蔵法師によって自由の身となった悟空は頭に金の輪をはめられ、三蔵の旅を護衛する役目を果たすことになる。しかし三蔵の命を狙う白骨夫人により、一行は大変な危機に陥ることに……。『モンキー・マジック 孫悟空誕生』に続く「西遊記」シリーズ第二弾。

前作のドニー・イェン主演『モンキー・マジック 孫悟空誕生』は実は観てないんですが、全然大丈夫でした。と言うのも、前作は孫悟空が五行山に閉じ込められるまでが描かれてるらしく、本作では三蔵が悟空を助けるというおなじみのシーンから物語が始まるからです。もちろん猪八戒や沙悟浄が仲間になるくだりもちゃんとあるし(原作とは違いますが)、しかも主演が交代してるので問題なし。要するに初っ端から「これぞ王道の西遊記」というのがガンガンくるわけです。そしてこれがド派手エフェクトの人智を越えたアクションの連続。襲い来る幻獣、跋扈する魑魅魍魎といった人外からお師匠様を守るため、悟空たちがキレのある香港アクション+妖怪パワーで大暴れ。痛快なことこの上なしです。

孫悟空は思った以上に猿です。顔が毛だらけでよく分からない&猿演技が上手すぎて、このエテ公がアーロン・クォックだというのがにわかには信じられないほど。その無頼さと強さ、最高です。三蔵法師は『ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪』『ドラゴン・ブレイド』のウィリアム・フォンで、甘ちゃんな聖人感がとても良い上に、悟空に対するツンデレっぷりがハンパないです。悟空との師弟愛にはうっかり涙ですよ。そして女性たちが「色魔よー」と逃げ惑う後から颯爽と現れる猪八戒!わりと素直に言うことを聞く青きハゲマッチョ沙悟浄!あと、馬!という馴染み深い面子が旅をする、それだけで嬉しいところ。そんな一行に立ちはだかる強敵・白骨夫人は、なんとコン・リーですよ。その妖艶な美しさと圧倒的存在感だけでもクラクラするのに、超絶な妖力がこれまた凄い。観音菩薩がケリー・チャンというのも萌えます。

例えば『西遊記 はじまりのはじまり』はかなりチャウ・シンチー色が濃厚な異色作でしたが(これはこれで好き)、こちらは良く知る「西遊記」のイメージとそれほど変わらず観れます。だけでなく、古代中国SFファンタジーを濃いキャラと濃いアクションで彩り、CGも惜しみなく使って見事な娯楽作に仕上げています。クライマックスなんて何かどこかで見たようなシーンもあったりしますが、それも込みでアガりすぎてちょっと笑っちゃうほど。くどさもあるけど楽しい、これぞ正統なる香港伝奇活劇!

↓以下、ネタバレ含む。








序盤から巨大な白虎vs孫悟空という、宙に吹っ飛んだ岩石を渡り歩きながらの空中バトル。次いで突然現れた竜との規格外バトルと、のっけから悟空大暴れ(ドラゴンではなく竜、というのがイイ)。この竜が三蔵の騎乗する馬となる玉竜なんですね。そしてさすが斉天大聖・孫悟空という無双っぷりと猿っぷりをいかんなく発揮。宙を舞い勝手に敵にブチ当たる如意棒なんて『マイティ・ソー』のムジョルニアかって感じです。筋斗雲を呼んでも雲的なものが見えませんが、筋斗雲は空を飛ぶ仙術という解釈なんですかね。悟空が常に浮いて移動するのもそのためかも。

猪八戒や沙悟浄との出会いは本来はそれぞれのエピソードがあるはずですが、そこは二人まとめてサラッと終わらせてます。猪八戒の勘違いしたイケメン気取りが実に面白いし、沙悟浄のわりと素直な性格も可愛い……ヒゲマッチョですが。コメディリリーフの感が強いですが、イノブタ化した猪八戒の破壊力や、砂攻撃を食らわす沙悟浄の妖力もかなりのもの。ちなみに沙悟浄が水ではなく砂を操るのは、そもそも川のような流砂で人を襲う妖怪だからであって、日本の河童と違いこちらが正しい姿なんですね。三蔵は天然ボケが入った聖人で、良い人なんだけど頑固。悟空の倒したのが妖怪だというのを信じず、遂には破門したりもします。それでいて頭の輪っかである緊箍児(きんこじ)で悟空を痛めつけた後に仲直りしようとしたりと、何と言うかもう「守ってあげたい感」がビンビンくるわけですよ。観音菩薩の指示で三蔵を守る役に就いた悟空が、徐々に三蔵に惹かれていくのも分かるというものです(BLというほどではない、はず)。妖怪だと言い張る悟空をこらしめる三蔵、というのを二度も繰り返すのは正直ちょっとくどいですが、それでもラストの三蔵と悟空のやり取りに見る信頼関係には泣けます。

敵である白骨夫人が魅力的なのが良いんですよ。何をしでかすか読めないような静かな狂気、そこはかとないエロティックさ、霧のように消えたり現れたりするミステリアスさと、わりと序盤から出てくるのにラスボス感が揺るがない。と言うかコン・リーは特殊メイクのババア姿まで披露しててスゴいな。白骨夫人の眷属である三女性、ヘビ女、コウモリ女、ヤマアラシ女もインパクトがあって、特にヘビ女の大蛇からベロッと出てくるビジュアルはヤバい。そんなヤバい妖怪らと悟空たちが見せる壮絶なクライマックスはさらなるヤバさの釣瓶打ちです。骸骨兵士が地面からわらわら湧いて来たり(どこかで観たような……)、巨大化する白骨夫人なんて下半身なしでグネグネ動く造形がエグくて最高です。三蔵は巨大骸骨に取り込まれて大ピンチ(『AKIRA』みたいですが)、そこで颯爽と登場する孫悟空が、飛んで来る鎧を次々身に纏うのが激アツ(完全に『アイアンマン3』ですが)。互いの背中を預けて骸骨兵士軍団を蹴散らしていく猪八戒と沙悟浄、仕上げに一気に蹴散らす悟空、その後パキッと割れてからの大人数の分身の術(『NARUTO』みたいですが)、と見せ場満載(ホメてます)。このクライマックスにスケール感がしっかり出てるのが素晴らしい。

白骨夫人はかつて人間の頃に虐待を受けて憤死、人間への恨みを持って妖魔化したといういきさつがあるわけですが、そこに至るまでに国王が妖怪の名を騙って血を吸うという非道で「酷いのは妖怪だけではない」というのを描くため、三蔵が自身を犠牲にしてでも救いたいという無私無欲が高潔さを持って感じられるし、コン・リーの深みが増す表現力とも相まって、ドラマに取って付けた感がないのも良いですね。ラストで石となった三蔵を背に天竺への旅を目指す三人が明るく、特に悟空が一皮むけたような表情を見せるのも爽やか。石化した三蔵を落としたときにはヒヤヒヤしましたが(笑ったけど)、まだまだ続く一行の旅、ぜひ続編も作って欲しいところです。

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