2016
08.11

内なる野生と漂う気品。『ターザン:REBORN』感想。

tarzan_reborn
The Legend of Tarzan / 2016年 アメリカ / 監督:デヴィッド・イェーツ

あらすじ
シン・ゴリラ。



かつてアフリカのコンゴで動物に育てられた男、ターザン。今は本来の故郷イギリスに戻り貴族ジョン・クレイトン3世として実業家となっていたが、政府のコンゴ視察の依頼を受けアフリカへと向かうことに。しかしそこにはある陰謀が隠されていた。エドガー・ライス・バローズの古典小説「ターザン」シリーズを原作に描くアクション・アドベンチャー。監督は『ハリー・ポッター』シリーズのデヴィッド・イェーツ。

ターザンと言えば雄叫び上げながらジャングルを飛び回る野性児、くらいの認識しかなかったんですが、元は10巻もあるSF冒険活劇なんですね。『ジャングルの王者ターちゃん』とか『Dr.スランプ』のパーザンくらいしか知らなかったのでターザンさんには何か申し訳ないですが、それはさておき。赤ん坊の頃からジャングルのゴリラに育てられ「ジャングルの王者」と言われた伝説の男ターザン。本作では文明社会に戻り実業家として生活しているターザンことジョン・クレイトン3世が、コンゴの奴隷使役を調査するために再びジャングルに戻るところから始まります。怪しい行動をするレオン・ロムという男を追うことになり、アフリカの多くの部族やジャングルの動物たちをも巻き込みながら、なんだかんだで大暴れすることになるんですね。そこには「かつての英雄が故郷で再び立ちあがる」という構図があって、これが熱い。

ターザンはジャングルの王者と言いながら意外とボコられちゃうのがちょっとアレですが、ツラそうな顔でキメ立ちするターザン役のアレクサンダー・スカルスガルドがデカくてマッチョで絵になります。妻のジェーン役はマーゴット・ロビーで、野性味と優雅さが同居するお嬢様役は言うことなし。レオン・ロム役のクリストフ・ヴァルツはいかにもな役回りではありますが、これはしょうがないですかね。そして何と言ってもサミュエル・L・ジャクソンですよ。時代的には南北戦争後のあたりなので『ヘイトフル・エイト』での役と丸かぶりなんですが、全然違うキャラです。可愛すぎます。あとムボンガ族長役は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のコラスことジャイモン・フンスーなのもポイント。

ジャングルの動物たちが結構怖いってのが良くてですね。特にカバがワニより怖いというのは予想外でした。あとゴリラは並外れて怖いです。アクションがちょっと弱いとか、回想シーンの挿入がタルいとかはありますが、概ね面白かったです。クライマックスは燃えますよ。

↓以下、ネタバレ含む。








サミュエルが最高すぎます。南北戦争では「歩く火薬庫」と呼ばれたジョージ・ワシントン・ウィリアムズ(名前が仰々しい)は、序盤で捕まったターザンを取り戻すときの二丁拳銃のカッコよさ、兵士の耳たぶ吹っ飛ばす銃の腕前と実にデキる男なのに、無謀にも崖から飛び降りるターザンたちの後に続いたり、ターザンに背負われて飛びながら悲鳴を上げちゃったり、「まだ走るんかい」って顔で付いていったりと、なんかどんどん可愛くなってきます。終盤ではかなり離れてる船の爆破にビビったりするし。ハグを求める人懐っこさや、子象にも好かれる人柄など、まさかサミュエルの可愛さをここまで引き出してくるとは思いませんでしたよ。ターザンが終始小難しい顔をして言葉少なく駆け出してしまうので、対照的によく喋りよく文句を言うウィリアムズとのバディ感が徐々に出てくるのが良いです。マーゴット・ロビーのジェーンも、川に飛び込んで仲間を助けるアクティブさや、ヴァルツのレオン・ロムと食事中に十字架を盗ると見せかけてナイフを盗っていた、というのが「やりおる」と思わせるし、そのナイフ奪取を見破るロムもまた「やりおる」って感じですね。ロムはその食事の場でジェーンを退席させた後フォークをナイフに揃えて置くのも神経質さが伺えてヴァルツっぽいです。

それらに引き換え、ターザンは動きや佇まいといったビジュアル面での見せ方が多く、内面描写は抑え気味なので、ちょっとばかり地味ではあります。列車を奪うときや部族に囲まれたときの無双っぷりは凄いから強いのは確かなんだけど、ムボンガに結構やられたりロムに首くくられたり、何よりゴリラにはボッコボコにやられるのでいまひとつ強さを感じないんですよ。あと回想シーンがちょいちょい挿入されるのがテンポを損ねている気もしなくもないです。とは言えその回想シーンも母ゴリの死とムボンガ族長の息子を死なせた訳を現在に繋げるのが上手かったからまあいいでしょう。あのゴリが「母親だった」に対し、ムボンガの「分かるわけがない」には「そりゃそうだ」という悲しみがありますね。それに普通の人間よりは強いもののゴリラを打ち倒すほどではないという、変にバケモノじみた強さにしなかったのは無理のない設定であり、むしろ好感が持てます。動物と戦うから強いと言うよりは、動物と信頼関係を築いているのがターザンの強みと言えるでしょう。ライオンや象を「古い友人だ」と言うのがカッコいい。

ターザンには、ジャングルにあって一人異質な人間の子であったがゆえの孤独、みたいなものが付きまといます。逆に人間の世界にあっても過去のことから色眼鏡で見られたりもする。序盤では「自分の親はクレイトンだ」と答えるのに、後半では母ゴリのことを「母だった」と言う。といった感じで、監督が『ハリポタ』後半のデヴィッド・イェーツなせいか、どうも作品のトーンが暗めな印象です。ターザンと言えば「雄叫び」ですが、本作では雄叫びは2回だけ、どちらも直接叫ぶ姿は描かれないし、動物語を話すと言うのも噂話だけで、母ゴリにちょっと「ウホッホ」って言うくらいしかありません。もっと陽気な冒険活劇に振り切っちゃっても良かったと思うんですけど、スゴく真面目に作ろうとしているのが良くも悪くも影響している気がします。何というか、野生の世界を描きながらどこか上品なんですね。ジェーンとの出会いではターザンはフルチンだったわけで、そこでスカルスガルドの尻をガッツリ映すくらいの画はあってもよかった。いやホントに。

まあそれでも動物シーンは良かったですよ。象の群れが並んで歩いてくるシーンなどはミステリアスな美しさがあったし、兄弟ゴリラとの闘いなんて、あれだけ身軽に飛び回るパワーゴリラに背中ガンガンブッ叩かれても脱臼とアリ止血で済むターザンの防御力の高さは常人を超えてます。だからクライマックスの「仲間を集める」からの水牛やライオンら動物大行進には「それだよ!」とアガるんですよ。街を飲み込む水牛の群れ、その中でターザン的な肉体表現を駆使しながらジェーンを救い悪党どもを追いつめる。サミュエルもガトリング撃ちまくるし、2万の軍勢到着のタイムリミットが迫るサスペンスもある。それまでのどこか悲壮感ある話からの開き直った活劇には『ローン・レンジャー』を思い出すほど。ロムは散々殺戮したゴリラにトドメを刺されて欲しかった気もしますが、まあワニによる踊り食いというのもエグくて良いでしょう。そして部族の皆さんも大挙駆けつけての大団円。ムボンガの部族も参加したことは、ロムから奪った帽子を被った奴がいることで分かる、というのがニクい。お涙頂戴をダラダラやらず、終わり良ければ全て良し、でもそれほど軽薄さは感じないのは、そこまでを真面目に作った結果なのかもしれません。

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