2016
07.21

信じられる味方。『死霊館 エンフィールド事件』感想。

Conjuring_2
The Conjuring 2 / 2016年 アメリカ / 監督:ジェイムズ・ワン

あらすじ
YAKATAシリーズ第2弾!



1977年にロンドン近郊の街エンフィールドで、母親と4人の子供が住む家にポルターガイスト現象が発生、子供の一人ジャネットが何かにとりつかれたような行動を見せ始める。教会から事の真偽の調査依頼を受けたウォーレン夫妻はイギリスへと向かうが、そこには恐ろしい事態が待ち受けていた……。『インシディアス』『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェイムズ・ワン監督によるオカルト・ホラー『死霊館』のシリーズ第2弾。

前作の感想はこちら。
娘5人を守れ!館ホラーの総決算。『死霊館』感想。

実際に起こった「エンフィールド事件」を元に描くホラーシリーズ続編です。間にスピンオフの『アナベル 死霊館の人形』を挟みましたが、今作は正式続編ですね。教会の代わりに怪異を調べて除霊の有無を判断するという心霊研究家エド&ロレインのウォーレン夫妻。前作でも家に巣食う凶悪な霊を相手に奮闘しましたが、今度はロンドンのエンフィールドにある家で前作以上の脅威にさらされます。これがもう凄い。ジェイムズ・ワンはもはやホラー監督の枠に留まらない活躍なのに、新たなホラーの境地を拓くあらゆるテクニックを駆使した演出で、閉鎖空間での逃げられない恐怖には身が固くなるほど。そんな恐怖表現の連続はもちろん、盛り上げるサスペンス、霊の正体を巡る謎解き要素、危機一髪のスリルなども秀逸。そして前作以上に泣ける家族の物語にもなっているのです。いやこれはもう素晴らしい出来!

霊現象に脅かされる母親と4人の子供たちの母子家庭ドラマがベースとしてしっかり描かれていて、それが深みとなってます。特に霊にとりつかれるジャネットと母親の関係性の表出がイイ。ジャネット役のマディソン・ウルフちゃんの演技は良いですね。子供たちの仲の良さも泣かせます。あーでも寝る前にベッドでビスケット食べたら歯を磨かないと霊の前に虫歯菌に襲われるぞ。前作以上にヤバい目に会うウォーレン夫妻もとても良くて、妻のロレイン役ヴェラ・ファーミガの上品な美しさはもちろん、今作は夫エド役のパトリック・ウィルソンが色々とナイスな役回り。あ、騒ぎに懐疑的な女性、見覚えあると思ったら『ボーン・アイデンティティー』のフランカ・ポテンテでした。

どうすれば怖いかという追求が並じゃないというか、あらゆる映画的表現を駆使するのがスゴい。ここで出るか?というところは逆に外してきたりもするので油断できません。軽く前作のおさらいから入るので、前作を観てなくても一応大丈夫かと思います。しかし実話を謳う映画は多いですが、こんな実話が身に起こるのはごめんこうむりたいですな。

↓以下、ネタバレ含む。








部屋の隅の暗がりは本当に真っ黒の闇で何も見えない。廊下奥のテントと部屋の中を交互に映す長回しでの意味ありげなカメラの振り方。油断したところで不意に走ってくるおもちゃの消防車。ジャネットが男口調で話し始めたとき、ジャネットの声と男の声が一瞬かぶるという芸の細かさ。一晩の間に何度も怪異が起こり、なかなか夜が明けないというのが逃げ場のなさを煽ってきます。ようやく明るくなるものの、この時間経過が夜からカットを割らずに朝になるという描き方で、怪異が続いてることを示すので安心できないんですよ。案の定手元にあったリモコンがカメラを振って戻ったら無くなってるとか、テレビが消えたらそこに何かが映ってるとか、昼間でも容赦ありません。警察がいても椅子が動いたり、テレビ撮影してても出てきたり、当事者以外がいても霊現象が起こるというのは潔いと思えるほど。エドたちがジャネットに背を向け話を聞くときに、ピントをボカした座る姿がいつの間にかジャネットじゃなくなるというモーフィングの使い方なども面白いです。ジャネットが施錠した部屋にワープさせられたり、へそ曲がり男が隣家にまでやって来るところなどは、心霊現象の一線を越えてる感さえあります。

水のたまった地下室、テーブルに突き立った何本もの包丁など、悲劇の予感が随所にあるのもイヤンな感じですなんですが、それらはエンフィールドの家族だけでなくエド&ロレインに関わるものも多いんですね。そのため夫妻は単なる調査人ではなく、否が応でも本筋に関わらざるを得ない立場へと追いやられていきます。特にエドは、ロレインの予知夢で絶命したり、地下に一人きりになったり、蒸気プシャーで目をやられたり、眼下に尖った木のある部屋に入ったりと続々と死亡フラグを立てていくので「ヤバい!しぬ!エドしぬー!」とドキドキしっぱなしです。加えてエドが絵に描く夢で見た悪魔、その不気味さもとことん不吉。つーかあんな怖い絵を飾るなよアホか!この悪魔こそが黒幕であり、ビル・ウィルキンスさん(72歳)でさえ傀儡にすぎないと判明することで一気にクライマックスへとなだれ込むのも上手い。二つのテープの同時再生などはゾクゾクするミステリーだし、ロレインが一貫して霊気を感じないという謎もここで解けるんですね。エドが窓から尖った木に落ちそうになるという、ジョースター家の女神像に突き刺さるディオを連想させるスリルも手に汗です。

父親が浮気して出ていった家庭。母親は金にも困り荒れた態度。そんな弱った人たちを狙ってとりつくのが悪魔のやり口なわけですが、周りが信じないぶん家族が助け合おうとする姿が泣かせます。嘆く母にビスケットをあげて元気付けようとする息子。ジャネットのために家に戻ってくる姉弟たち。姉を救うため悪霊の部屋に突き進む弟。悲劇のさなか、たばこを吸ってないことを嘘じゃないと言うジャネットに謝り、抱きしめる母。そんな姿を見せる一家に、彼らを救おうとするウォーレン夫妻の気持ちも分かろうというものです。だからエドがギター弾きながら歌うエルビス(上手い)のシーンなどはとても温かみがあるんですよ。ロレインがジャネットに聞かせた「味方が一人いれば奇跡が起きる」という台詞を、ラストでジャネットに反復させ「私はツイてる、二人いる」で締めるところに、「信頼は常識をも超える」というメッセージを感じます。一貫してこの家族を信じようとする博士の「不思議な現象を娘の声だと思いたい」と言う、意外なところからのイイ話も気が利いています。

ウォーレン夫妻の資料室には、へそ曲がり男の幻灯機が仲間入り(アナベル人形もしっかりアピール!)。そうしてエルビスの曲で踊る二人もまた、常識を超えたところで深く信頼し合う絆があるのです。エンドクレジットで再度強調される「実話」に怖さの余韻があるものの、またいつかこの夫妻の活躍を見てみたい、と思わせてくれます。

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