2016
07.14

負け犬は華麗に盗む。『プランケット&マクレーン』感想。

Plunkett_and_MacLeane
Plunkett and MacLeane / 1999年 イギリス / 監督:ジェイク・スコット

あらすじ
奴はとんでもないものを盗んでいきました。



※レビュー・リクエストいただきました。ありがとうございます!

1748年のロンドン、聖職者の息子マクレーンは、とある事件で出会った強盗のプランケットと二人で夢の実現のため貴族を狙う強盗となる“紳士協定”を結ぶ。裁判長の手下たちに追われながらも彼らは強盗を続け、その活躍が巷を賑わす有名人となっていくが……。かつて実在した「紳士強盗」を元にしたケイパー・ムービー。

18世紀半ばのロンドンのゴシックな雰囲気のなか、お調子者のジェームズ・マクレーンとワケあり強盗のウィル・プランケットという全く違う境遇で生きて来た二人が強盗コンビを組んで暴れまわる、クライム・ストーリーにしてバディ・ムービー。マクレーンはコネを使って社交界の情報を集め、プランケットが盗みの経験を活かして計画を立てる、そして二人で覆面の怪盗として金持ち連中から金品を奪っていきます。別に義賊とかではないですが、丁寧な口調で口上を述べたり、奪う際も紳士的な態度を崩さなかったりしたために「紳士強盗」と呼ばれるんですね。おどろおどろしい冒頭で当時のロンドンのいかがわしさを示しながら、やがて軽快に強盗をこなしていく際の洒脱さが楽しく、謎めいた美女レディ・レベッカとの関係にはニヤニヤし、コミカルに深まっていく二人の絆には笑いながらもじんわりします。そこに彼らを追う官吏のチャンスが迫り、事態はやがて冒頭のおどろおどろしさへ繋がるような不穏な展開に。

わりとクズ野郎なのにどこか憎めないマクレーン役はジョニー・リー・ミラー、細身の強面という感じながら徐々に人間らしさを見せてくるプランケット役にロバート・カーライルです。二人は『トレインスポッティング』でも共演してますね。そして『アルマゲドン』のリヴ・タイラーが先鋭的で時代に馴染めないレディ・レベッカ役として存在感を見せてくれます。あとマクレーンの友人で両刀使いの貴族ロチェスター卿役に『チョコレートドーナツ』のアラン・カミング、笑顔が優雅で素晴らしく良いです。これが初監督となるのはジェイク・スコット、MTV出身ということでスタイリッシュな映像もなるほどという感じですが、あのリドリー・スコットの息子でもあるんですね。製作総指揮がゲイリー・オールドマンですが、残念ながら出演はしてないです。

コスチュームものとしての史劇な雰囲気を舞台や衣装に保ちながら、演出や台詞などは現代的。前半こそコミカルですが、時代や階級社会やらの現実の壁、何より犯罪者であることが彼らの自由を縛っていきます。それでも友情を守れるのか、愛する者を守れるのか、という熱さもあって良いです。

↓以下、ネタバレ含む。








マクレーンは教育を受けた男ながらギャンブル好きで金もなく、いつか貴族になることを夢見ています。プランケットは営んでいた薬屋を失い、なんとかアメリカへ渡りたいと強盗を始めます。しかし気取って歩いていても本当の貴族には蔑みの目で見られるし、盗みに失敗した際に捕まった相棒は無残に殺される。格差社会です。そんななか、権力を持つ貴族のみを標的にする紳士強盗が平民だけでなく貴族の娘たちからも話題にされるというのは、それだけ鬱屈した時代でもあるわけですね。人生の負け犬である二人が、そんな淀んだ空気を切り裂く姿は痛快。この時代の豆知識も色々と分かりますね。刑務所は結構自由なんだなとか、そもそも警察機構がないなど。

二人のやり取りも面白くて、最初の共同作業が「尻からルビーを出す」というのから笑います。情報収集でマクレーンの寝た女が性病持ちで、それを治すために元薬屋のプランケットが出して来た薬がむっちゃヤバそうとか、その時の女性の結婚式を襲い全てをブチまけ、派手な花火と共に去るというのも愉快。レディ・レベッカは彼らの正体を早い段階で(ひょっとしたら初見で)見抜いていたわけですが、自身も革新的な考え方なので口外せずに見守る感じです。彼女が二人に直接絡むのはかなり終盤ですが、リヴ・タイラーの大きな瞳がときにいたずらっぽく、ときに慈愛を感じさせる気がして、チームになってからも違和感がないんですね。また立場的には中立だったアラン・カミングのロチェスター卿が最後にマクレーンたちを助けるのは感動的(しかも強い!)。彼もまたバイセクシャルというある種の革新性を持つ人物であることを考えると、この物語は時代に逆らう者たちが新たな未来を切り開こうとする話とも見れます。

プランケットとマクレーンを追う裁判長の右腕チャンスは、それとは逆に権力を笠に着た前時代的なゲス野郎として描かれます。「正しいことをする」のではなく「自分がすることが正しい」と考える人物。罪人の目を潰し、部下には当たり散らし、上司を陥れ、惚れた女を手籠めにしようとする。そんなチャンスとプランケットの決闘は「過去の権威にすがる者」対「未来を夢見る者」という構図にもなっています。二人の敵対がラストの対決にも繋がっているのが上手い。

信頼を築いていったはずのプランケットとマクレーンが、マクレーンの愚かな行為により仲をこじらせるのはツラいです。マクレーンのために二人分のアメリカ行きチケットを買ったり「金の問題じゃない」と吐き捨てたりするプランケット、最後の仕事に失敗して捕まりながら裁判で「相棒は誰よりも高潔だ」と高らかに宣言するマクレーン。反りの合わなかった二人が育んだ友情には思わず涙です。なぜか最後の襲撃では顔を隠さないというあたりにやけっぱち感もあって、マクレーンが吊られたシーンでは正直本当にこれで終わるんじゃないか、まあそんな悲壮な感じで終わるのもありか、などと思ってました(現実でもマクレーンは処刑され、プランケットは逃げ延びたらしいです)。

しかしここで一気にエンターテインメントに振り切れる、終盤10分の驚くほどの痛快さ!煙幕を張って現れる二丁銃のプランケットにはシビれまくりです。マクレーンはかなり死にかけてましたが、敢えてちょっと遅れて来て懲らしめようとしたんじゃね?と勘繰るくらい。ロチェスター卿の剣捌きも鋭いし、プランケットは目潰し野郎チャンスの目を撃ってケリをつけるし、ロチェスター卿から奪った母の形見をプランケットがちゃんと返すというところまで。この出来すぎな終盤の大活劇は、ひょっとしたら死に行くマクレーンが最期に見た夢なのかもしれない……とも思ったのですが、それでも個人的には「未来を夢見る者」に死を与えることを拒否した物語である、と捉えたいところです。だから走り行く三人の先にあるトンネル出口の光は、希望の光なんですよ。最高のラストカットです。

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