2016
07.11

すれ違う戦士たちの生き様。『ウォークラフト』感想。

Warcraft
Warcraft / 2016年 アメリカ / 監督:ダンカン・ジョーンズ

あらすじ
この筋肉量には勝てない。



新たな居住地を求めるオークの戦士たちが魔力を使って異世界のゲートを開き、人間の王国アゼロスに侵攻を始めた。これに対抗する人間たちは守護者と呼ばれる魔法使いと共に自国を守るべく戦う。そんななか、オークの中にこの戦争を疑問視する者が現れる……。世界的人気を誇るPCゲーム「ウォークラフト」シリーズを実写映画化したファンタジー。監督は『ミッション:8ミニッツ』『月に囚われた男』のダンカン・ジョーンズ。

剣と魔法の正統派バトル・ファンタジーです。原作となるゲームをどこまで再現したのかは分かりませんが、世界観はそれを踏襲したものでしょう。本作のオークは人間と同等の主役格で、『ロード・オブ・ザ・リング』とは異なり粗野ではあるもののしっかり知性を持っていて、あそこまで小汚くはないですね。何よりそのガタイの良さに「ハルクみたいなのがいっぱい出てくる!」とアガり、その巨漢たちの筋肉がはち切れんばかりに暴れまわる戦闘シーンは重量級のド迫力。またオークたちは色んな部族の混合部隊なので、そこで起こるいさかいなどもあったりします。対する人間側は王政の元で、戦士長のローサーに加え守護者(ガーディアン)という魔法使いが超絶な力を持ち対抗します。

主役の一人ローサー役のトラビス・フィメルも悪くないんですが(ちょっとテイラー・キッチュっぽいし)、オークと人間のハーフであるガローナ役ポーラ・パットンが持って行きますねー。肌が緑色で名前がガローナなので『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のガモーラと被ってちょっと紛らわしい。でも美しい。守護者メディヴを演じるベン・フォスターが魔法を使ったときのエフェクトが身体中の穴が光ってそうでちょっと面白いです。レイン王役のドミニク・クーパーは『ドラキュラ ZERO』と違って名君という感じの王様ですが、王妃を演じるルース・ネッガは『エージェント・オブ・シールド』のレイナなのでなんかやらかしそうに思えます(偏見)。またオークたちを演じる役者たちが結構多彩で、デュロタンは『猿の惑星:新世紀』コバ役のトビー・ケベル、オーグリムは『パシフィック・リム』チャック役のロブ・カジンスキー、グルタンは『クリミナル・アフェア 魔警』のダニエル・ウーなんですよ!いや、言われても見た目わかんないですけど。

ファンタジー世界の映像化はかなりのこだわりが感じられるし、オークの個性的な装備や人間兵の鎧のカッコよさなどの衣装、頭上を見上げたときの高さや山の上からの俯瞰の広大さといったフィールドの広さを実感させるショットの数々などはとてもイイです。ただ場面転換がちょっと急だったりする駆け足感や、一本の物語としては若干の物足りなさがあったりもして、この辺りは続編ありきなところもあるんでしょうか。かなり好きなんですけどね。

↓以下、ネタバレ含む。








ファンタジーはどれだけその世界観に没頭させてくれるかだと思うんですよね。監督のダンカン・ジョーンズも『ロード・オブ・ザ・リング』を意識したと言ってますが、それに見合うだけの映像になってると思います。特にオークの描き方は気合い入ってて、人物によって使う武器も異なるし、ホードという大群が侵攻するシーンは凄まじい重厚さ。オークは手のでかさがイイですよ。ラスボスのグルタンがただの爺さんかと思ったら江田島平八だったのにはビビりましたが、捕虜の命を引っ張って弄ぶというところが嫌らしくていいですねえ。あと主役の一人デュロタンのフロストウルフ族が乗る巨大な狼とか可愛い。異形の生物としてはグリフォンも強カッコいいです。あとゲートを通り抜けるのが意外と大変とか、何もない空間に現れるゲートの裏側がどうなってるかを見せるのは面白いです。アゼロスにはドワーフやエルフもいましたが、せっかく円卓で種族会議みたいなのもやるのに描写的には少なく、人間との関係性もよく分からないのは残念。

しかしそれよりも残念なのは、誰もが予測したであろう熱い展開、つまりデュロタンとローサーの友情・共闘といったものが、まさかの丸ごとなし、ということです。二人の絡みはデュロタンが和睦を申し込む谷底のシーンの僅かな会話くらい(完全な予告詐欺)。しかもそこでローサーの息子が討ち死にするという取り返しのつかない事態、さらには氏族長であるデュロタンがまさかの退場。ラストの展開を考えれば、本作は要するに大河ファンタジーの序章的な位置付けであり、だから冒頭の人間とオークの決闘シーンも未来の話なのでしょう。ただ続編が確定してるわけでも二部作三部作といった方針が明言されてるわけでもないので、どうしても半端な印象を受けます。決着の付け方も、ガローナが王を倒した英雄としての影響力を持ってオークに戻り平和を取り戻す道を探せ、という王の先を見据えた決断なんですが、これはガローナにはかなりの押し付けだし、王がそこまでガローナを信頼する根拠が弱いし、その目論見を他の人に伝えないからただの王殺しになっちゃう、というどうにも煮え切らない結果を招きます。カタルシスに欠ける、というのが痛い。

あとシリアスな大合戦と並行して語られるローサー側の話が、牢番に魔法をかけるくだりとかゴーレムとのバトルなどで急にコメディ要素が増えるのがバランス崩してるんだよなあ。ユーモア入れるならもっと最初から入れてほしかった……いや、なくはなかったけど……ああ、なんか文句が多くなってしまいました。色々良い点もあっただけに、惜しい!っていう気持ちが強いんですよ。ローサーとブラックハンドの誇りを賭けた決闘の結果をオークたちが受け入れるところなんて、強い者はちゃんと認めるフェアな戦士たちという面が出てるし。シュパッて消えるテレポートは観てて気持ちがいいし。グルタンに対抗する守護者メディヴが同じフィルの力を使って飲まれてしまい、守りたいがために禁忌に手を出したことを悔いる守護者と、一旦は逃げ出した男が覚悟をもって守護者を引き継ぐドラマとか良いんだよなあ……などと言ってるうちに、これもう一回観たら楽しめるんじゃないか?という気がしてきましたよ。

人間とオークの架け橋になろうとオーク側に戻るガローナ、ガローナが裏切ったと思い込みながら新たな王になるローサー、人間に拾われるデュロタンの息子、という関係性がどうなるのかも気になります。本国ではいまいちでも中国ではヒットしたらしいし、何より今以上の一大スペクタクルとなるポテンシャルは十二分にあると思うので、ぜひとも続編は作っていただきたい!応援してるよダンカン・ジョーンズ!

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