2016
07.06

時を超え、時を知る。『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』感想。

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Alice Through the Looking Glass / 2016年 アメリカ / 監督:ジェームズ・ボビン

あらすじ
マッドハッターがマッド。



望まぬ婚約を解消し、貿易船の船長となったアリス。しかしあるきっかけで再びワンダーランドへ行くことになった。悲しい過去にとらわれたマッドハッターを救うため、アリスは時間をさかのぼる旅に出る。『不思議の国のアリス』を元にティム・バートンが監督したファンタジー、『アリス・イン・ワンダーランド』の続編。

『不思議の国のアリス』のその後を描いた物語の続編です。ティム・バートンは製作にまわり、監督は『ザ・マペッツ』のジェームズ・ボビンにバトンタッチ。今回の冒険は時間旅行がメインとなります。ただでさえおかしいマッドハッターが失った家族の記憶のために余計おかしくなり、これを救うには過去に戻ってハッターの家族を救うしかないと、アリスたちは「時間」そのものであるタイムに会いに行くというお話です。不思議の国の美術、時間の国のメカニカルさなど、ファンタジックなビジュアルは前作以上にカラフルで独創的。時を越えることで過去を振り返り、それを今に繋げるというタイムトラベルもののストーリーも悪くないです。続編ということで『鏡の国のアリス』を意識したシーンもあって原作好きはちょっとアガりますね。

前作の主要キャラは続投。アリス役ミア・ワシコウスカは『クリムゾン・ピーク』に続き時代ものですが、前作からの流れでなかなかパワフルで行動的。周りに派手キャラが多いせいか微妙に地味に感じちゃうのが相変わらずですが、今作は前半ずっと着ている中国のドレスが派手なので、多少改善されましたかね。ハッター役のジョニー・デップはさらに白塗り度が増して目付きが怖いと言うかもうキモいし、白の女王ミラーナのアン・ハサウェイがさらに手をヒラヒラさせる動きがちょっと面白い。そして赤の女王イラスベスのヘレナ・ボナム=カーターの存在感は凄いです。いや頭がデカいからってだけじゃなくて。あろうことか、ちょっと可愛くさえ見えてきて目を疑います。そんな女王と張るタイム役のサシャ・バロン・コーエンもまたイイ立ち位置。あと芋虫から蝶になったアブソレムの声が先日亡くなったアラン・リックマンで、これが遺作なんですね……

過去と行き来する冒険のなかで、時間というものをどう捉えるかというところまで言及するのは良いですね。ずーっと鳴ってる音楽のせいで若干眠気を誘われるところもありますが、基本的には楽しいです。

↓以下、ネタバレ含む。








クロノスフィアがなんかイイですよ。ホイポイカプセルみたいに収納に便利だし、ドラえもんのタイムマシンのようなマニュアル操作な感じのデザインとか、あと「何年前」とかじゃなくて「◯◯の日」という呼び方が、ちょっと混乱するけど雰囲気出てます。タイム関係の美術はレトロ・フューチャー感がありますね。「秒」が集まって「分」になるという合体ロボは熱いし、当然なるよね?と思ったら「1時間」にもなる。無数の懐中時計がぶら下がる余命管理の部屋などは壮大さがあって3D的にも映えます。

ただクライマックスでクロノスフィアが僅かに繋がって元に戻るシーンは、あのビリビリで繋がるんだというのをもう少し印象付けてほしかったかな、というのが不満と言えば不満。あとハッターの友人のネズミとか犬とか前作もいたんだっけ?正直ウサギが二匹も行動を共にするのはくどいし、ハンプティ・ダンプティはあれだけかい!とも思いますが、そこは原作サービスの部分なんでまあいいですかね。ジョニデのハッターはもはや白塗りの妖怪みたいになってますが、あんな可愛らしい子があれだけ様変わりしてて家族はよくハッターだとわかったな。キャラについて言えば女王ズの関係性は面白いです。赤の女王の頭がデカいのは怒りが原因であるというのが分かってちょっと気の毒。それにしてもなぜ王冠が砕けるほどの剛毛になったんだろう……。また前作でも何となく感じられた白の女王がイイ人ぶった偽善者だというのを、思ったよりハッキリ示すのは驚きです。エンドクレジットのイラストがとても味があるんだけど、そこでも白の女王の意地悪さがよく出てます。

前作でもアリスは時代に逆らい自立した女性として描かれましたが、今回ものっけから『PAN ネバーランド、夢のはじまり』のような帆船チェイスをかましてきたり、友人のためとはいえクロノスフィアを奪ったりとかなり強引な手段を使ったりします。困難に立ち向かう姿は前作以上ですが、それでも「過去」という壁にぶつかってしまうんですね。また赤の女王は妹である白の女王(この二人が姉妹というのはすっかり忘れてた……)がついた嘘を許せず、それを糾弾するためにその時代に戻るものの、昔の自分と会うことで世界を壊してしまいます。つまり時間旅行の話でありながら、「過去の事実は変えられない」という帰結に至るんですね。ハッターの家族も死んではいなかったから助けられるわけです。

現在を生きる者にとって時間は敵ではなく共に過ごしていくもの、そして過ぎ去った時間は受け入れることで前へ進むのだ、と言っており、ちょっと意外な方向性で良い話になっています。姉にあの日の嘘を謝る白の女王。再び家族との時間を取り戻したハッター。そして父の死という現実を受け入れてタイムに父の時計を渡すアリス。船を失っても屹然とするアリスを見て、自らも自立した女性として再出発するアリスの母。ついでに器の小さいヘイミッシュを見限ってアリスの元へ参じる使用人。過去に遡る冒険を終え、流れ続ける時間に乗って未来へと船出するアリスたちに、もうクロノスフィアは必要ないのです。

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