2016
07.04

闇深き場所は心の奥に。『ダーク・プレイス』感想。

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Dark Places / 2015年 イギリス、フランス、アメリカ / 監督:ジル・パケ=ブランネール

あらすじ
あの夜、何を見たのか。



リビー・デイは28年前に母と姉二人を殺された一家惨殺事件の生き残り。リビーの証言により当時15歳の兄ベンが犯人として服役しているこの事件について、ある日有名事件の真相を語り合う「殺人クラブ」から話を聞きたいと招待される。リビーはこれを機に事件の真相を探り始めるのだが……。『ゴーン・ガール』ギリアン・フリン原作のミステリー。

1985年、カンザスの田舎町で母親とその娘2人が殺されるという事件で生き残ったリビー。しかしそれから28年、働きもせず遺族への寄付金だけで生活してきたリビーは、金に困って「殺人クラブ」のメンバー、ライルの持ちかけた事件の調査に謝礼金目当てで協力することに……という、過去を辿る系ミステリーです。本当に犯人はベンなのか?あの夜一体何が起こったのか?少女の頃の曖昧な記憶を頼りに関係者に話を聞いていくうちに、兄ベンに対するリビーの証言さえ疑わしくなってくる。現在と過去が交錯しながら、少しずつ明らかになる嘘や秘密、あちこちしっかり繋がっていく関係などがよく出来ています。

役者陣の存在感が強い、というのは大きいですね。ニートのシャーリーズ・セロンに意外と真面目なニコラス・ホルトという『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の二人が結構異なる印象。クロエちゃんことクロエ・グレース・モレッツがかなりビッチだったり、『ブラック・スキャンダル』のコリー・ストールの表情の作り方とかもイイ。若ベン役のタイ・シェリダンは『MUD』のあの少年ですね。『X-MEN:アポカリプス』でサイクロプス、スピルバーグの『ゲームウォーズ』映画化で主演だそうで超売れっ子じゃないですか!あの少年が成長したらああなるのか……?と思わなくもないですが、環境は人を変えるのですよ……(謎フォロー)。ちなみに作者のギリアン・フリンが女性というのは恥ずかしながら知りませんでした。殺人クラブで斧を持った女性がカメオ出演のギリアン本人だそうです。

ミステリーとしては結構面白いと思うんですが、肝心のシーンがスルッと過ぎちゃって「んっ、えっ、そうなの?」と戸惑うところも。あといきなり名前が先に出て本人が後から出てきたりするので、覚えておかないと少し混乱しますね。

↓以下、ネタバレ含む。








みんな嘘をついている、というのがポイントになります。殺していないベンがそれを主張しない理由。ベンを好きだった娘が、彼がいたずらしたとする嘘の告発。母が幼いリビーに「愛してる」と言う表情。ベンを犯人だと言ってしまった幼いリビー。いかにも怪しげな父が隠していたこと。ディオンドラのどうかしてるとしか言い様のない凶行。母が会っていた謎の人物のお粗末な行動。様々な思惑が不本意に絡み合い、不幸なタイミングも重なって犠牲者が増えてしまった事件だったわけです。悪魔崇拝と言うと『デビルズ・ノット』を思い出しますが、それもミスリードだったということです。「殺人クラブ」が興味本位の冷やかし集団かと思いきや、実は至極真面目な団体で、お陰で連続自殺幇助犯に行き着いた、というのも意外性がありました。

ただ見せ方としては、過去の視点が俯瞰すぎるのが何だか落ち着かなかったですかね。一応ベンか母のパティの視点に寄ってはいた、のかな?現代パートではリビーがほとんど心情を語らないので、もう少し語ってくれてもよかった気も……と思わなくもないですが、そこはシャーリーズ・セロン自身の「母親がDVの父親を射殺した」という過去に重なるだけに重いものがあります。クロエちゃんはもうちょっとエロさを出した方が、ベンがそこまで心奪われる説得力になるのになあというのと、ディオンドラの洗面所にあったペンダントがリビーの母がしていたもの、という唯一の物証が分かりにくいのがちょっと残念(明示するシーンがあったとしたら見逃してるな……)

ベンは娘を守るため。母は家族を守るため。愛情のために嘘をついた家族が、愛情ゆえに壊れてしまった皮肉。リビーはそうやって自分を置いていった家族を許せなかった、だから寄付金などにすがり、事件をネタにすることで家族への恨みを晴らすという側面があったのかもしれません。全てを知り、死刑囚用ではなく一般用の面会場所でベンに会うリビーは「ベンだけが許すということを学んだ」と独白します。「有益な人生を送れ」と言った母が死を選んだことは許しがたいことなのでしょう。しかしその真意を知り、リビーもまた母を許すために「普通でいい」と言える人生を送ろうと決意します。「今始まった」と言うその普通の人生こそが、リビーが28年間求めていたものだったのかもしれません。
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