2016
06.20

金は天下を回らず消える。『マネーモンスター』感想。

Money_Monster
Money Monster / 2016年 アメリカ / 監督:ジョディ・フォスター

あらすじ
サカジャヴィア=まあ落ち着け ※たぶん



財テク情報を派手に演出して人気のテレビ番組「マネーモンスター」。司会者リー・ゲイツが今日も軽快なトークを披露する生放送中に、ディレクターのパティがスタジオ内の見慣れぬ男に気付いたときには時既に遅く、男は突然拳銃を振りかざしリーを人質に番組をジャックした。ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ主演のサスペンス。

面白いです!生放送の金融番組が一人の男に乗っ取られるという話なんですが、番組の開始と共に始まるテレビジャック事件はほぼリアルタイムで進み、思いもよらない展開で全く目が離せません。金融という複雑なモンスターをネタにしながら分かりにくさはなく、それでいてしっかり金の話にもなっており、かつその陰にある意外な事実まで炙り出されます。捻りの効いた話を上手く整理し、スピーディながら堅実な演出で、決して停滞しない極上の娯楽作に仕上げています。ちょっと『テロ、ライブ』を思い出しました。ジョディ・フォスターの監督作を観るのは初ですが、確かな力量を感じます。

調子ブッこいてる番組MCリー・ゲイツ役はジョージ・クルーニー。金融番組で踊りまくったり、人質になってからのヘタレっぷりやその後の変化も最高です。番組ディレクターのパティ役ジュリア・ロバーツはクルーニーとは『オーシャンズ12』以来の共演とのことですが、有能な制作サイド役が似合ってます。犯人であるカイル役のジャック・オコンネルが怒んねるですね。何でもないです。美女すぎるCCOのカトリーナ・バルフさんが美しい。『グランド・イリュージョン』にも出てたらしいですが、これは復習せねば。

第三者はあくまで第三者であり人の善意など金の前では役立たないとか、エンタメのつもりが人の人生を狂わせるとか、結構シビアな面もあるのがクール。99分のコンパクトな上映時間に様々な人間模様を織り込んだ、劇場型犯罪ムービーの新たな良作です。

↓以下、ネタバレ含む。








番組の始まりと事件の進行を同時に見せるところから引き込まれ、閉じたスタジオという長いワンシチュエーションでの見せ方の工夫、そこから外に出たときの解放感と緊張感のバランス、クライマックスのロビーでのドラマと、上手いです。アルゴリズムのバグの真実、消えたCEOなどのサスペンスで話を膨らませ、ソウルの開発者やハッカー、南アのマンバなどがサラッと映るタイミングで興味を持続させる。ゲイツやパティだけでなく、他のスタッフもちゃんと役割を果たすのが良くて、特に最後まで撮り続けるカメラマンのレニーが、序盤の台詞「度胸(balls、かな?)」を後で繰り返すとか、ラストにカメラを置く姿とか良いです。あとプロデューサーなのになぜかパシりをさせられるロンの立ち位置の低さとかね。効果テキメンの勃起クリームでヤッちゃってるので撃たれてもあまり同情を感じない、というのも立場低いです。

ジョージ・クルーニーは、有名なのに実態はちょっとショボいというのが『ヘイル、シーザー!』に近いですが、強気なエンターテイナーが銃と爆弾でヘタレぶりを晒してからの、徐々に会話でイニシアティブを取っていき、自分で自分の交渉人をやるというのは面白い。視聴者に命の価値を説くシーンは盛り上げる音楽もあってワクワクします。しかし自分の命が見限られるという残念な展開がカワイソウ(笑ったけど)。こういうところが結構冷静で、つまり人の善意を持ち上げない。放送を観てる人たちはあくまで他人事なわけです。

そんななかで犯人カイルと接する当のゲイツだけが彼の思いを肌で感じ、金も名声もあるが離婚を繰り返す自分と、金はなくも家族を得ようとしているカイルを比べてみたりします。カイルは正直逆恨みだし、彼女に散々罵倒されるのもしょうがない愚かさではあります。ただ、彼が凶行に至った経緯、そしてエンタメだと思っていた己の番組が与えた影響を知ったゲイツが、自分が人質であることを忘れて元凶であるウォルトを追い詰めていく姿には熱いものがあり、それをサポートするクルーたちとの一体感がドラマを盛り上げます。

カイルが望んでいたウォルトの詫びを聞き、ゲイツへの感謝を視線に込めて死ぬのは、覚悟の上だったとしてもせつないです。ここで都会における所得格差が招いた悲劇、という意外と社会派なテーマも見えてきます。儲かれば何も言わず損したときだけ文句を言う、というウォルトの憤りは(そこだけ取れば)正論だし、そもそも株はリスクのあるもの、しかしなかには必要に迫られそのリスクを負う者もいるということです。この辺りはもう少し描き込みがあってもよかったかな。妊娠した彼女がその後出てこないのも残念だし、何よりゲイツたちがこの経験を経て番組をどう変えるのか、というところが観たかったですけどね。ライトな後味にしたかったのかもしれませんが。でも結局何も変わらないんじゃないか、という予感もさせるんですよ。命の危機を見ても株を買ったりはしない。あれだけの事件も喉元過ぎれば動画でネタにされる。世間は何も変わらないかもしれない。病室で互いを思いやるゲイツとパティのシーンで終わるのは、まだ「変わる希望」を残したラストなのかもしれません。

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1083-741ed5c9
トラックバック
back-to-top