2016
06.16

救いたい心と心。『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』感想。

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The Final Girls / 2015年 アメリカ / 監督:トッド・ストラウス=シュルソン

あらすじ
血まみれキャンプ場へようこそ!



女優の母を亡くしてから3年後、娘のマックスはかつて母が出演したホラー映画の上映祭に行くことに。しかし上映中に発生した火事から逃げ惑ううちに、その映画の世界に入り込んでしまう。映画の中で母に再会し喜ぶマックスだったが、そこには不死身の殺人鬼が待ち受けていた……!というホラー・コメディ。

気付いたら映画の中に入り込んでしまった!しかもその映画は『13日の金曜日』的な殺人鬼が跋扈する80年代スラッシャー・ホラー。しかしそこには事故で死んだ母アマンダがナンシーという役で存在しており、娘のマックスは今度こそ母を死なせまいと奮闘することになります。映画の中に入ると言えばシュワ主演の『ラスト・アクション・ヒーロー』がありますが、本作もそのメタな展開が楽しく、加えてホラーの登場人物がホラー映画を語るという『スクリーム』のような映画ネタ映画にもなっています。デフォルメの効いたキャラや、「エロいことをしたら殺される」というホラーお約束の展開を逆手に取ったネタには大ウケ。しかしそれ以上に秀逸なのが、時空を越えて若き母に出会うという『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような展開があることで、この母娘のドラマに不覚にも涙します。これは面白い!

マックス役は『記憶探偵と鍵のかかった少女』のタイッサ・ファーミガで、以前はそれほど思わなかったけど今作では実に美しく、その上予想外のアクションまで見せてくれてとても良いです。母アマンダ役、『ウォッチメン』シルク・スペクターのマリン・アッカーマンとのやり取りが泣かせます。『ピッチ・パーフェクト』のあいつ、アダム・ディヴァインも出ており、またもや超うぜえ!(もはや誉めてる) あと黒人の彼のユニーク過ぎる顔面がジワジワきます。

スリルはあれどホラーとしての怖さはほとんどないですが、ホラー・コメディとして、そしてジャンル映画の皮を被った親子愛ファンタジーとして、コミカルかつ分かってる感満載の見せ方による創意工夫のオンパレード。80年代ホラーとしての衣装や音楽の再現度も面白いです。タイトルでもある「ファイナル・ガール」とはホラー映画で最後まで生き残る女性のことですが、このタイトルの意味するところが泣けるんですよ。ラストの締め方も最高。これがDVDスルーとはもったいない、シチュエーション的にも広く劇場公開してほしかった一作です。

↓以下、ネタバレ含む。








マックスたちが映画のなかで出会った人物はあくまで物語の登場人物であり、演じてる役者本人とは別人のはずなんですが、じゃあ設定にない性格やシナリオにないセリフは誰によるものなのか、話が変わった後のシナリオは誰が作ったものなのか、などと考えてしまいますが、そんなことを言ったらそもそもこの話は成り立たないので置いときましょう。でも小説やアニメなどとは違って、実在する役者がキャラとなる実写映画だからこその奇妙さというのは、リスクもあるけど愉快です。

キャンプ場に集まった若い男女といういかにもな設定、そこに現れるいかにもな殺人鬼、というホラーあるあるにも笑いますが、そこが映画の世界だということを忘れない小技が特に面白いです。ヤツが近付いたときに周囲に流れる効果音、シナリオ通りに席につく人物たち、セリフに応じて始まる回想シーン、年代や場所を示すキャプションが物体としてそこにあるなど。回想シーンを使ってピンチを脱出、などはその演出とも相まって良いアイデアですねえ。他にも背景が描き割っぽかったり、空にエンドロールが流れたりと徹底してます。序盤で92分ごとに同じシーンを繰り返すのは、それが上映時間ってことですね。

現実側の人物たちのキャラがなかなかユニークで、それでいて因縁のある意地悪女が見せる女の友情でじんわりさせたりするのがニクい。一方で時代を感じさせる劇中人物たちの方はさらに個性的。特にあばずれティナのビッチぶりはスゴいです。薬でハイになったときの挙動不審や、集中してると言ってハエに気を取られるとか。脱ぐと殺人鬼がやってくるので現実人物たちは脱がせないよう必死ですよ。カールはウザすぎると思ってたら見事な死にっぷりがたまりません。そして本来のファイナル・ガールであるポーラが事故で爆死って。しかしこれによりファイナル・ガールを引き継ごうとするマックスへと繋がるのが上手い。

自分の不注意で母を死なせてしまったことを悔やむマックスは、再び母に出会い、劇中殺されることが決まっている彼女を今度こそは救おうとします。贖罪のための代替行為と分かっていても、子供を産んで育てたいと言う彼女に名乗り出れないマックスのもどかしさを見れば応援したくなるってもんですよ。「ロックンロール!」というセリフや「映画スターだもの」という喋り方など、あくまで母ではないもののそこへの重ね方が上手いです。思えば最初にスクリーンの切れ目を潜るのは、母体へ戻る胎内回帰のようでもありますね。そして負傷したマックスを見て、生き残れるのはファイナル・ガールのみというルールで救うべく、死のストリップを敢行するナンシーには感涙。そこから一転、ファイナル・ガールとなった途端ナタを華麗に振り回し、飛んで来るナイフをスライディングでかわすマックスには興奮です。

そしてラストで思いがけない伏線が効いてきます。そう、『血まみれキャンプ場』のリバイバル上映会は、続編との二本立てだった!エンドクレジットではNG集まで入れてくれるし、サービス精神満点の作りには拍手を贈りたいです。

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