2016
06.02

金と銀との虚飾と渇望。『スノーホワイト 氷の王国』感想。

The_Huntsman_Winters_War
The Huntsman: Winter's War / 2016年 アメリカ / 監督:セドリック・ニコラス=トロイヤン

あらすじ
あいつはハンツマン!(「パ」ではない)



スノーホワイトやハンターのエリックが倒した女王ラヴェンナにはフレイヤという妹がいた。ある事件をきっかけに魔力を手に入れたフレイヤは北の地で氷の王国を築く。かつてフレイヤの軍に属する戦士だったエリックは、今また魔法の鏡を巡る戦いに身を投じる。グリム童話「白雪姫」をアレンジしたアクションファンタジー『スノーホワイト』の続編。

何も考えずダラーッと観れる映画が観たいなーと思って観たら期待通りでした。前作は「白雪姫」の物語を大胆にアレンジしてファンタジックなバトルものにし、原作の持つ童話の雰囲気を良くも悪くもブチ壊してくれましたが、今作もその系譜を受け継ぎ、恐怖支配を敷く魔女とそれに対抗する者たちの戦いが描かれます。原題は「The Snow White Chronicles - The Huntsman: Winter's War」で、何か頭に「白雪姫の年代史」と付いており、まるで『指輪物語』のように世界観を膨らまそうとしてるのが凄いです。

元々はちゃんとした続編の予定だったようですが、前作の監督と主演のクリステン・スチュワートが不倫騒動のため降板、ハンターのエリック中心の話に変更したとのこと。物語は時間軸的には前作の前と後が描かれます。スノーホワイトを苦しめた魔女ラヴェンナには実はフレイヤという妹がいて、この人もまた強い魔力を持つわけですが、そこにドラマがあるんですね。ラヴェンナとフレイヤを演じるのは、前作から続投の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』シャーリーズ・セロン、そして新たに『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のエミリー・ブラント。なにこの姉妹、勝てる気がしないんですけど。しかもフレイヤは氷を操る能力を持つ女王、いわば邪悪なエルサです(『アナと雪の女王』とはだいぶ違いますが)。

そんな氷の女王に立ち向かうのは前作でスノーホワイトと共にラヴェンナと戦ったエリックことクリス・ヘムズワース。The Huntsmanっていうくらいだから猟師だったはずですが、今作では「ハンツマン」というエリート戦闘集団の一員ということになってます。……そうきたか。そしてこのクリヘムが『アベンジャーズ』でのソー以上に脳筋!そしてやたらチャーミングで良いです。さらには女戦士のジェシカ・チャステイン、ドワーフ(七人の小人ね)のニック・フロストまで参戦!ナレーターは聞き覚えある声だと思ったら、ノンクレジットでリーアム・ニーソン!とキャストがやたら豪華です。

ちなみに白雪姫はいないも同然ですが、ゴージャスな女優陣がクリヘムを食う勢いで魅せてくれるのでそれほど問題ないです。前作観てなくても大丈夫!というか前作ほとんど忘れてたけど大丈夫!大方の予想を裏切らない展開は安心して観れるし、全てを受け入れて観るとなかなか楽しいです。

↓以下、ネタバレ含む。








何も考えず、と言いながら展開はわりと読めるんですけどね。ジェシカ・チャステインのサラが7年幽閉されてエリックに復讐するために逃げてきたと言うけど、タイミングとか手段とか諸々怪しいし、案の定女王の手先だし(脳筋は気付きませんが)。ドワーフコンビが男女二組になったところでこいつらくっつきそうだなーと思うし、フレイヤの赤子を殺したのがラヴェンナというのも予想できる。まあしょうがないかな。エリックが少年からクリヘムに変わるシーンは、ひょっとしてここで?と思ったところでやってくれましたよ。オッケーです。

逆に予想を覆すところもあって、特にエリックはウィンクしたりはにかんだりと、悲壮な少年時代は何だったんだという快男児ぶり。フレイヤの城に乗り込む際に「上から侵入するしかない」と崖から城に飛び移るシーンで「あ、こいつ予想以上にバカだ」と確信できます。まあでも二丁手斧で戦うアクションはカッコいいしな。ゴブリンとのバトルでは空中アクロバットからの投げ技フィニッシュまで見せますからね。オッケーです。あのゴブリンの造形も、金や装飾品を好むという属性を反映させてるのは面白いです。そして予想以上に素晴らしかったのがシャーリーズ・セロンの美しさですよ。金箔の舞う復活シーンは他の登場人物との格の違いを見せつけてくれるし、T-1000並の液体金属攻撃でほぼ無敵です。エリックの奇襲も余裕で防ぐし、もはやチートですね。さすがのエルサ、じゃなかったエミリー・ブラントも若干霞むほどですが、エリックとサラに別の映像を見せて仲違いさせたり(これは争わせる理由として上手い)、白熊に騎乗するという荒業を見せたりするので見せ場は十分。

フレイヤは愛情を否定し、侵略した国々の子供たちを手下とすべく集めます。しかしそれは手に入れられなかった家族を求める孤独な女性の代替行為であり、決して満たされたないからこそ侵略の業は止まりません。絶望に打ちひしがれたところに強大な力を身に付けてしまったため、求め方を誤ってしまったのですね。フレイヤの表情はどこか遠くを見やるようで、その瞳は悲しげです。一方で美しさを求めひたすら自分磨きを怠らないラヴェンナは、妹の王国でさえ自分の所有物のように振る舞う根っからの女王です。しかし最後に「私も愛や子供がほしかった」「でもそういう運命ではなかった」という本音をこぼしてしまいます。黄金に輝くラヴェンナと銀色に照らすフレイヤは、その豪奢な出で立ちの裏に共に寂しさを抱えながら、お互いが家族であることさえも最後に見失ってしまうのです。……正直ラヴェンナにその台詞を言わせちゃうんか、とは思いましたが、女優二人の演技のおかげで意外とその悲しみが印象に残るのは良かったと思います。

しかし死にゆくフレイヤの前でイチャイチャするエリックとサラというのはどうなんでしょうか。せめてフレイヤに親愛の情があった(ように見える)エリックの元仲間タルが看取ってあげるとかあれば、もっと情感豊かになったでしょうけど。そもそも主役のはずのスノーホワイトが出ないのはいいの?とか、鏡の探索を依頼した王子が丸投げすぎない?とかありますけどね。鏡を割らない理由が語られず(あったっけ?)、そのため守ったり奪ったりする根拠が薄くて、しかも結局割っちゃってよかったんかい、とも思います。でも女優陣の艶やかさや恐ろしさ、そしてクリヘムのマスコットぶりがなかなか楽しめたので良しとしましょう。

さて、果たしてこのクロニクルは続くのでしょうか?ファンタジーバトルものとして「シンデレラ」や「美女と野獣」あたりとクロスオーバーし始めたらちょっと面白いですが、さらに色物感が増してしまうか。と思ったところでちょっと『イントゥ・ザ・ウッズ』を思い出しましたが、そういやあれもエミリー・ブラントが出てたな……。

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