2016
05.10

激突する信念。『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』感想。

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Captain America: Civil War / 2016年 アメリカ / 監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ

あらすじ
ケンカやめて……



シールドが解体された後、キャップを筆頭にアベンジャーズとしての活動を開始するヒーローたち。しかし崩壊したソコヴィアを始めアベンジャーズの戦いによる人々の被害が甚大となっていることを鑑み、政府は彼らを国連の監視下におく「ソコヴィア協定」を提案。これに反対するキャップと従おうとするトニー・スタークの間にすれ違いが生じる……。「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」13作目にして『キャプテン・アメリカ』シリーズの3作目となるヒーロー・ムービー。

MCU前作『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』(以下『AoU』)の直後の話となる本作では、アベンジャーズのヒーローたちが二派に別れて争うことになるという「内戦=シビル・ウォー」が描かれます。なぜ彼らが仲間同士で戦わなければならないのかという経緯、そしてついに訪れる衝突の激しさを丁寧に描き、芳醇なドラマとして提示してみせるのには驚き&興奮。キャップの信念は揺るぎないだけに危うさとなり、トニーのチームを思う気持ちが仇となって亀裂を生みます。人々を守りたいという根本の思いは同じなのに相容れないツラさ。詰め込まれた情報量の多さに翻弄され、シビアな選択の結果に心を痛めながら、しかしそれでも本作は面白い、これが凄い。

監督は前作『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』(以下『CA:WS』)に引き続きとなるルッソ兄弟。結構カットを割るわりにはやはりアクションが見易く、かつエキサイティング。物語はそんなに単純ではなく、幾重にも重ねられた理由があっての戦いとなるのですが、その辺りの交通整理も上手いのでさほど混乱もなく、加えて「まさか?きたー!」という展開が山ほどあって、誰が出てくるのか知っていてもアガります。また本作は『キャプテン・アメリカ』単独作でありながら『アベンジャーズ』の続編と言ってもいいくらい多くのヒーローが登場します。既出のヒーローに加え新規参入者もいて、観る前は「さすがに増え過ぎなんじゃないか?」と思ってたんですが、ヒーローの多さに「ヘヴィさの緩和」と「多様性の裏付け」という意味を伴わせることでそんな懸念を見事に払拭。いやもう、素晴らしいです。

アクション、ドラマ、そして今までの経緯とこれからの展開まで包括した、まさに超大作。MCU過去作は当然観ておいた方がいいのですが(最低限何を観ればいいかは色んな方が言及してるので割愛)、もうね、本作を観てから気になるヒーローの作品を遡って観るでもいいじゃないですか。なんか凄い人がいっぱい出てくるってだけで楽しいもんですよ(雑)。どこからでもいい、MCUの扉を開けて一歩踏み出せば、今日から君もアベンジャーズだ!

↓以下、ネタバレ含む。








■チーム・キャップ

キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース。キャップと言えば盾ですが、今回もビリヤード並に跳ね返らせて当てる、盾でフタをして爆風を防ぐなど盾使いのバラエティは豊富。『AoU』では磁力で腕に吸い付く仕掛けがありましたがなぜか今回は不採用。重くなるからかな?『CA:WS』に続く肉体派ガチバトルアクションも健在で、序盤のクロスボーンズ戦から魅せてくれます。しかしクロスボーンズ凄く良い感じなのにあれで終わりとは残念。ついでにヘリを腕力で繋ぎ止めるシーンではわざわざ持ち手を返して上腕二頭筋を見せるという謎の筋肉アピールまで出てきます。

そんなキャップが無条件で反応してしまうかつての親友がウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズです。今回は『CA:WS』のようなカッチョいい隈取りやマスクがないのがちょっと寂しいですが、左腕で銃弾を防ぎながら部屋を脱出する縦方向アクションはジェット・リーの『ドラゴン・コップス』みたいで面白いし、バッキーがバイク奪ってギュルンって回りながら乗るのが『ロード・オブ・ザ・リング』で馬にグルンと飛び乗るレゴラスのようでカッコいい。ファルコンことサム・ウィルソンは小型ドローンのレッドウィングを駆使して結構メカ使いも激しく、羽を盾として有効活用しつつ最初に三点着地をキメて見せます。このサムとバッキーが、キャップとシャロンのキスシーンにニヤニヤしながら頷くシーンは最高ですね。エージェント13ことシャロンがかつてキャップの愛したペギーの姪というサプライズからの急接近、これはキャップのDT卒業も近いのか!(下世話)そう言えばシャロンの上司役のマーティン・フリーマンがマーティン・フリーマンとしか言い様のない存在感で面白かったです。

スカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフは『AoU』でのたわわなお胸様の強調が減ってしまいましたが、代わりにミニスカを下から舐めるようなアングルが入ったのは監督の趣味でしょうか。ルッソ兄弟、恐るべし……そんなワンダを軟禁状態から連れ出すホークアイことクリント・バートン、登場が唐突なうえにヴィジョンを相手取るなんて無茶すぎますが、そこはニヒルにキメてくれます。せっかく自己紹介したのにブラックパンサーに「知るか」と言われてちょっと可哀想その1。

そして新規参入のアントマンことスコット・ラング。キャップに会えて感激する姿は『アベンジャーズ』のコールソンを彷彿とさせます。単独作『アントマン』でも魅せた縮んでの攻撃でアイアンマンを中から破壊するいうトリッキーさを見せます。ブラック・ウィドウがワンダと同じくお胸様のオープン度が少なめなのは、アントマンが縮んで潜り込むんじゃねーだろうな!という観客の妬みを回避するためですね(違う)。そしてまさかのジャイアントマンとなっての"大"活躍には怪獣映画のノリまであって最高です。刑務所でせっかくトニーにキツい一言を浴びせたのに「誰だ」扱いでちょっと可哀想その2。アリ軍団が出ないのは残念。


■チーム・アイアンマン

アイアンマンことトニー・スターク。今回のアイアンマン・スーツはマーク46ですね。いやもう『アイアンマン3』でアホみたいにスーツ作ってからナンバリングが覚えられないんですけど。腕時計がスーツの手袋に変形したり、飛行機でリクライニング装着→即射出など、今回もギミック満載。トニーはヒーロー活動より学生向けの基金を設立したり、ペッパーとうまくいってなかったりとなんだか地味です。若い姿のRDJが出てきたときはちょっとビビりましたが。そんなトニーの相棒、ウォーマシンことローディも地味にパワーアップ、電磁スティックなどを装備。しかしこのビリビリ棒も地味に破壊されてしまううえに、ギャグ担当だったのが得意のジョークを披露する場もなく、しかも最後に笑えない事態になってしまってキツい。一番損な役回りです。

ブラック・ウィドウことナターシャも今作で一番周りに気を使うという損な役回りと言えます。国連の集まりに出席してワカンダ国王に挨拶したりと『CA:WS』で議会招集に呼ばれて以降アベンジャーズのスポークスマン的な立場も担ってるんでしょうか。それでいてアクションは首飛び付きグルグル投げがさらにレベルアップして二人同時に倒したりするところがまた凄い。ある意味使いやすいキャラになってきました。一方でヴィジョンは正直扱いに困るキャラだと思うんですよね。攻撃はすり抜けるし額の石からビームは出るし飛べるしメシ食わなくていいし赤いしで、ほぼ無敵。あ、メシと赤いのは関係ないですね。そんなヴィジョンの最大の見せ場はお料理コーナー。はい、本日のメニューはパプリカシュですね。……なぜパプリカシュをチョイスしたのかが謎だし、その前にパプリカシュがよく分からないのでコメントしづらいです。

そして新キャラその1、戦う国王陛下ティ・チャラのブラックパンサー!これが予想以上にカッコいい。ヴィブラニウム製のスーツと鋭い爪でキャップやバッキーとのガチバトル、空中三段蹴りというドニー・イェンばりの体技、ひたすら走って追いかけるというスピード、そして黒ずくめの渋いルックに若干の猫耳というケモナー層へのアピールまで!ティ・チャラはソコヴィア協定の会場でワカンダ国王とのやり取りだけで紳士的ながら普段はやんちゃなのかとグッとくるんですよね。

そして新キャラその2はみんな大好き僕らのご近所さん、ピーター・パーカーことスパイダーマンが遂にMCUに参戦!若い!かなり子供っぽいけど、好奇心旺盛でテクノロジーにも興味津々、喋りもピーターらしく軽快で、喋りすぎて敵であるファルコンに怒られるというのもキュート。トニー・スタークに会って舞い上がる一方、若さ故の理想も持つ。『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』を知ってるというのもポイント高い。あのメンツの中でスパイディが活躍するというのが予想以上に感激でしたね。あとメイおばさんがエロいです。

『インクレディブル・ハルク』に登場したロス将軍が国務長官になってますが、ハルクの名を口にするくらいしか繋がりはなかったですね。今後ハルクと再会したら何かあるんでしょうか。あと毎度お馴染みスタン・リーは最後の最後でフェデックス配達員として登場。ギャグまでかましてくれてお元気そうでなにより。


■物語の多重構造

原作コミックでは基本的に協定を巡る話に終始するんですが、本作はもっと複雑な構造を持ちます。ソコヴィア協定の賛否により分かれる序盤は同じですが、そこに調印会場爆破の罪を被せられたバッキーを救おうとするキャップたちとバッキーを引き渡せと迫るトニーたち、バッキーに復讐しようとするブラックパンサーとの三つ巴になります。そこからジモの企みを知ってこれを止めようとするキャップたちと、トニーにブラックパンサーを加えた者たちとの激突になり、トニーが再びキャップたちと共にジモを止めようとしてジモの策略にハマり、キャップ、バッキーvsトニーが勃発。

つまりソコヴィア協定の話とジモの計画の話は別物なんですね。ヒーローたちを管理しようとする協定と、ヒーローたちを決別させようとする計画がタイミング的に絡み、或いはそこにジモが合わせたのかもですが、それが相乗効果となりジモの言う「帝国の崩壊」を促す。驚くべきことにジモは計画から実行まで全て一人でやっており、その動機は家族を失った復讐というパーソナルなもの。要するに『ガメラ3』での前田愛です。ウィンター・ソルジャーズという強大な力でアベンジャーズに攻撃することもできたのに、あくまでヒーロー集団を内部崩壊させるため個人での戦いを見せる。力でねじ伏せるのではなくヒーローの存在自体を貶めようとするんですね。ダニエル・ブリュールと言えば『ラッシュ プライドと友情』のニキ・ラウダでしたが(そういやクリヘムとの再共演ならずは残念)、悲壮な決意と諦めの失意が素晴らしいジモ役で彼は新たな代表作を手に入れたと言えます。

ジモが仕掛けたのは言わば個人対組織の構図。これがチームであるアベンジャーズが個々の主義主張に囚われていく構図とも重なっていきます。イデオロギーの対立だったのが、ジモの策略により最終的には個人の思いの表出に繋がる。監視下におくべきか否かというヒーローの社会でのあり方の問題は結論が出ないまま、『アベンジャーズ』でまとまったアメリカの誇るヒーローチームは一旦解体され、ヴィランなき舞台で「何のために戦うのか」という命題にブチ当たる。ブラックパンサーにより傷を付けられたキャップの盾が打ち捨てられるのは、傷付いたアメリカの自由そのものです。


■キャップとトニー

キャップが元々属していたのは軍であり国ですが、それ以上に自らの信念に従うのがキャプテン・アメリカという人物です。前作では自らの言葉と行動で人々を動かし、今作でもワンダの過失に対し全ては救えない、少数の犠牲はやむを得ないとしながらその非は自分が被ろうとする。正しいと思うことに反すれば、例えそれがS.H.I.E.L.D.であろうがアベンジャーズであろうが戦う。戦うことで目的を実現しようとする、その意味では軍人らしいとも言えます。バッキーを救うのもウイーンでの犯人ではないと知ったから。もちろんバッキーが親友であるということは影響しているものの、根底ではあくまで個人ではなく正義のための行動です。

一方のトニーは、かつては兵器を売っていたことを省みて生き方を変えた男です。『アベンジャーズ』を教訓に宇宙侵略者から世界を救わんと『AoU』ではウルトロンを作り、そのせいで世界を滅ぼしかけた償いか基金を設立、ソコヴィアで失われた少年を思い帝国のあり方そのものを問い直す。その結果の協定への同意です。目的実現のためにフレキシブルに対応していく、エンジニアらしい立ち位置です。しかし『アイアンマン3』で全てのスーツを破壊して解放されたはずのトニーは、チームであることや地球を救うことなどいつのまにか背負うものがどんどん増えていき、個人としての動きが取れなくなっているかのよう。かつての軽口を叩く余裕がなかったり、ペッパーと距離を置いていることなどからもそれは感じられます。

しかしそんな二人が、終盤のシベリアでは完全にパーソナルな思いからぶつかることになります。一方は友を守るため、もう一方は母の仇を取るため。ここに至って戦う理由は極めて私的なものとなり、キャプテン・アメリカ対アイアンマンは、スティーブ・ロジャース対トニー・スタークの戦いへと変貌します。そこにいるのはヒーローでも何でもない、ただ大切な人のために戦う二人の男。ジモはスーパーヒーローを自分と同じ地平にまで引きずりおろすのです。


■キャプテン・アメリカという男

トニーがキャップに対し「その白い歯にパンチをブチ込みたくなる」と言うのはブレないキャップへの信頼の裏返しでもあるので、「君が必要だ」と言ったのは本心でしょう。だから協定のサインを蹴って犯罪者と逃亡したキャップの行為は、空港でキャップの話に耳を傾ける余裕が全くないことからも伺えるように、トニーには裏切り行為だと写ったことでしょう。そんなトニーに、キャップはラストの手紙で「共に戦う仲間たちに裏切られたことは一度もない」と述べます。アベンジャーズというホームから追われ、それでも自分の信じる道を曲げようとはせず「助けが必要なら呼んでくれ」と結ぶ。トニーもキャップが何も変わっていないことが理解できたからこそ、最後にうっすらと笑みを浮かべるのでしょう。そしてきっと「パンチをブチ込みたくなる」気持ちも変わらず持ち続けるのです。

キャップは一度は失ったと思われたペギーとバッキーに再会しました。しかしペギーが亡くなり、バッキーが眠りについて、かつてのキャップを知る者は再びいなくなります。でも氷から目覚めた直後とはもう違うのです。トニーと共にただの男に引きずりおろされながらそこからまた立ち上がり、「仲間を信じる」と言い、盾がなくとも前に進もうとする。スーパーヒーローであろうが、ただのスティーブ・ロジャーズであろうが、結局キャップはいつだってキャップなのです。だから本作は間違いなく『キャプテン・アメリカ』を冠する物語であるのです。


■そしてフェイズ3へ

本作はMCUの「フェイズ3」第一作に位置付けられています。いきなりバラバラになったヒーローたちですが、それにより「何のために戦うのか」ということをもう一度考え直すことになりました。だから出発点としては実に理に適っていると言えます。そしてそれを裏付けるように、新たに登場したヒーローたちが新鮮な風を吹き込んでくれます。

父を殺され復讐の黒豹と化したブラックパンサーことティ・チャラは、最後にヒーローの象徴であるマスクを地面に置き、父の仇に対して復讐ではなく法による裁きを選びます。スパイディは「力を持っているのに何もできなかったら自分のせいだと思う」と言い、エンドロール後には再び帰ってくることを約束してくれます。このポテンシャル満載の二人が加わったというだけでますます今後の期待が高まりますよ。加えて本作では登場しなかった「二つの核弾頭」ことソーとハルクがいます。さらにはカンバーバッチ主演による『ドクター・ストレンジ』も待機中。そして銀河の守護者『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の続編だってあるぜ!こいつら全員が一堂に会することを想像するだけで興奮で失神しそうです。そしてその「アッセンブル」の掛け声をかけるのはキャップであってほしい!今後もMCUには翻弄され続けそうです。

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時代とともに技術は発展し経済社会は変化します。ローマ帝国の経済社会システムも持続可能な時期を越えれば破綻する時に至るのが当然でしょう。そうであれば、フンの侵略がきっかけにならなくても、早晩、崩壊するタイミングにあったということです。
崩壊するタイミングだった dot 哲学はなぜ間違うのかdot 2016.05.13 19:25
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