2016
02.28

闇に巣食う亡霊の正体。『SHERLOCK シャーロック 忌まわしき花嫁』感想。

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Sherlock: The Abominable Bride / 2015年 イギリス / 監督:ダグラス・マッキノン

あらすじ
まさにスペシャル版。



名探偵シャーロック・ホームズとジョン・ワトソンの活躍を、舞台を現代に置き換えて描く英BBCドラマ『SHERLOCK シャーロック』、その特別編。原作同様1895年のビクトリア朝ロンドンに舞台を戻し、死んだはずの花嫁が現れる謎に迫る。主演はシリーズ同様ベネディクト・カンバーバッチ、マーティン・フリーマン。

『SHERLOCK シャーロック』はシャーロック・ホームズを現代で活躍させるという人気ドラマ。1話90分ほどで各シーズン3話、現在シーズン3まであります。ネットやスマホを駆使した捜査や、メールの文面を画面に流したり推理の過程を映像化したりと画期的な画作りは、後続の多くの作品に影響を与えていることでしょう。原作を上手く組み合わせてアップデートしたミステリーとしての完成度、シャーロックとジョンのキャラクター、二人が難事件に挑む際の活劇と、実に面白い。そして本作はキャストはそのままに舞台を原作と同じビクトリア朝期に移して描くというスペシャル版です。

これはドラマのファンなら期待を裏切らない面白さ。原作同様、シャーロックもジョンも互いを名字で呼び合うという、ある意味馴染みのシャーロック・ホームズですが、事件説明や推理過程などで見せた画作りは、メールを電報に、車を馬車に変えたりしつつも見事に継承。時代を反映した美術や、ゴシックホラーな演出も楽しいです。オールバックにしたシャーロックや、シーズン3で散々バカにされてたヒゲジョンなど「このメンバーで昔のホームズ観たいなー」という妄想に全て応えてくれます。レストレードのもみあげが迫力だったり、あとマイクロフトが凄いことになってたり。事件の真相も時代を反映させていて唸ります。

ただし、本作はイギリスではあくまでドラマ版のスペシャルとしてテレビ放送されたものを、日本では特別に劇場公開されたもの。本作で初めて『SHERLOCK』観てからドラマ版を遡ろうとしても、過去シーズンのネタバレがあったり、構成の妙が楽しめなかったりするので、できればドラマ版は一通り観てからの鑑賞をオススメします。逆にドラマ版のファンであればこれ以上ないご褒美になること請け合い。本編前には脚本家による舞台裏の解説、本編後にはキャストやスタッフへのインタビューといった特典映像まで付いてます。

↓以下、ネタバレ含む。








最初にシャーロックとジョンの、というかホームズとワトソンの出会いからしっかり始まるのがいいですね。シリーズでは半ばギャグ扱いだった鹿撃ち帽にインバネスコートのホームズ、ヒゲのワトソンもしっかり最初から登場。美術や小道具、ゴシック調の風景までキッチリ作り込んできて気合いが感じられます。でもお馴染みのオープニングテーマが流れるところで「ああ『SHERLOCK』の一部だ」という安心感もありますね。ドラマ版のメンバーも次々出てきて、この時代ではどんな感じなのかなー?という楽しみ方も出来ちゃいます。ハドソン夫人はそのまんまな感じですが、モリーがなぜか男装していたり、マイクロフトが巨漢になってたり(個人的にはマイクロフトは太めのイメージでしたがそれを凌駕する巨体)。あとシャーロックとジョンが互いを「ホームズ」「ワトソン」とファミリーネームで呼び合うのには懐かしさと新鮮さを同時に味わいます。

リコレッティ夫人の事件の元ネタは、原作の「マスグレーヴ家の儀式」に名前の出る「内反足のリコレッティとその忌まわしい妻の記録」のようですが、「語られざる事件」と言われているので詳細は不明(というかよく覚えてないです)。「オレンジの種五つ」も軽く混ざってますがこれはミスリードってことでしょうね。事件はKKKの仕業ではなく、夫に家政婦扱いされる妻たち、ひいては参政権さえない女性たちの悲哀が要因だったわけです。モリーが男装していたのも男社会で生きていくため。ちょっと推理の飛躍を感じなくもないですが、スピーディに見せられるのでそれほど引っかからず観てしまいました。

しかし本編の謎解きも面白いものの、突如現代シーンが登場したときのインパクトはそれ以上。過去を舞台にしたifの物語だと完全に思い込んでいただけに、まさかシーズン3最終話から直接続く話だったとは思いもせず、ブッ飛びましたよ。しかもシャーロックの抱える心の問題をライヘンバッハの滝に見立て、高機能社会不適合者という開き直り、モリアーティに感じる微かなシンパシィなどから、ジョンが救い出してくれるという構成に繋げるとは。シーズン3最終話で別れを上手く言葉にできない二人に寂しさがあったので、シャーロックの精神の奥底で推理ゲームに絡ませながらジョンの重要性を見せ、改めてシャーロックとジョンの関係性を描いて見せる。遥か過去の花嫁の事件、その亡霊の正体を暴きつつ、シャーロックの心の闇に巣食う亡霊をも退治するという二重の仕掛けというわけです。

言ってしまえば結局シャーロックとジョン二人のラブラブ強化エピソードだったわけですが……さらにはシーズン4への布石にまでなっているという、まさにドラマ版のスペシャルだったわけですね。こんなん観せられたら新シーズンへの期待が否が応でも高まりますよ。早くシーズン4をくれ、早く……!

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