2016
02.27

東西を繋ぐ熱き道。『ドラゴン・ブレイド』感想。

dragon_blade
天将雄師 Dragon Blade / 2014年 中国・香港 / 監督:ダニエル・リー

あらすじ
友情、建築、勝利!



前漢時代、シルクロードの西域警備隊司令官フォ・アンはいわれのない冤罪で部下と共に西域辺境へと送られる。そこにローマ帝国の将軍ルシウスの部隊が襲い来るが、追われる身だった彼らをフォ・アンは砦に迎え入れる。国を超えて友情を深め合うフォ・アンとルシウスだったが、そこへ侵略者ティベリウス率いるローマの大軍勢が攻め込んでくる……。史実にインスパイアされたジャッキー・チェン主演の歴史アクション。

すんげえ面白いです!近年のジャッキー映画のなかでは群を抜いてる、と言っていいでしょう。主人公フォ・アンは多様な部族が入り乱れるシルクロードの警備隊で、部族間でいさかいがあると止めに入り「みんな仲良くしようぜ」と言うような、いかにもジャッキーらしい清廉潔白なキャラですが、これが物語にいい具合にハマってるんですよ。フォ・アンは密輸犯の濡れ衣を着せられ辺境の関へ送られてしまいますが、ここに攻めてくるのがローマの将軍ルシウスで、彼の登場からは抜群に面白い。特に中盤で異なる部族が協力していく過程には泣き笑いが止まらず。最高すぎます。そしてその中盤の描き込みが効いての、後半一転しての一大戦闘シーンに感じる熱さと悲しさ。少人数で大部隊に立ち向かう工夫を凝らした戦術の数々や様々な陣形も面白い。物語も映像もアクションも凄いし、まさかここまで泣かされるとは思いませんでしたよ。

ジャッキーは『ライジング・ドラゴン』でのアクション引退宣言は何だったのかというくらい暴れてくれます。小手を使ったり紐を付けた剣を使ったりの剣劇アクションに騎馬シーンもイイ。特に小型の盾として使う小手がカッコいいです。最初こそジャッキー的なおっぱいハプニングなどありますが、笑いはあってもコミカルというよりはユーモアという感じ。ジャッキーが英語を話せるというのも役に立ってます。ルシウス役のジョン・キューザックもどこまで本人かは分かりませんが動く動く。ローマ兵がよく見せるショルダータックルがこれまたカッコいい。アクション監督もやっているジャッキーの力ですかね。そして強敵として現れるティベリウス役エイドリアン・ブロディなんて、何だあの強さも雰囲気も凄まじい覇王っぷりは!登場人物は多いですが、みんな印象深くて良いです。

時代劇としての美術も細かいところまでよく作ってるし、部族により異なる衣装のバラエティもシルクロードらしく豊か。色んな辻褄もちゃんと合わせるし、ここは一騎討ちしかないだろ!ってとこはちゃんとやってくれるし、痒いところに手が届いてるという感じが良いです。若干話が真っ直ぐすぎるきらいもありますが、笑って泣けて熱くなる、男の友情ドラマの王道な出来。ラストに日本限定というNG集まで付いているのも嬉しいです。

↓以下、ネタバレ含む。








中盤がとにかく最高。半年かかる修復作業を15日で仕上げろという無茶オーダーをクリアするローマの建築技術がバトルとは別の意味でカッコよくてですね、城壁にでかい石を運ぶのではなく鉄柵作って小石を詰めるというアイデアには「おお」と唸るし、指揮系統、役割分担もしっかりしてて組織立った活躍がイカします。対する警備隊はフォ・アンを中心とした個性派揃いで、個の奮闘という感じ。砦の責任者イエントウが最初威張り散らしてたのにいつの間にかフォ・アンの手下みたいになってるのが笑います。

警備隊の演武とそれに対抗して始まるローマ軍のデモンストレーションという張り合いには微笑みながらも熱くなるし、それを経て自然と始まるエキシビジョン・マッチでの、言葉が通じずとも相手に敬意を表する姿には思わずウルッときますよ。このあたりとても丁寧に描いているので、やがて部族を越えた一体感が出てくるところも自然だし、たまらなく熱いものがこみ上げます。部族ごとの旗を作るのは後半への布石としても上手い。陽気ながら屈しない心を歌う中国勢に続き、故郷を誇り憂うローマ兵たちが泣きながら歌うシーンではこちらも泣く。もう一連のシーンで泣きっぱなし。昨日の敵は今日の友をここまでストレートに描かれると却って新鮮。

後半は一転して戦闘と悲劇。あの可愛く健気なローマの弟くんがあんな最期を迎えるという悲壮感、そしてフォ・アンとの信頼関係を築いたルシウスを襲う惨劇。中盤での描き方が丁寧なだけに、仲間たちが次々と散っていくのが本当に悲しい。一方で階段の高低差を使うバトルや、ときに投石は弓矢より有効とか、盾と巨石で即席戦車を作るとか、工夫を凝らした戦術が色々あって高揚します。ティベリウス軍の陣形を駆使した侵攻や、落ちてきた相手を盾で囲って滅多刺しなど、手強さと容赦なさも際立ちますね。最後にフォ・アンに味方する軍がどんどん増えてくるのは若干都合の良い気もしますが、熱いからいいじゃないですか。

何といってもエイドリアン・ブロディの物悲しさと残忍さが同居したラスボス感が凄まじいので、ジャッキーと言えども敵わないかも、と思わせるのが緊張感を生みます。最後は陰謀がバレて周囲が誰も味方しないという悲しみ、それでいて「最後まで堂々と」をしっかり体現して死んでいくのは悪役として見事。ローマ兵たちが砦で歌っていたのと同じ歌を歌いながら死にゆくという最期には、権力に溺れたティベリウスの本心が垣間見えてせつなさが募ります。ティベリウスとルシウスとフォ・アンの三角関係まで入れてくるとは思わなかったですが。

なぜフォ・アンが濡れ衣を着せられたのかという前半で放置していた謎もインの陰謀だったということが明かされるし、ムーンちゃんは尻を出して終わりかと思ったら後半強力な助っ人として現れるし、もう助けられない火の中のルシウスを死なせてあげるし(喉を射るのは苦しくないか?とは思うけど)、各部族が参戦時にそれぞれ伝統の楽器を打ったり鳴らしたりなど、やって欲しいことを余さずやってくれるので非常に満足度が高いです。捻りがないということではなく期待に応えてくれる。最後はあれだけの集団戦になるので、フォ・アンとティベリウスの戦いは見れないのだろうか……と思わせておいての一騎討ちもそうですね。しかも「ローマ人同士の戦い」という理由もちゃんと付けるので不自然さは軽減、さらに群像劇の様相もあった物語がちゃんと「ジャッキー映画」として収束しています。

青臭いところ、ベタなところはありますが、それらはむしろ王道と取るべきところでしょう。香港映画にしては全体的に強引さやわざとらしさが薄いのも良いです。最初は埃を被っていたフォ・アンの恩人である将軍の鎧がラストでピカピカになり、中国勢とローマ勢が新たな警備隊として手を取り合う。熱いです。

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1034-4a686d4e
トラックバック
back-to-top