2016
02.15

途切れない怪異の連鎖。『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』感想。

zane
2016年 日本 / 監督:中村義洋

あらすじ
いわゆる、ヤバい話。



小説家の「私」に届いた手紙には、読者の久保さんが「住んでいる部屋で奇妙な音がする」という体験が書かれていた。好奇心からその現象の調査を始めた「私」と久保さんは、その場所に過去様々な事実があったことを突き止める。しかし怪異はそこで終わらなかった……。小野不由美による第26回山本周五郎賞受賞のホラー小説の映画化。

原作がほぼ調査と伝聞で語られる形式だからというのもあるんでしょうが、ホラー映画としては結構地味なほうです。急な驚かしとか主人公たちが恐怖の現場に叩き込まれる、みたいなのはあまりない。でもこの話の怖さは怪異が連鎖する、というところにあり、底知れぬ感染力を感じる点なのです。だから少し次元が違う。まるで時間と空間がどんどん歪み、それが変なところでくっつくような、何とも言えない奇妙な感覚です。『リング』『呪怨』以来の日本的恐怖の連鎖を上手くまとめて、かつアップデートされています。

久保さん役を原作より若くすることで橋本愛を起用し、デザイン科の学生として歴史を調べる体で調査する、というのは上手い改変ですね。ラフな部屋着姿も見れますからね!でも個人的にはメガネ姿が妙にツボな竹内結子を配してるのが良いです。ちょっと枯れた感じの色気と言うかね!あとヤバい話に嬉々として首を突っ込む佐々木蔵之介が面白いです。竹内結子の役名は原作でも明確じゃないけど実質作者の小野不由美と思われるので、つまりその夫役の滝藤賢一は綾辻行人ですね。なんかイメージ違うな……佐々木蔵之介は役名変わってたけど平山夢明ですね。そんな実在の作家たちが出てくるという設定のために半ドキュメンタリーな印象もあり、それもまた身近な話に感じられるという仕掛けなのでしょう。

ここまで描かれたら他人事とは思えなくなる、というのが凄み。後からじわじわくる恐怖に、自分の部屋もひょっとして…と思わせるのが上手い。この途切れない連鎖は、最近では『イット・フォローズ』にも近いものがありますが、こちらは謎を解いていくミステリーとしての側面もあります。劇中の台詞「いわゆるヤバい話」は本当にヤバいのだ。ヒィィ!(悲鳴)

↓以下、ネタバレ含む。








主要人物たちがリアルタイムで経験するわけではないので、最初は一種の再現ドラマを観てるような感覚です。全ては推測、しかし謎を追ううちに判明する奇妙な符合により、ちょっとした違和感が徐々に恐怖へと膨らみ、似たような怪異が根っこで繋がることで無限の連鎖を思わせます。映像化されたことで恐怖場面がしっかり映し出されるので、原作よりホラー度はアップしてると言えるでしょうか。ちなみに原作では奥谷マンションの隣の奥谷団地にも言及があったんだけど、本作ではカットされてるので工場跡地のヤバい話は出ないですね。気になる人は原作を読みましょう。

久保さんの前住者が大家の伊藤さんの夢に繰り返し現れるくだりはダイレクトにビビります。あとから繋がることで怖さとなる場面も秀逸で、座敷牢の男が床下にいる画が、床下の猫に話しかけると言われた老婆に繋がっていくとか、ゴミ屋敷の住人が床下までゴミを突っ込んでいたのが空間を埋めるためだという推測など、イヤですねえ。「燃やせー殺せー」の言葉の意味が炭鉱に閉じ込められた人々の怨念だと分かるのもイヤです。そもそも場所が全然違うのに、「穢れ」を引き継いでいくことで全く関係ない土地に怪異が引き継がれてしまい、さらに新しい怪異が発生するって、もうどうしたらいいのという感じです。「個人の怨念」を越えた概念なんですよ。これが怖い。佐々木蔵之介のように「繋がりますねえ!」と嬉しがってる場合じゃないんですよ(笑っちゃったけど)。『呪怨』もそういった面がありますが、さらに拡大して適用されていくわけです。

それまで積み重ねた怪異の連鎖を、ラストに一気に畳み掛けてくるのは凄いです。ここは映像的にもピークですが、単に恐怖映像だという以上のものがあって、よくよく考えてみるともっと怖いんですよ。穢れのある場所に住んでいたわけではない「私」の元にかかってくる電話。久保さんの元お隣さんの一家心中、これは引っ越した後の話。高野母の姿をブランコと称していた少女の誕生日ビデオに入る赤ん坊の鳴き声、これも引っ越し先。高野母の首吊りは岡谷マンションに出てたはずなのに、自殺した前住者の越した先のアパートに現れる。這ってくる影は奥山屋敷の建材から感染していたのに、所縁のない編集者へ。この「語るだけ、聞くだけ」でも祟られるという感染力が凄まじい(パソコン画面にその文章を出すのはアレですが)。もはや奥山屋敷が発端なのかさえ怪しく思えますが、そうなるといくら遡ってもきりがない、しかも穢れはこの先も際限なく拡がっていくのです。

これを断ち切るには、顔が歪む姫の絵を見たことがないと嘘をついた住職のように、誰かが自分のところで止めるしかない。しかしそのために自分が死んだら、果たして怪異を起こさないと言いきれるだろうか?この「論理的に逃れようがない」というのが最大の恐怖です。あなたの家は、大丈夫ですか?(ヒィィ!)

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