2016
02.06

最強バカップルがゆく!『エージェント・ウルトラ』感想。

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American Ultra / 2015年 アメリカ / 監督:ニマ・ヌリザデ

あらすじ
サルはヤバイ。



コンビニでバイトするダメ男マイク・ハウエルは、恋人フィービーと平穏に暮らしつつも色々とうまくいかない日々。そんなある日、バイト中に謎の言葉を聞かされたマイクは、突然スプーン1本で暴漢二人を倒してしまうという謎の力が覚醒。次々に命を狙われることに。ジェシー・アイゼンバーグ主演のスパイ的アクション。

記憶はないが実は凄腕だった、という設定としては既に『ボーン・アイデンティティ』などのジェイソン・ボーンシリーズがあるのでその点での斬新さは薄いですが、突如覚醒するのがヘタレ文系男子というのがギャップがあって面白いところ。とは言え、これが意外と無双というほどではなく、痛快さもそこまでではないです。ヘタレならではのボンクラ度もありますが思ったほど高くはない。意外とシリアスに展開し、血みどろの闘争となります。脚本が『クロニクル』のマックス・ランディスと聞いてちょっと納得。そして核となるのは実はマイクとフィービーのラブストーリーなんですね。

何と言っても主人公マイクを演じるジェシー・アイゼンバーグです。ドラッグ好き、猿が主人公のSF的な物語を考えてイラストを描くのが趣味、街から出て旅行しようとすると腹が下る。一言で言えばヘボい、という青年マイク役がバッチリです。内股で柱の陰に隠れる姿が絶妙。またフィービー役のクリステン・スチュワートが顔の傷も痛々しげながら体張ったり、マイクに対する感情の発露が上手かったりと意外に良いんですよ。女性捜査官ラセターを演じるコニー・ブリットンがちょっとジョエル・エドガートンに似てるなあとか、ビル・プルマンが随分老けてて最初誰だか分からなかったとかありますが、サルに大騒ぎのジョン・レグイザモは面白いし、ウォルトン・ゴギンズの頭おかしいぶりもナイス。

微妙にポップさがマッチしてないとか、微妙にテンポが悪いとか、微妙に雑、みたいなのが多くて色々と惜しいですが、『イコライザー』に続く「ホームセンターは武器の宝庫」は最高。CIAが実際に行っていたとされる極秘マインドコントロール・プログラム「MKウルトラ」を題材に、どん詰まりから脱しようとする青春ラブストーリーとなっています。

↓以下、ネタバレ含む。








覚醒したコンビニバイトはCIAの極秘計画により育てられたエージェントだった、というわけですが、このCIAの計画の真偽のほどはともかく、その設定があまり上手く活かされてる印象がないです。マイクを始末しようとするイェーツはクズすぎるうえに予算削減のためとか言って結局とんでもない被害出してるし、マイクを狙うエージェントたち「タフガイ」はじゃあ何なんだという話だし、CIAがあんなあからさまに私刑みたいなことするの?とも思うし。わりと序盤でCIAが絡んでいることを描くのでなぜマイクに記憶がないかというサスペンスが盛り上がらないし、マイクとCIAのシーンの切り替えがあまりスマートでもない。途中からフィービーの言動が一般人らしくないことに「あれ?」と気付くので、彼女の正体にそれほど意外性もない。結構マイクが死にかけたりもするので、アクションも痛快さに振り切れているわけでもない。ポップだったりサイケだったりという映像もそこまで統一感がない。どの方向にも中途半端な感じが否めません。もっと思い切りコメディ寄りでもよかったかなあと思います。

とは言えマイクのキャラはなかなか面白いです。スプーンやチリトリ、フライパン、煙幕張ってのハンマー攻撃などのそこらの生活用品を武器に変えるくだりは愉快だし、「なぜこんな知識があるんだ」と言って披露するのが戦車のうんちくだったり、覚醒後も記憶は戻らず性格も変わらないので結構マヌケだったり。マイクの過去についてもっと掘り下げてもよさそうなものですが、それは敢えてしてないんだろうなと思うのはフィービーとの関係がメインだからです。序盤でマイクが自分の人生で唯一の幸せはフィービーと出会ったことだ、と言ってプロポーズしようとするも、その後にフィービーが自分の見張り役であることを知って一旦距離を置き、フィービーが任務を放棄してマイクのそばにいようとしたことを知り、彼女への思いが偽の記憶ではないと気付いて取り返そうとする。だらだらイチャイチャしていた関係が一旦仕切り直されることで互いの愛情を深めるという、むしろラブストーリーの王道の一つです。ラストに警察に囲まれ、互いにボロボロの姿のままプロポーズ、のシーンはちょっとグッときましたよ。二人の足を並べると一人の顔になるタトゥー、というのもバカップルぽくて良いです。

「タフガイ」の一人ラファが「操る者はいない」と言うマイクに対し「羨ましいな」と言って姿を消すのもね、散々ブチ殺そうと狙ってきたのにいいの?その前に危険人物なんじゃないの?とは思うものの、なんか憎めないですね。ちょっと『ユニバーサル・ソルジャー』っぽいからですかね。原題が『American Ultra』というわりにそこまでアメリカならではの、という感じでもなかったですが、田舎町でくすぶる若者だって必死に生きてるんだぜ、という雰囲気はあったかも。結果としてより大きな世界へ羽ばたくわけですしね。ラストに「諜報員マイク」と呼び掛けられるところでエンドクレジット行ってたら切れ味もよかったなあと思うんですけど、そうするとサルのアポロのアニメ出せないかあ。マイクが描いてた絵柄とは全然違うような気もしますが。結局政府の仕事に戻るのかと思わなくもないですが、そこはラセターからの説得とかあったんでしょう。ともかく愛する女性との結婚ややりがいのある仕事も手に入れて順風満帆。とんだリア充映画です。

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