2016
01.27

はじめまして→ただいま。『パディントン』感想。

paddington
Paddington / 2015年 イギリス / 監督:ポール・キング

あらすじ
マーマレードは栄養満点。



赤い帽子をかぶった小さな熊が、ペルーのジャングルからロンドンへやってきた。たまたま出会ったブラウンさん一家に「パディントン」と名付けられ、ブラウン家の屋根裏に泊めてもらうことになったパディントンは、かつて叔父と叔母が交流した探検家を探し始めるが……。世界中で愛されるイギリスの児童文学「パディントン」の実写映画化。

とにかく熊のパディントンが可愛いです。もちろんCGなんですが、見た目はリアルで毛並みもつやつや、そのなかで目だけが心情を語るようにくるくる動きます。このパディントンが引き起こすドタバタ大騒動が楽しい。紳士すぎる熊、という売り文句ですが、紳士と言うよりは行儀よくしようと気を付けながらも粗相してしまう子供のよう。でもとてもいい子です。声を演じるのは最近『007 スペクター』『白鯨との闘い』と出番の多いベン・ウィショーですが、この声がまたとても良くて、特に「お↑お↓」の言い方が好き。身長は107センチです(なんで分かったんだろう?)。

随所に入る細かいギャグや映画パロディも楽しいです。ニコール・キッドマンがトム・クルーズの元妻であることを思うと感慨深いシーンも。そのニコールもパディントンを剥製にしようと付け狙う悪役ながらクール美女っぷりを活かしてていい感じ。 歯ブラシのエグい使い方とか、帽子の中に隠したサンドイッチの使い方とか、ドールハウスのような家の断面など、演出も映像も色々と面白い。ブラウン家の内装などのポップでレトロな美術も心地よくて、特に博物館のシュートボックスを使うシーンは良いなあ、フランスパンが。難を言えばロンドンの街が雨か雪のシーンが多く、観ててちょっと寒いということでしょうか。熊は大丈夫、毛皮があるから。

全体的に細かいところまで丁寧に作られてる感のあるのが好ましいです。喋る熊は珍しいけど騒ぐほどでもないという半ファンタジーの世界、この線引きが絶妙だし、テンポもすこぶる良いですね。基本はドタバタなコメディですがどこか上品だし、動きとしてのアクションも痛快。ハートウォームな家族の物語であり、人と違うということを肯定する優しさに満ちた話でもあります。

↓以下、ネタバレ含む。








パディントンって駅名からの命名なんですねえ。原作はちゃんと読んだことないんですが、イラストを見る限りイメージを損なわないルックになっているようです。その上で、毛並みのよさや目が語る表情などに実写としてのバランスの良さがあります。シャワーで濡れたぺったり毛並みから乾かした後のボンバー毛並みまで、もふもふヘアーの描写はさすがに手が込んでます。もらったダッフルコートの木のボタンに喜ぶというようなちょっとした人間的な言動がまた可愛らしい。逆に熊としての動き、森の生活の習性を活かした手摺の滑り降りなども盛り込まれていますね。家具などのブチ壊し方もワイルドですけど。食べるときはかなり野生に戻るのも個人的にはポイント高いです。あと本名がどうしても聞き取れない(ムリ)。サンドイッチを帽子にしまうのは「帽子をかぶった熊」ならでは。ポケットじゃダメなんですよ、帽子の中なのがイイのですよ。まあ雨でふやけてそうですが……。

ブラウン家は正直普通の中流家庭ですが、この手の家族ものではどうしても子供たちがメインになりがちなところを、大人の方がイケてるというのが良いんですよ。特に父親。最初はトラブルの元であるパディントンにも冷たい、地図を防水パックするようなリスク管理の鬼ですが、難易度の高いミッションに挑むところから一気に変わってきます。妻子と共に新たな家族であるパディントンを守るためなら女装も辞さないその行動力!父親の権威が低い昨今、責任感と愛情を持って家族を守る姿にはシビれます。妻が描くイラストの顔にピタリとハマるヒーローとなるところでは「やったぜ父ちゃん!」と思わずにいられません。そんな父ちゃんを始め、優しさに溢れた母親、恋する姉、発想力の弟というブラウン家の面々が徐々に好感度アップしていくのが心地よいです。

パディントンは遥かペルーからロンドンへやって来るわけですが、カルチャーギャップに出会い、人の優しさや悪意に触れ、それでも腰を据えて生きて行こうと努力します。そこには海外から移民してきた者の暗喩も多少はあるのでしょう。なかなか馴染めない、良かれと思って裏目に出る、好奇の目で見られる。そんな境遇を乗り越えるのは、郷に入っては郷に従いながらそれでも自分を失わないナチュラルな気持ち。常に持ち歩くマーマレードのサンドイッチはその象徴にも思えます。そしてこの気持ちの持ち方により、アウェイをホームに変える話でもあるんですね。さらには「人と違ってもいいんだ」というメッセージも込められています。

ニコール演じるミリセントは、父が熊を守るため常人なら受ける栄誉を捨てたことへの反動で、剥製を作るのが生き甲斐となってしまいます。友の信頼と己の矜持のためにうわべの栄誉を蹴ったミリセントの父もまた人と違うことを畏れない人物だったわけですが、逆に彼女はうわべだけ繕って中身のない剥製に魅入られてしまうんですね。そのうわべにまんまと騙されるカレーさんはちょっと気の毒。結局彼女は捕まって奉仕活動をするハメになりましたが、彼女自身は変わっていなさそうなので、続編はいくらでも可能でしょうね。

……と思ったら既に続編制作が決定したようです。マーマレードでも作って待ちましょう。まずはオレンジを育てるところからだ!
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