2015
12.24

受け渡された希望。『スター・ウォーズ フォースの覚醒』感想(その1)。

star_wars_ep7_1
Star Wars: The Force Awakens / 2015年 アメリカ / 監督:J.J.エイブラムス

あらすじ
遠い昔、はるかかなたの銀河系で……(第7章)



銀河を舞台に壮大な世界観を作り上げ、光と闇の戦いを描いた一大サーガ『スター・ウォーズ』。その最終作となっていた『エピソード3 シスの復讐』から10年ぶり、物語が進むという点では『エピソード6 ジェダイの帰還』以来32年ぶりとなる『スター・ウォーズ』第7章。監督はJ.J.エイブラムス。

『スター・ウォーズ』はルーク・スカイウォーカーを主人公とした「エピソード4、5、6」、時系列としてはその前となるアナキン・スカイウォーカーを主人公とした「エピソード1、2、3」の6作が作られ、絶大な知名度と共にコアなファンを生み出してきた世界的な人気作。元々は全9部作という話もありましたが、生みの親であるジョージ・ルーカスが「もう作らない」と言ったため、サーガはここで終わるはずでした。しかし制作元のルーカスフィルムがディズニーに買収されたことで事情は一変、『スター・ウォーズ』とは何かとライバル視される『スター・トレック』リブートを監督したJ・J・エイブラムスが監督に就任するという意表を突いた人選で奇跡の新作実現。僕も『スター・ウォーズ』は大好きなので期待に胸が膨らみまくってましたよ。

さて、果たしてルーカスの手を離れたスター・ウォーズはどう変わったのか、あるいは変わらなかったのか。JJが監督ならそつなくまとめるだろうから、つまらないということはないとは踏んでましたが……これが予想をはるかに超える出来の良さ。シリーズで見覚えのある馴染み深い画と、今までのシリーズでは見たことのない画とが混在する絶妙のバランス。緩急はあるのに、次々と展開して息つく暇がないドラマ展開。洗練された宇宙船同士のドッグファイト。そして最高に魅力的な新キャラたち。古参ファンは歓喜、新規入門者も興奮するに違いない「スター・ウォーズらしさ」が満載でした。予想もしない驚きの連続に何度「おおッ」と叫びそうになったことか。もちろんタイトルバーンの音楽ジャーン!から泣いてましたよ。

シリーズを貫いての構造や引き写し、対立する血脈と受け継がれる意思、早くも確固たる世界観を築いた新キャラたち、細かい演出や設定に至るまで、観点は山ほどあります。感情を揺さぶるドラマとしても、新たに始まる神話としても申し分なし。何より「ああ、いまスター・ウォーズを観てるんだなあ」という世界への没入感が素晴らしい。「おれたちの観たかったスター・ウォーズ」の一歩先を行ってくれた、と言っていいでしょう。ノスタルジーに固執せず、お約束に終始するだけでもなく、物語を先へ進める選択をした、そうすることで今までとは別の「新たなる希望」が生まれた。これには感涙です。

ちなみに過去作観てなくても楽しめるとは思いますが、最低でもエピソード4~6は観ておくと感動は段違いです。

↓以下、ネタバレ含む。








■過去との繋がり

お馴染みオープニングのスクロールあらすじでの衝撃の1行目「ルーク・スカイウォーカーが消えた」。いきなりこんなサスペンスがくるとは!と同時に、最も馴染み深い主人公であるルークの名が出てくる感激というのもあって、この時点で既に興奮度マックスです。帝国に勝利したはずの反乱軍の前に新たな脅威ファーストオーダーが現れ、戦いは相変わらず続いているわけですね。ここで共和国と元帝国との和解の話とか、いかにしてファーストオーダーが発生したか、それに対する体制などの政治的、あるいは(エピソード1のような)経済的な話などは、本作では一切出てきません。暗黒面を引き継いだ悪い奴らがいる、そしてそれに対抗するレジスタンスという勢力がいるという、全体の構図としては実にシンプルな面だけを表に出しています。個々の人物間の関係などはドラマ部分として扱い、背景を二極化することで分かりやすさを優先してますね。これはジェダイv.s.帝国という図式に倣っているように思えます。

レイ、フィン、カイロ・レンといった新しい主要人物があまり有名ではない役者であるというのもEP4時のルーク、ハン・ソロ、レイアに通じるものがあるし、彼らが出会い成り行きで行動を共にしていくというのも被ります。このように過去作、特にEP4~6を意識した点は多いですね。例えばタトゥイーンのような砂漠の星ジャクー、エンドアのような緑の星タコダナ、ホスのような氷雪の星スターキラーと、舞台となる惑星も過去作を彷彿とさせます。また見覚えのある宇宙人が姿を見せたり、EP4登場の酒場のようなシーンが出たり、それ以外にも多種多様の細かい点にも気が行き届いており、EP6から連綿と続いている世界であるというのが否が応でも伝わってきます。さすが『スター・トレック』を撮りながら自分は『スター・ウォーズ』ファンだと公言していたJJ、オールドファンのツボをこれでもかと刺激してきます。

もちろん過去作の主要キャラの登場は最もテンションが上がるところ。相変わらずポンコツ呼ばわりされる伝説の船、ミレニアム・ファルコン号が映ったときには「おおおお」って叫びそうになるし、そのファルコンにハン・ソロとチューイが姿を現したときには劇場で拍手が起こったほどです。しかし銀河を救ったはずの英雄がなぜまた運び屋稼業に?というように、それぞれの登場シーンにはテンション爆上がりではあるものの、皆少しずつ変化も見られるんですね。老いてますます美しくなったレイアは姫から将軍へと転身しているし、みんな大好きR2-D2はスリープしたまま動かない。場の空気の読めなさは相変わらずのC-3POも腕が赤くなっている(これは多分どうでもいい)。何より姿を消したルークを探すことが、物語の中心にあり続けます。

さらに大きな違いは、フォースやジェダイといったスター・ウォーズ世界観の根幹を成す存在が既に過去の物であり、なんなら伝説扱いとなっているということです。過去作から続く世界であるというのを端々まで出しておきながらも、ジェダイはルーク以外滅び、フォースのバランスは崩れている。つまりこの「世界観の根幹を成す存在」であるフォースにいかにバランスをもたらすのか、というのが大きな目的になってくるのでしょう。過去作のなぞり方はいっそセルフ・オマージュと言ってもいいくらいで、それによりシリーズファンを喜ばせながらも、しかしその中にしっかりと「変化」を入れ込んできているんですね。その変化の隙間に入り込み、やがて物語を推進していくのは全て新しい要素、そして新しい人物たちなのです。


■未来への布石

その新しい人物の中心こそが、本作の主人公と言っていいでしょう、レイです。とにかくこのレイが素晴らしくて、強気&デキる子ぶり、一人廃品集めで暮らすタフさ、トラブルにも迅速対応と、あのソロとチューイが揃って気に入ってしまうのも納得の有能な新人です。歯を剥き出してブラスター撃つ表情は控えめに言って野性的ですが、それだけにルークやジェダイの話に目を輝かせるピュアさや、時折見せる笑顔が魅力的。演じるデイジー・リドリーは逞しさと美しさに気品まで感じさせて、よくぞこんな新人を見つけたと拍手喝采を送りたいです。

もう一人の中心人物であるフィンも、笑えるし熱いし空回りっぷりも面白いしで最高です。ジャクーでの虐殺に疑問を持ち、「正しいことだろ?」とポーを助け、アンカーの手下に襲われているレイを助けに入ろうとし、倒れた自分が手を差しのべられてるのに「大丈夫か?」と逆に聞く。早く逃げ出したいと言いながら周りを放っておけない好青年です。また「待ってる人がいる」と言うレイに「家族?彼氏?彼氏?」と彼氏かどうかを二回聞く(字幕だと一回だけど)。なんだこいつ可愛いな!演じるジョン・ボイエガは主演作『アタック・ザ・ブロック』ではまだ子供という感じでしたが、随分味のある演技をするようになりました。前半はこのフィンとレイのドタバタコンビがとにかく楽しいです。

そしてフィンに助けられるレジスタンスのエース・パイロット、ポー・ダメロン。演じるオスカー・アイザックは『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』でのボーッとした印象が強かったんですが、なんでしょうかこの頼れる兄貴感。カイロ・レンへのすっとぼけた対応や、タイ・ファイターの操縦でゴキゲンになったりとか、気持ちいいくらいのナイスガイ。出会ったばかりのフィンとはたちまちバディ感を出して息ピッタリだし、自分のジャケットをフィンが着ているのを見て「That's my jacket.」と言うのは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のマックスを思い出しますが、こちらは快くあげちゃう上に「似合ってるぞ」とか言うし。ブラックリーダーとしてXウイングを駆る姿もカッコいい。

そんなポーをはじめレイやフィンの前に立ちはだかるダークサイドの戦士カイロ・レン。十字型のライトセーバーを操り、ダース・ベイダーを敬愛して同じようにマスクを被り、ベイダーの焼け残ったヘルメット(頭骨入り)を崇める暗黒面の人物ながら、まだ発展途上の悪役というのが新鮮。光の誘惑を感じる、というのは今までになかった発想で面白いですね。暗黒面の暗さは精神的にくるもので、それ故に光を求めてしまうのか?その前にカイロ・レンのマスクには特に機能的な意味はないようで、レイにはあっけなく素顔を晒すし、モゴモゴして聞こえないとポーに言われるし、視界も悪そうだからメリットも薄いでしょう。ということは、つまり、カッコいいから着けてるだけか……?誰もが「中二か!」とツッコむところですが、言い換えれば若さ故の情熱でもあるため、癇癪を起こす青臭さなども相まってその行動にハラハラします。ソロとの関係性にも驚き。演じるアダム・ドライバーは長身の圧力も光と闇のあいだで揺れる繊細さも良いです。

これらの新キャラが皆ことごとく魅力的で、すぐ好きになっちゃう、あるいは凄く気になっちゃうというのが秀逸。キャラクターの重要性をとことん突き詰めてる感じがします。おっと、新キャラと言えば忘れちゃいけないBB-8!あの「登場した瞬間から愛されキャラ確定」度合いは、近年ではミニオンズ以来と言ってよいでしょう。BB-8は自分が可愛いと思われるの知ってるんじゃないか?首をかしげるポーズとか意識的にやってるんじゃないか?あざといんだよ!騙されないぞ!でも超可愛い!BB-8はマスコット的な可愛さだけでなく転がることによるスピード感が新しく、これにより同行者が「走る」ことができる、というのもアクションに大きな転換を与えています。球体の不安定さを素早くワイヤーを張ってカバーするのもニクいあんちくしょうです。


■再び、新たなる希望へ

それにしても今作のハン・ソロを演じるハリソン・フォードは新キャラに負けず本当に素晴らしい。斜に構えた物言いも無茶すぎる行動も確かにハン・ソロなんですよ。「おれたちのハン・ソロが帰って来た」感が半端ない。加えてレイアとの関係や息子を思うときの表情、あるいはファルコンの操縦席に入ったときの懐かしそうな顔など、年を経ての深みというのもしっかりあるのがまた嬉しい。それだけに終盤の展開はあまりにショッキングで、もう少しで叫んじゃうところでした。カイロ・レンの父親殺しは己の暗黒面の限界を越えるためであり、彼を指揮するスノーク(演じるはアンディ・サーキス!わかんねーよ)の思惑通りに動いてしまうわけです。エピソード5でベイダーがルークを取り込もうと対峙するシーンとは真逆です。

しかしこの父殺しの意味するところはそれだけではなく、スター・ウォーズを象徴する一人であるソロの退場は明確に過去シリーズと違う物語の始まりを示すものでもあります。父と向き合っているときのカイロ・レンの顔にはまだ太陽の青白い光が当たっていますが、太陽がエネルギーを失ったとき赤一色になり父を凶刃にかけます。ここで迷いのあったベン・ソロは完全にカイロ・レンとしての自己を確立します。一方でソロはレイとフィンの導き手でもあったわけですが、二人も自らライトセーバーを手に取り戦うことになる。ラストのカイロ・レンとの戦いにおいてこの対立構造はかつてのメンバーとは別次元へと移行し、光と闇の新たなスター・ウォーズへと姿を変えるのです。

また「フォースの覚醒」は暗黒面に目覚めたカイロ・レン以上にレイのことを表すタイトルでもあります。いきなり覚醒するのには、マズ・カナタ(演じるはルピタ・ニョンゴ!わかんねーよ)の店の地下での映像や声といった過去の何らかが関係しているのでしょうが、ソロの「真実だ」という言葉に強く興味を持ち、「フォースは誰にでもある」というマズの言葉によりフォースという存在を認識し、それをカイロ・レンが使う場面を目の当たりにしたことで現実感を伴ったということが大きい気がします。それはともかく、新たなフォースの担い手としてその力を発現させたレイが物語の中心となるのは必然であり、ソロが抜け、レイアもまた「May the force be with you.」の言葉と共にレイを送り出し、最後のジェダイであるルークに会ったところで幕を閉じる、これで完全にバトンを受け渡す段取りは整ったわけです。

懐かしさも過去作のなぞりも全ては過去作から新三部作へ移るのに必要な要素。ただしそれは成り代わるわけではなく、伝説の上にさらなる歴史を重ねていくのだ、という明確なビジョンあってのことだと思うのです。ファルコンのコクピットに座るレイに「さあ行こうか」と促すチューイおじさん、この新旧二人が並ぶシーンにそれが顕著に表れていて震えました。エピソード4でルークというヒーローの覚醒を描いたように、本作はレイという「新たなる希望」の誕生を描く物語でもあるのです。

 ※

さて、ここまで長々書いたものの、もっと言いたいことがまだ山ほどありますよ!ああ、こうなるような予感はした……まあ細かい点を語りたくなるのもまたスター・ウォーズの魅力の一つですからね。というわけで、次回に続く!

※続きはこちら
最高な点をひたすら上げていこう。『スター・ウォーズ フォースの覚醒』感想(その2)。

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1011-ce5d4223
トラックバック
back-to-top