2015
12.21

撃てよ走れよ乙女たち。『ガールズ&パンツァー 劇場版』感想。

girls_and_panzer
2015年 日本 / 監督:水島努

あらすじ
パンツァー・フォー!



大和撫子のたしなみとして華道や茶道と並び「戦車道」が存在する世界。第63回戦車道全国大会で西住みほを中心とした活躍で優勝を飾った大洗女子学園は、地元の大洗町でエキシビジョンマッチを行うことに。しかしその試合の後で新たな問題が発覚する……。テレビシリーズやOVAを経て遂に劇場版公開となった、少女x戦車アニメ。

実はテレビ版未見だったので(録画はしてたがHD容量足りなくて観ずに消してしまった)、今回劇場へ向かう電車の中で公式サイトの人物紹介だけはザッと見る、という程度で臨んだんですが、お、お、面白いよこれ!とにかく戦車戦の迫力が凄まじくてですね、あらゆる国の様々な戦車によるバラエティ豊かなアクション、砲撃音や走行音などのド派手な音響、アニメならではの大胆なカメラワークなどで圧倒されます。単に走ったり撃ったりするだけでなく、戦略と戦術を駆使してやり合う頭脳戦の趣も強く、それがドラマにも結び付いてくるため、時に泣かせ、大いに熱い。

後半の戦う原因にはちょっと無理がある気がしなくもないですが、日本やドイツ、ロシア、イタリアなど、ガールズたちの各国の性格を擬人化したような言動も面白いし、昨日の敵が今日の友となる青春ドラマとしても良いです。個性豊かな戦車と、それぞれのチームのカラーみたいなのも素敵。いわゆる萌え系キャラ全開の人物たちにファンシーなアイコンやキュートなチーム名、一方でガチすぎるミリタリー表現や舞台を有効的に使う怒濤の戦車アクションというギャップに戸惑いながらも引き込まれます。アヒルさんチームのバレー部いいな……(←女子バレー好き)。

恐ろしいほど大量の登場人物(最終的には60人強)が一気に出てきますが、そのキャラや関係性といったものは観てるうちに何となく分かるし、独自のルールや用語もおおよそは理解できる、というようにちゃんと分かるようには作られているので、あとは公式サイトの説明を読んで、冒頭に流れる約3分のあらすじ映像を合わせればテレビ版未見でも問題なしです。誰がお馴染みの顔で誰が劇場版の新キャラなのかは判別できないし(知波単はレギュラーかと思ってた)、何より全キャラ出演のお祭り感、みたいなのが分からないのは悔しいですが、近年では実写の戦車映画『フューリー』にもひけをとらない、どころかアニメだからこそできる表現に興奮しまくり。戦車は地上最強の乗り物、という言葉を痛感できます。

↓以下、ネタバレ含む。








なぜ実在の街である大洗が舞台なのか、学園を救ったはずなのにまた廃校の危機というのはどうなんだ、など引っ掛かる点はありますが、そこはテレビ版見てないので言及できないなあ。でも戦車道に関しては「ああ、そういうものなのね」で納得してしまえますね。戦車の内部は特殊なカーボン加工?がされてるから実弾撃たれても問題ないとか(普通は死ぬ)、戦車から半身出した状態で撃たれても吹っ飛ぶことはないとか(普通は死ぬ)、とにかく命に別状ないどころか怪我もしない(ただしメガネは割れる)というのが超安心。現実にはあり得ないですがこれが作品内のリアルであり、これによって余計なノイズは全て排除して戦車道だけを楽しむことができる、というのが潔いです。旗がスパッと立てばリタイアであるとか(あれは非常に分かりやすくて良いです)、戦車に建物を壊されると持ち主はむしろ喜ぶとか、一種のパラレルワールド内のルールも「そういうものなのね」で済むし、序盤から何度も言われる「パンツァー・フォー」という台詞も新キャラがその意味を聞くことで「戦車前進」であると分かるし、置いてきぼり感なく楽しめるのが心地良いです。

各国の擬人化も分かりやすさに繋がりますね。全員が大洗女子学園の制服着てるシーンではちょっと混乱しますが、それも圧倒的な戦力差を埋める熱い展開の一部であり、以降はちゃんと元の制服に戻るのでこれまた安心。制服なくて混乱と言えば入浴シーンもそうですが、これはもう裸と裸の付き合いという打ち解けて一体となったある種の打ち上げなので別によいのです(サービスシーンとも言う)。なんかね、平坦な道を戦車でのんびり走るという画もほんわかしますね。タイトルの下を戦車がキュルキュル通っていくのとか良いです。ただ、敵の大将である愛里寿がロリだけど天才、西住家のライバルであり、みほと同じぬいぐるみが好き、と属性だけは多いけどちょっと印象薄い気はしますかね。周りがいまいち女子大生に見えないから引き立たないというのもあるかも。もっと冷淡とか孤独とか性格や環境的な特徴があれば良かったとは思います。

それにしてもあらゆる状況を網羅した戦車戦は本当に凄い。前半だけでも森から市街地、浜辺といった様々なフィールドが描かれ、特に街中の普通の道路をキャタピラ跡を刻みながら爆走して砲撃しまくるのが、観る方としては日常に現れた非日常感というのが強くて高揚します。カメラの手前から砲頭がせり出してきたり、隣接する戦車を回るように映すなどの多彩なショットがさらにエキサイトさせますね。後半は遊園地を舞台にすることで大掛かりな仕掛けや様々な世界観を利用できる、というのが上手い。待ち伏せや騙しも入るし、視界が遮られたり開けたりと自由に場を作れるのも効果的。キャタピラなしで走る戦車とか、絶大な威力を持つ列車砲とか、様々な戦車が出てくるのも熱いです。また、アクションに終始するだけではなく、そこに自己を犠牲にしてチームの突破口を見出だす友情プレイというのも随所に入れてきます。特にカチューシャを救うため最後に日本語で語りかけるクラーラとか、知波単の重ねに重ねて笑わせた上での最後の特攻などはすこぶるエモーショナル。姉と妹の捨て身のラストアタックも、どちらが残るかという選択も込みでイイ。テレビ版観てたらもっと熱くなっただろうな、と思うとちょっと悔しいですが……。

住み慣れた学園艦というホームを取り戻す話なせいか『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と比べる向きもありますが、争い合っていた者たちが同じ目的のため協力し、出会いと別れを経験し、互いの信頼関係を得て成長する話なので、普遍的な青春ものとして見た方がしっくり来るんじゃないですかね。構造はむしろ少年漫画的でさえあって、だからこそ熱くなる。これはテレビ版も観ないといかんですね。

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