2015
12.17

そばにいるよ。『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』感想。

peanuts_movie
The Peanuts Movie / 2015年 アメリカ / 監督:スティーブ・マーティノ

あらすじ
凧をあげろ!



チャーリー・ブラウンは何かと失敗ばかりの男の子。飼い犬であるビーグル犬のスヌーピーは自分の小屋の上で飛行機乗りになる空想にふける日々。そんなチャーリーが通う学校に、ある日転校生の女の子がやってくる……。チャールズ・M・シュルツによるコミック『ピーナッツ』を3DCGアニメで映画化。

スヌーピー好きなんですよ。と言っても原作もアニメもちょっと見た程度ですが、豊かな表情が可愛いくてキャラクターとして好き。あと時たま深淵な台詞があったりするのも面白いなあと。で今回の映画版なんですが、これが期待を裏切らない可愛らしさと、ほんわか笑えるユーモアでTHE PEANUTSの世界を再現。3DCGであの絵の味わいが出せるのかという心配もあったけどそれは杞憂でした。背景や人物の皮膚感や髪などはリアルで、そのぶん動きも滑らかで自由。一方で表情を作る目、口、眉だけが手書き風、という思いきった描きわけが上手くいってます。顔を上向けて口だけにして叫ぶとかもちゃんとやってて良いです。

物語は転校生の少女に恋をするチャーリー・ブラウンと、それを(たぶん)応援しているスヌーピーを軸に展開しますが、根底にあるテーマが真っ直ぐ。必要なのは「人生を成功させる10の秘訣」みたいな本を読むことではなく、努力して思いやりを持って勇気を出すことなのだ、と正面から言ってくれる。優しすぎるラストには泣けます。

やたらテンポが早くほとんどタメがないので、さっき雪降ってたと思ったらもう夏休み?みたいな戸惑いはありますが、チャーリーの頑張り、スヌーピーの大冒険、そして個性的な仲間たちとの絡みが楽しいです。頑張ってるのに上手くいかない、自分に自信をなくした、という人にはきっと響くと思いますよ。

↓以下、ネタバレ含む。








原作はもっとフィロソフィカルだったりシニカルだったりした気がするんですが、僕はキャラの名前が思い出せずウッドストックをキイロイトリと呼んでた程度の知識なので、そこを言及するのはやめときます。とりあえずサザエさんヘアはルーシーというのは覚えてました。あと毛布の子(ライナス)とかピアノの子(シュローダー)とかですね。冒頭の20世紀FOXロゴを奏でる人物にニヤリとします。あとあんな埃っぽいヤツ(ピッグペンのこと)いたっけ?というくらい、リアルCGにより埃が公害レベルになってました。

チャーリー・ブラウンは何をやってもダメ的な位置付けですが、マジックの腕前にしろ、ダンスの上手さにしろ、実は意外と器用なんですね。レオのトイストア(レフ・トルストイ)の戦争さんと平和さん(戦争と平和)をカードで要点整理して読書感想文に落とし込むなんて、プレゼン資料作るビジネスマンか事象を繋げて犯人を探すイーサン・ハントかってくらいですよ。でも兄として自ら道化となりピンチの妹を救ったり、テスト100点が自分の答案ではないことをステージで正直に告げたりと、努力やチャンスも正しいと思うことの前ではあっけなく捨て去ります。ルーシーに言われたように賢く生きようとしても、それがなかなかできない不器用さ。そんなところにチャーリー・ブラウンへの愛おしさを感じられます。

ダイナミックな映像で最も3D効果も高いスヌーピーの一大空中戦ロマンの話は、正直ほとんど本編と関係ないんですよ。飛行機アクションの関わりとしてはチャーリーの書いた感想文をゴミに変えるくらい。スヌーピーは常にチャーリーの側にいるけど、そこまでベッタリなわけでもなく、最後にチャーリーの背中を押すというわけでもない。というようにスヌービーはむしろ自由気ままなんですが、でもまあスヌーピーはあれでいいんでしょうね。「一応動く切っ掛けは作るけど後は自己責任で」というスヌーピーのスタンスはわりとドラえもんに近いです。チャーリーの何をやっても失敗ばかり、というのものび太っぽい。チャーリー・ブラウンのシャツが、のび太のシャツ色×ジャイアンのシャツ柄と言うのも連想に拍車をかけます。ちなみに「自分の人知れぬ努力を見ている人がいた」という物語も、『ドラえもん』の「ぼくをタスケロン」というエピソードに非常によく似ています。それだけにスヌーピーは立ち位置的には「道具を出さないドラえもん」と見ることができ、それはすなわち「いつも側にいる友だち」ということです。ときに慰め、ときに共に喜ぶ、チャーリーのことをよく理解した友人だからこそ、スヌーピーは愛おしく感じられます。

そう考えると、主役であるチャーリー、作品のマスコットであるスヌーピーの両者が、愛されキャラとしてしっかり物語の中心に位置する作りになっていると言えます。この二者の愛おしさが最後まで貫かれているので、「テンポが早すぎる」という欠点も「ペースが崩れない」と良い方向に言い替えた方がしっくりきそうです。また、チャーリーの惚れる赤毛の女の子は最後まで顔を見せず、実は固有の名前も付いてないわけですが、そんな名もなく接点もない第三者(しかも好きな子)が自分のことをちゃんと見ていてくれた、というのが最高に嬉しく感じられ、だからこそ泣けます。

問答無用で聴かされるエンドロールの絢香の曲は場違い感が凄まじいですが、それは置いといてエンドロール後。ずっと飛び続けていた赤い飛行機のおもちゃがようやく落ちて物語は終わります。まあそれはコミカルなオチというだけではあるんですが、ただただ真っ直ぐ飛び続けていた飛行機をダメダメな日々という平行線を歩いていたチャーリーに重ねて見ると、少年時代に一区切りが付いたことの象徴にも思えてきて、ちょっと良いなと思うのです。

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