2015
12.01

アイドルは世界を打ち倒す。『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』感想。

hunger_games_mockingjay2
The Hunger Games: Mockingjay - Part 2 / 2015年 アメリカ / 監督:フランシス・ローレンス

あらすじ
ゲーム・オーバー。



第13地区の反乱軍は他地区と合流し、スノー大統領支配下の独裁国家パネムとの最終決戦に臨もうとしていた。カットニスも大統領暗殺作戦に参加するが、そこには予想を超えた罠が仕掛けられていた……。ジェニファー・ローレンス主演でスーザン・コリンズのヤング・アダルト小説を映画化した『ハンガー・ゲーム』シリーズの完結編。

前作の感想はこちら。
アイドルは世界を救えるか。『ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス』感想。


計4作まで膨らんだ『ハンガー・ゲーム』シリーズも遂に最終章。1作目では『バトル・ロワイアル』のような殺し合いゲームがメインのように謳われたためにそのぶん肩透かし感も大きかったし、本作で多少は軽減されたとはいえ相変わらず街や軍隊のスケール感が掴みにくいし、アクションのギミックもこれまた脱力の連続ではありましたが、本作を観て抱いた思いは「とても良かった」でした。確かに細かい点では色々(というか相当)不満もありますが、シリーズを通して統一されたトーンを貫き、戦争とその発端となる権力、犠牲となる者たちといった決して軽くはないテーマを、主人公カットニスの目線で最後まで描ききったことは特筆に値すると思います。

カットニス役ジェニファー・ローレンスの演技と存在感は誰もが称賛するところでしょう。死のゲームを乗りきったことで反乱軍のシンボルとして祭り上げられた少女が、プロパガンダであることを受け入れてでも宿敵を倒そうとする、その結果の悲しみ。そしてようやく手に入れたもの。泣けます。敵の手により洗脳されパートナーであるカットニスに牙をむくピータ役のジョシュ・ハッチャーソンと、嫉妬と諦観がない交ぜになり彼氏の立場も微妙になってきたゲイル役のリアム・ヘムズワースも三角関係にケリを付けることに。不敵すぎるスノー大統領役のドナルド・サザーランド、本心の見えてきたコイン首相役のジュリアン・ムーア、そして本作が最後の出演作となるフィリップ・シーモア・ホフマンら名優たちも魅せてくれます。

例の如く冒頭に前作までのダイジェストが5分くらいあるので補完も問題なし(さすがに前作公開はほんの5か月前なのでなくてもいいんですが……)。このシリーズを「つまらない」という人も多いのではと思いますが、僕は好きですよ。いつからかカットニスのマネージャー化したヘイミッチや、付き人化したエフィーといった面子と別れるのもちょっと寂しいくらい。何よりその行く末を最後まで見守った者だけが得る達成感と満足感があり、切って捨てるには惜しいと思います。

↓以下、ネタバレ含む。








絵面は結構派手なのにどこか地味さが拭えなかったシリーズですが、今作もまたそんな感じではあります。いよいよキャピタルに侵入、しかしビット(だっけ?)という罠があちこちに仕掛けてあるからヤバい!というのはいいんですが、その罠というのがどんな殺戮兵器かと思いきや単なる地雷式のトラップで、火炎放射や銃撃をするだけ、しかもレーダーで所在が分かるというのは拍子抜け。そのレーダーも超重要アイテムという位置付けなのに、数も少なく自爆装置まで仕込まれているという謎設定。そして言葉としては前半から出てくる「ミュット」という存在がまさかの走るゾンビだった時には「あちゃー」と思わずにいられません。それ、同じくヤング・アダルト原作の『メイズ・ランナー2』で観たばかりだぞ……。その前に実はキャピタルが追い詰められてて反乱軍が優勢になっていた、というのも「いつの間に?」という感じです。最も頭を抱えたのは、カットニスとゲイルが官邸に避難する人に紛れて進むシーン、それまでスタイリストの家にいたにも関わらず変装の一つもしないし、見張りに気付いたら真逆に引き返そうてして余計目立つしで浅はかすぎます。ただね、そんな脱力加減はもはやいつものことなので流しましょう。

カットニスは最後までプロパガンダに使われて、有名人故に命も狙われるし、潜入もままならないという不自由さの中に、ある意味囚われています。カメラの離れた場所へ行ってもその影響だけは付きまとい、プライベートもなく、人々に希望と高揚を与えるアイドルとして存在し続けます。しかし今作ではそれに抗い続け、自ら大統領暗殺を志願して最前線に向かうんですね。シンボルとして崇められながらも、ハンガー・ゲームを戦い国家とも戦い続けるカットニスの周りには死が溢れており、今作でも同行する仲間が次々と倒れていき、盟友であるフィニックも死なせる羽目になり、遂には一番大切な妹のプリムまで目の前で失います。毅然としてはいても、その死の影がカットニスを苦しめていたことは、それまで感情を露わにしなかった彼女がラストに猫に向かって泣き叫ぶシーンからも明らか。耐え続けた悲しみを吐露するあのシーンは泣けます。カットニスだけではなく、残虐な作戦を提案してしまったためにプリムを死に追いやりカットニスも失うゲイル、洗脳され自分はミュットだと恐怖して自分を見失うピータと、喪失感が止まりません。

殺し合いに参加し、命を奪い、傷を負い、周囲の大人たちに反抗しながらそれでも支配を止めようとしたカットニス、しかし戦いが終わったと思った矢先、代表となったコイン首相が表明する新たなハンガー・ゲーム。倒すべきはスノーそのものというより、洗練さを是とする驕り、権力を笠に着た独裁であることを知った彼女は、凛としたメイクと戦闘服に身を包み、幾度となく危機を救った弓矢で最後の矢を放ち、繰り返されようとしていた世界そのものを打ち倒します。コインを打つときのショットがカットニス目線であることは象徴的で、あくまでも一人の女性を中心とした構成を貫いてますね。口元に浮かぶ笑みが悲しくも美しいです。

思えばカットニスがハンガー・ゲームに出場したのは妹プリムの代わりになるためで、そのプリムも亡くし、喪失の連続であった彼女がようやく得た平穏。シリーズ4作、連続ドラマ1期分くらいの長さにまでなったシリーズにしてはいささかカタルシスには欠けるかもしれませんが、死の連鎖から抜け出した少女が母となって新たな命と共に眺める至極オーソドックスで平和な景色、そんな世界を手に入れることがいかに困難であったかを見せられると、ああ良かったなあと素直に思えるのです。

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